「pull strings」の意味と使い方|『BONES』S01E05で学ぶ英会話

pull strings

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

窓口では無理だと言われた話が、誰かの一本の電話であっさり動くことがあります。制度が変わったわけではないのに、通る順番だけが変わっている。そういう場面に立ち会うと、少し複雑な気持ちになるものです。

そんな動き方を言い表す「pull strings」を、『BONES』シーズン1第5話の終盤、ブースが里子の兄弟について、ブレナンに短く報告するシーンから、一緒に見ていきましょう。

目次

「pull strings」の意味とニュアンス

pull strings
意味:裏から手を回す、コネを使う、口を利く

正規の手続きの外側で、人脈や影響力を使って物事を動かすことを表します。実際には pull some strings、pull a few strings のように、数を曖昧にした形で使われることがほとんどです。

この strings は、操り人形をあやつる糸を指しています。舞台の上では人形だけが見えていて、動かしている手は幕の奥にある。誰が動かしたのか観客には分からない、という構図がこの表現の芯です。だから pull strings には、必ず見えないところで、という含みがついてきます。

評価は一定ではありません。規則が実情に合わないときに人を助ける手段として語られることもあれば、公平さを損なう行いとして批判的に使われることもあります。同じ動作なので、誰のために引いたのかで読み手の受け取り方が変わります。

自分の行いとして口にするときは、たいてい軽い調子で添えられます。大ごとにせず、ちょっと手を回しただけ、という言い方にすることで、恩を着せない形になるためです。

【ここがポイント!】

  • 幕の奥で人形の糸を引く、あの見えない手つきが芯にある表現
  • 助け舟にも身びいきにもなる、評価が誰のためかで変わる一言
  • 自分の行いとして言うときは軽く添えると、恩着せがましくならないのがコツ

『BONES』S01E05のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

事件の捜査の途中、里子として暮らしていた兄弟が、制度の都合でまた別々にされかねない状況になります。ブレナンは二人をもとの家庭に戻すよう求めますが、ブースは規則を理由にそれはできないと突っぱねていました。そのやり取りのあと、彼が骨の並べられた部屋を訪ねてきます。

Booth: Bones, I thought you’d like to know that Shawn and David are in emergency care. Pulled some strings, you know, to make sure they- they get to stay together.
(ボーンズ、知らせておこうと思ってな。ショーンとデイヴィッドは緊急保護に入った。ちょっと手を回したんだ、二人が離れ離れにならないようにな)

Brennan: That’s good, thanks.
(よかった。ありがとう)

Booth: It’s the best I could do.
(これが精一杯だ)

Brennan: Yeah, I understand.
(ええ、わかってる)

BONES Season1 Episode5 (A Boy in a Bush)

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シーン解説と心理考察

Pulled some strings と、主語を落とした形で切り出しているのが見どころです。俺がやった、とは言っていません。動作だけを置いて、誰がやったかは言外に残す。手柄を前に出さない話し方が、この人物の距離の取り方をよく表しています。

they- they get to stay together と、言葉が一度つかえる点も印象に残ります。事務的な報告として始めたはずの一文が、兄弟が一緒にいられるという内容に触れたところで少し崩れる。感情を語らないまま、言いよどみだけが残っています。

そして It’s the best I could do(これが精一杯だ)という限界の申告が続きます。直前まで規則は曲げられないと言い切っていた相手が、規則の内側でできることを探して戻ってきた。要求を断ることと、相手のために動くことが両立している。この短いやり取りに、二人の関係の性質が重なっています。

『BONES』流・覚え方のコツ

人形劇の舞台を思い浮かべてみます。客席から見えるのは、動きまわる人形だけです。その上には見えない糸が伸びていて、幕の奥では人形遣いが指先を動かしている。舞台の上で何が起きるかは、この手が決めています。pull strings が指しているのは、この位置関係です。

劇中のブースも、舞台には上がっていません。誰にどう頼んだのかは語られず、結果だけが報告されます。動いたのは制度の側で、動かした手は見えないまま。幕の奥に伸びる糸を思い出せば、この表現がなぜ影響力の行使を意味するのかが、舞台の絵ごと残ります。

例文で覚える「pull strings」

誰のために引いたのかで響きが変わります。3つの例文で、その振れ幅を見てみましょう。

I pulled a few strings to get her an interview.
(彼女が面接を受けられるよう、少し手を回した)
人を推す場面です。a few を挟むと、大ごとにしない軽さが出ます。

He only got the position because his father pulled strings.
(彼がその職に就けたのは、父親が手を回したからにすぎない)
公平さを疑う場面です。only と組むと、批判の色がはっきり出ます。

A: There’s a three-month waiting list for that clinic.
B: Let me see if I can pull some strings.
A: I’d really appreciate that.
(A:あのクリニックは3か月待ちなんです)
(B:少し手を回せるか、当たってみましょう)
(A:助かります)
頼まれごとを引き受ける場面です。see if I can と添えると、確約を避けた言い方になります。

あわせて覚えたい関連表現

call in a favor
(貸しを返してもらう)
過去に相手へ与えた恩を持ち出して頼む言い方です。pull strings が影響力全般を指すのに対して、こちらは貸し借りという具体的な関係に踏み込みます。

cut through red tape
(煩雑な手続きを省く)
規則や書類仕事そのものを短縮することに焦点があります。pull strings が人を介して動かすのに対して、こちらは手続きの側を減らす話になります。

grease the wheels
(物事を円滑に運ぶ、根回しをする)
車輪に油を差す絵から生まれた言い方で、摩擦を減らして進みやすくすることを指します。pull strings より対象が広く、事前の下準備全般に使えます。

Note|推薦状の国で、コネはどう扱われるか

pull strings を「コネを使う」と訳すと、日本語ではどうしても後ろ暗い響きがつきます。ところが英語圏では、人のつながりを使うこと自体は制度の一部として組み込まれています。

分かりやすいのが推薦の文化です。大学への出願では教師による推薦状が審査の材料になり、就職では前の上司や同僚が身元照会に答えます。社員が知人を紹介する制度を持つ企業も多く、紹介経由の応募は正規の窓口のひとつとして扱われます。誰が保証してくれるかを明示することが、選考の透明性を支える仕組みとして機能しているわけです。つながりを使うこと自体は、隠すべき行為とはみなされません。

それでも pull strings には批判的な響きが残ります。境目は、その働きかけが表に出せるかどうかにあります。推薦状は書式があり、署名があり、誰が誰を推したかが記録に残ります。対して pull strings が描いているのは、幕の奥に消える手です。同じ人脈の行使でも、見える形で行われたものと、見えないところで順番を動かしたものとは区別される。nepotism(縁故主義)や old boys’ network(旧知の仲間内の結びつき)といった語が別に用意されているのも、この線引きを言葉の側で保つためです。

劇中のブースが軽い調子で済ませたのも、この微妙さと無関係ではありません。詳しく語れば、彼が動かした部分の輪郭が見えてしまいます。

誰のために引いたのかだけが、糸の評価を決めています。

まとめ|見えない糸を、誰のために引くか

pull strings は、正規の手続きの外側で人脈を使って物事を動かすことを、人形劇の糸になぞらえた表現です。動作そのものは中立で、評価は目的のほうから決まります。

この一言があると、手を尽くしたことを控えめに伝えられるようになります。何をどう頼んだかを並べ立てず、少し手を回した、とだけ言う。相手に負担を感じさせずに済む言い方として重宝します。

規則は曲げられないと言い切ったあとで、曲げずにできることを探しに行ったブース。手柄を語らない報告のしかたに、この表現の使いどころがそのまま表れているのかもしれません。

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