海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
何かを嗅ぎつけて追ってくる相手を、わざと別の方向へ誘って、本当の狙いから遠ざけたい——ミステリーやスパイものでおなじみの、あの駆け引きの感覚です。
それをぴたりと言い表す「throw someone off the scent」を、スパイコメディ『CHUCK』シーズン5第9話の中盤、モーガンに頼まれたデヴォンが、追及をかわす役を引き受けるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「throw someone off the scent」の意味とニュアンス
throw someone off the scent
意味:(追う相手の)気をそらす、追跡から遠ざける
scent は「におい、手がかり」。獲物のにおいを追う猟犬を、偽の手がかりで惑わせて正しい追跡路から外す——その狩りの情景から、「追ってくる相手を、本当の狙いからそらす」という意味に広がったとされます。throw someone off the scent の形で、相手が嗅ぎつけかけた真実や居場所から、注意をそらすことを表します。put someone off the scent とも言い、いずれも off(外へ)が「正しい追跡路から外す」感覚を担っています。ミステリーやスパイものはもちろん、日常で「気づかれないようにごまかす」場面でも使える、少し物語めいた響きの言い回しです。
【ここがポイント!】
- 獲物のにおい(scent)を追う猟犬を惑わせる、という狩りのイメージが核
- off が「正しい追跡路から外す」感覚を担い、「気をそらす」を表す
- put someone off the scent とも言い、ミステリーにも日常のごまかしにも使える
『CHUCK』S05E09のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
同僚のジェフとレスターが、チャックたちのスパイ活動を嗅ぎつけようと調査を始めます。困ったモーガンは、義兄デヴォンに助けを求めます。デヴォンは事情をのみ込むと、二人の追及を別方向へそらす役を、頼もしく買って出ます。
Morgan: But those two stumbled upon our actual spy operation.
(でも、あの二人はうちの本物のスパイ活動に偶然勘づいちまったんだ)Devon: Gotcha. You need me to throw ‘em off the scent.
(なるほど。連中の追及をそらしてほしいってことだね)Chuck Season5 Episode9 (Chuck Versus the Kept Man)
シーン解説と心理考察
事情を一瞬でのみ込み、頼れる助っ人として名乗り出るデヴォンの気前のよさが表れています。throw ‘em off the scent という猟犬由来の言い回しを、彼がためらいなく口にすることで、「追う者の鼻先をかわす」という駆け引きが、いかにも作戦めいた軽やかさで立ち上がっています。難しい話をさらりと引き受けてしまうデヴォンの余裕が、この一言に凝縮されている場面と言えます。追う側と追われる側の攻防を、コメディのテンポで描くこのシリーズらしい会話です。
『CHUCK』流・覚え方のコツ
throw someone off the scent は、獲物のにおいを一心に追う猟犬の鼻先に、わざと別のにおいをまいて、見当違いの方向へ走らせてしまう——あの狩りの一場面を思い浮かべると覚えやすい表現です。においの筋(scent)を見失った犬は、もう正しい獲物にはたどり着けません。デヴォンが「連中の追及をそらす」と引き受けるこの場面に、偽の手がかりで惑わされる猟犬を重ねれば、off the scent の「正しい追跡路から外す」感覚がそのまま体に残ります。scent=追う手がかり、と結びつけておくと、意味がくっきりします。
例文で覚える「throw someone off the scent」
throw someone off the scent は、追ってくる相手の「気をそらす」場面で幅広く使えます。捜査ものから日常のごまかしまで、3つの例文で見てみましょう。
The thief left false clues to throw the police off the scent.
(泥棒は警察の追跡をそらすために、偽の手がかりを残した。)
捜査をかわす場面です。「偽の手がかりで追う者を惑わす」という、もっとも典型的な使い方になります。
She changed the subject to throw them off the scent of her surprise party.
(彼女はサプライズパーティーに勘づかれないよう、話題を変えて気をそらした。)
秘密を守る場面です。深刻な追跡でなくても、「気づかれないようにそらす」意味で自然に使えます。
A: I think my boss suspects I’m job hunting.
B: Mention a big project you’re excited about—that’ll throw her off the scent.
(A:上司に転職活動を疑われてる気がする。)
(B:楽しみにしてる大きな案件の話でもすれば? それで気をそらせるよ。)
疑いをかわす作戦を相談する会話です。that’ll throw … off the scent で「それで気をそらせる」と提案できます。
あわせて覚えたい関連表現
put someone off the trail
(人の追跡を外す)
trail(足跡・手がかり)を使った、ほぼ同義の言い回しです。scent が「におい」なのに対し trail は「足跡・痕跡」で、どちらも「正しい追跡路から外す」という発想を共有します。
cover one’s tracks
(痕跡を消す)
自分の足跡やしるしを「消して」追跡されないようにすることに焦点があります。throw off the scent が「相手の気をそらす」のに対し、こちらは「そもそも手がかりを残さない」という予防的な動きを表します。
red herring
(人を惑わす偽の手がかり)
追う者を惑わせるために置かれた「偽の情報」そのものを指す名詞です。throw off the scent が「そらす動作」なら、red herring は「そらすための道具」にあたります。
Note|狩りの猟犬から来た throw off the scent
throw someone off the scent の scent(におい)が、なぜ「追跡・気づき」を意味するのか。その手がかりは、狩りの情景にあります。
この表現は、獲物のにおいをたどって追う猟犬(hound)の狩りに由来するとされています。よく訓練された猟犬は、地面や空気に残る獲物のにおいの筋を、鼻だけを頼りに追いかけます。その犬を追跡から外すには、においの筋を断つか、別の強いにおいをまいて惑わせればいい——逃げる獲物や、犬を出し抜こうとする者は、そうやって犬を「においから引き離した(throw off the scent)」わけです。ここから、scent が単なる「におい」から「追う者がたどる手がかり」へと意味を広げ、throw off the scent が「追跡・追及から相手をそらす」という比喩として定着したと考えられます。同じ狩りの世界から来た put off the trail(足跡から外す)や、追う者を惑わす偽の手がかりを指す red herring(燻製ニシン)も、この「追跡をかわす」発想を共有する仲間です。
デヴォンのセリフに戻ると、「連中を throw off the scent する」は、まさに「嗅ぎつけかけた二人を、本当の真実から引き離す」という一言でした。スパイ活動を追う者と、それをそらす者——追跡と攪乱の攻防を描くこのシリーズに、猟犬由来のこの表現がよく似合っています。
獲物を追う犬の鼻先が、現代の「気をそらす」に生きているのですね。
まとめ|デヴォンの助太刀から学ぶ「気をそらす」の一言
throw someone off the scent は、獲物のにおいを追う猟犬を惑わすイメージから、「(追う相手の)気をそらす、追跡から遠ざける」を表す表現でした。off が「正しい追跡路から外す」感覚を担い、少し物語めいた響きを帯びます。
put off the trail(足跡から外す)や red herring(偽の手がかり)と合わせて押さえておけば、「追跡をかわす」場面の描写がぐっと豊かになります。捜査ものの話でも、日常のちょっとしたごまかしでも、この一言で言い表せます。
追及をそらす役を引き受けたデヴォンのこの表現を、あなたの会話のレパートリーに加えてみてください。
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