海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
期待している相手に、本当の数字を伝えるべきかどうか迷った経験はありませんか。
そんな場面で使われる「a slim chance」を、『BONES』シーズン12第1話の面会室で、ザックがホッジンスに治療の見込みを告げる場面から、一緒に見ていきましょう。
「a slim chance」の意味とニュアンス
a slim chance
意味:わずかな可能性、望み薄
見込みが非常に低いことを表す言い方です。slim は「細い」を意味する形容詞で、chance と組み合わさると可能性の細さ、つまり薄さを指します。
大切なのは、ゼロではないという点です。no chance が可能性の否定であるのに対し、slim chance は「あるにはあるが極めて低い」という状態を指します。この差が、使う場面を決めます。
そのため、希望を完全に断ち切りたくないときや、期待を持たせすぎたくないときの両方で登場します。医療、ビジネス、スポーツなど、確率を扱う場面での使用が目立ちます。
形容詞は slight や small に置き換えても意味は通じます。slim には「細い」という視覚的なイメージが残っている分、可能性の細さがより具体的に感じられる表現だと言えます。
【ここがポイント!】
- ゼロではないが極めて低い、という微妙な位置を示す一言
- slim の「細さ」がそのまま可能性の薄さになっている分かりやすい構造
- 希望を残すか、期待を抑えるか、話し手の狙いで表情が変わる表現
『BONES』S12E01のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
車椅子で生活しているホッジンスが、脚に感覚が戻ってきたことを喜んでいます。その治療法を陰で組み立てていたのは、別人の名前を使っていたザックでした。感謝を伝えに来たホッジンスに対し、ザックの返答は予想外の方向へ進みます。
Hodgins: But that’s what I’m telling you. It worked. I have feeling.
(だから言ってるだろう。効いたんだ。感覚があるんだよ。)Zack: No, what you have is pain from compromised nervous activity in the sacral plexus. The truth is, you only have a slim chance, less than one percent, that you will regain mobility.
(いいえ、あなたが感じているのは仙骨神経叢の機能低下による痛みです。本当のところ、運動機能を取り戻せる可能性はわずかで、1パーセント未満です。)BONES Season12 Episode1 (The Hope in the Horror)
シーン解説と心理考察
ザックの答え方には、彼の誠実さと残酷さが同時に現れています。喜んでいる相手に対して、感覚の正体が痛みであると訂正し、さらに具体的な数字まで添える。慰めの余地を残さない答え方です。
ただしこの直後、彼は希望には癒す力があると聞いたことがあると語り、自分が与えたかったのは希望だったと明かします。つまり彼は嘘をつくことで希望を渡そうとし、いま事実を告げることでそれを取り消している。矛盾しているようでいて、どちらも相手を思っての行動です。
a slim chance という表現が効いているのは、ここで完全な否定を選ばなかった点にあります。1パーセント未満と言いながら、ゼロだとは言っていない。細くても線は残っている。冷徹な事実の提示の中に、わずかな余白が残されていることが、この場面の切なさを深くしていると言えます。
『BONES』流・覚え方のコツ
細い糸を思い浮かべてみてください。太いロープではなく、指でつまむのがやっとの一本の糸。切れそうではあるけれど、まだつながっている。それが slim chance の姿です。
このシーンでは、その糸が1パーセントという数字で示されています。ホッジンスが握りしめていた太い希望が、実際にはこの細さだった。ザックは糸を切ったのではなく、太さを正確に測って見せたことになります。
覚えるときは、slim という語をそのまま体型の細さに結びつけてから、chance に移すと定着しやすくなります。細身の可能性、というひとつなぎの映像で保持しておけば、聞いたときにすぐ意味が立ち上がります。
例文で覚える「a slim chance」
見込みの低さを伝える場面なら、仕事でも日常でも使えるフレーズです。3つの場面で確認してみましょう。
There’s a slim chance the flight will be delayed, so keep your phone on.
(便が遅れる可能性がわずかにあるので、携帯の電源は入れておいてください。)
起こる確率は低いが備えは必要、という文脈です。注意喚起としてよく使われる形になります。
We still have a slim chance of winning the contract if we revise the proposal tonight.
(今夜提案書を修正すれば、まだわずかに契約を取れる可能性があります。)
ビジネスで望みをつなぐ例です。低さを認めつつ行動を促す、前向きな使い方になります。
A: Do you think he’ll change his mind?
B: There’s a slim chance, but I wouldn’t count on it.
(A:彼、気が変わると思う?)
(B:わずかな可能性はあるけど、当てにはしないほうがいいよ。)
見通しを尋ねる会話です。可能性を認めながら期待を下げる、現実的な返答として機能しています。
あわせて覚えたい関連表現
a long shot
(可能性の低い試み、大穴)
成功率の低い挑戦を指します。slim chance が確率の低さを述べるのに対し、こちらは挑戦そのものを名詞で表す点が違います。
an outside chance
(ごくわずかな見込み)
slim chance とほぼ同義で、スポーツや競争の文脈でよく登場します。外側、つまり本命から外れた位置というイメージが土台にあります。
next to impossible
(ほとんど不可能)
可能性の低さをより強く言った表現です。slim chance がまだ望みを残すのに対し、こちらはほぼ諦めに寄っています。
Note|slim chance と fat chance が同じ意味になる不思議
英語には、正反対の形容詞が同じ意味に着地してしまう組み合わせがあります。slim chance と fat chance は、その代表例です。
slim chance は文字どおり「細い可能性」で、見込みが薄いことを表します。ここまでは素直です。ところが反対語の fat を使った fat chance も、やはり「望み薄」を意味します。太い可能性という語形なのに、実際には可能性がほぼないことを指すわけです。
理由は皮肉にあります。fat chance はもともと「たっぷりある見込み」を反語的に言ったもので、Fat chance of that happening. と言えば「そんなことが起こるわけがない」という突き放しになります。皮肉として使われるうちに、皮肉の枠が外れて語義そのものが反転しました。
両者には使われ方の違いも残っています。slim chance は中立的で、報道でも医療の説明でも使える表現です。対する fat chance は口語的で、相手の期待を切って捨てるときの言い方になります。丁寧な場面で fat chance を使うと、突き放した印象になりかねません。
なおこの反転がいつ定着したかについては諸説あり、ここでは断定を避けます。ただ、皮肉が繰り返し使われるうちに元の意味を押しのけてしまう現象自体は、英語に限らず観察されるものです。
ザックが選んだのは、当然ながら中立的な slim chance のほうでした。1パーセント未満という数字を添えたこの場面で、皮肉の混じる表現は選ばれません。正確さを最優先する人物の語彙選択が、ここにも表れています。
言葉は、太っても細っても同じ場所にたどり着くことがあるようです。
まとめ|細くても、線は残っている
a slim chance は、可能性が極めて低いことを認めながら、それがゼロではないことも同時に示す表現です。slim という語の細さが、そのまま見込みの薄さを描いています。
この言い方を知っていると、期待と現実のあいだで説明の調整ができます。断言を避けたいとき、相手の希望を完全には否定したくないとき、あるいは過度な期待を抑えたいとき。どの方向にも寄せられる、扱いやすい表現です。
見込みを尋ねられる場面は、仕事でも日常でも訪れます。正直さと配慮を両立させたいときのために、表現の引き出しに加えてみてください。


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