海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
予約の取れない人気店や、売り切れのチケットを、知り合いのツテでなんとか手に入れてもらえた——そんな経験はありませんか。
今回はそんな場面で活躍する「pull some strings」を取り上げます。コネや影響力を使って物事を動かす、という意味の表現です。『フレンズ』シーズン5第19話の冒頭、チャンドラーが記念日ディナーの予約をどうやって取ったかをロスに得意げに語るシーンから、一緒に見ていきましょう。
「pull some strings」の意味とニュアンス
pull some strings
意味:コネを使って手を回す、裏で影響力を働かせる
pull some strings は、直訳すると「いくつかの糸を引く」。この strings は、操り人形(マリオネット)を動かす操り糸を指しています。人形使いが舞台裏で糸を引いて人形を思いどおりに動かすように、表からは見えないところで人脈や影響力を使って物事を動かす、というのがこの表現の核になるイメージです。
正式な手続きやルールに沿ったやり方ではなく、知り合いへの口利きや非公式な便宜によって、普通なら難しいことを実現させる——そんなニュアンスを含みます。予約困難な店の席を確保する、順番待ちのリストを飛ばしてもらう、就職の面接にこぎつける、といった場面で幅広く使われます。some を a few に変えて pull a few strings とも言え、意味はほぼ同じです。
【ここがポイント!】
- 「pull some strings」の核は、操り人形の糸を舞台裏で引くイメージ
- 正式ルートではなく、人脈・影響力で物事を動かす非公式さがにじむ表現
- some を a few に替えて pull a few strings としても同じように使えるのが便利な一言
『フレンズ』S05E19のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
チャンドラーがモニカとの10ヶ月記念日のために、人気レストランのJeanGeorgesを予約できたと語る場面です。「どうやってあそこ取れたの?」と驚くロスに、チャンドラーが予約成功の裏事情を明かします。手を尽くして席をもぎ取った、という得意げなトーンに注目です。
Ross: Wow! How’d you get in there?
(へえ! よくあそこ取れたね?)Chandler: Oh, made a few calls, pulled some strings and they agreed to seat us at 11:30 if we both have a chicken and didn’t get dessert.
(ああ、何本か電話して、ちょっとコネを使ったんだ。そしたら二人ともチキンにしてデザートを頼まないなら11:30に席をくれるってさ。)Friends Season5 Episode19(The One Where Ross Can’t Flirt)
シーン解説と心理考察
「よくあそこ取れたね」というロスの驚きに、チャンドラーが「電話をかけまくって糸を引いた」と得意げに返すやりとりです。pull some strings という表現には、自分の機転と人脈で難関を突破したという小さな誇らしさが重なっています。
ところが、その苦労の末に勝ち取った条件が「二人ともチキン限定・デザートなし・11:30」という妙に不利なものだったというオチが用意されています。大げさに「コネを使った」と語った直後に、実際にはかなり譲歩した予約だったと分かる落差が、このシーンのおかしみとして響きます。皮肉屋のチャンドラーらしく、自慢めいた口ぶりの裏に自虐のタネが仕込まれている一言と言えます。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
pull some strings を覚えるときは、舞台の上で勝手に動いているように見える操り人形を思い浮かべてみてください。人形の背後には、天井から伸びた糸を握って器用に引いている人形使いがいます。表舞台には出てこないその手つきこそが、この表現の「裏で手を回す」感覚そのものです。
チャンドラーが涼しい顔で「電話して糸を引いた」と語り、予約困難な店の席を(条件付きで)確保したシーンと重ねれば、「見えないところで人脈を操って物事を動かす」というニュアンスごと記憶に残せます。
例文で覚える「pull some strings」
コネや影響力を使って何かを実現する場面で使える表現です。3つの例文で、使いどころの幅を見ていきましょう。
I had to pull some strings to get us a table at that restaurant.
(あの店に席を取るのに、ちょっとコネを使わなきゃいけなかったんだ。)
予約困難な人気店をなんとか押さえたことを友人に打ち明ける場面です。劇中とそっくりのシチュエーションで、この表現の代表的な使い方が掴めます。
My uncle pulled some strings and got me an interview at the firm.
(おじがコネを使ってくれて、あの会社の面接にこぎつけたんだ。)
就職や転職で身内の口利きがあったことを説明する場面です。人脈を使って機会を得た、というビジネス寄りの文脈でよく登場します。
A: I really want to see that show, but it’s completely sold out.
B: Don’t worry, I know someone there. I can pull a few strings.
(A:あの公演どうしても観たいのに、完全に売り切れなんだ。)
(B:心配しないで、あそこに知り合いがいるんだ。ちょっと手を回せるよ。)
困っている相手に「なんとかしてあげる」と申し出る会話です。pull a few strings の形で、会話の中でどう機能するかが見えてきます。
あわせて覚えたい関連表現
use one’s connections
(コネを使う)
意味はほぼ同じですが、connections はより直接的で中立的な言い方です。pull some strings のほうが「裏から・非公式に」という含みと、操り糸の比喩による面白みが強く出ます。
call in a favor
(貸しを返してもらう、借りを使う)
過去に相手にしてあげた「貸し」を使って頼む点が具体的です。pull some strings は貸し借りに限らず、人脈や影響力全般を使うニュアンスを持ちます。
grease the wheels
(物事をスムーズに進める、根回しする)
段取りを円滑にする意味で、時に金銭を含みます。pull some strings は「人」に働きかけて動かす点が中心である一方、こちらは仕組み全体を滑らかにするイメージです。
Note|「コネを使う」は悪いこと? pull some strings の温度感
チャンドラーは「コネを使った」と、隠すどころかむしろ得意げに語っています。日本語の「コネ」という言葉にどこか後ろめたい響きを感じる感覚からすると、この堂々とした態度は少し意外かもしれません。
英語の pull some strings は、文脈によって温度が変わる表現です。もちろん「不正に便宜を図る」という否定的な使い方もありますが、日常会話では「顔が広い」「機転が利く」といった、むしろ肯定的・自慢めいたニュアンスで使われることが少なくありません。人気店の予約を取る、旅行の手配を融通してもらう、といった実害のない場面では、「ちょっとした裏技を使えた」という軽やかな響きになります。チャンドラーの得意げなトーンは、まさにこの肯定寄りの温度感を体現しています。日本語の「コネ」を頭の中でそのまま当てはめると重くなりすぎるため、場面によっては「ツテを使う」「うまく手を回す」くらいの軽さで捉えると、実際の使われ方に近づきます。
同じ pull some strings でも、話し手のトーンと場面しだいで自慢にも批判にもなる——この幅を知っておくと、聞いたときの受け取り方を誤りにくくなります。
コネという言葉の重さは、言語によって案外ちがうものなのですね。
まとめ|「pull some strings」で覚える、裏で手を回す一言
pull some strings は、操り人形の糸を舞台裏で引くように、人脈や影響力を使って物事を動かす表現です。正式なルートではない非公式さと、それを使いこなす機転の両方がこの一言に込められています。
予約や手配、口利きといった「普通なら難しいこと」を誰かのツテで実現する場面は、日常にもビジネスにも数多くあります。そんなとき、この表現が一つあれば、状況をひとことで言い表せます。
コネを使って何かを動かした場面に出会ったら、pull some strings を表現の引き出しに加えてみてください。


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