海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『フレンズ』シーズン1第8話では、チャンドラーとロスが、何気ない場面で短い皮肉をいくつも口にします。どれも大げさな言葉ではなく、表面の意味と本当に言いたいことが少しずれている点に特徴があります。
皮肉は文の形さえ知っていれば、英語でも真顔のまま伝えられます。反語の問いかけと、相手の話を小さく見せる言い方を、3つの場面から順に見ていきます。
「Does it get better than this?」反語で言う皮肉
物語の冒頭、職場で休憩中のチャンドラーのもとに、同じ職場のシェリーがやって来ます。
Shelley: Hey, gorgeous. How’s it going?
(ねえ、色男さん。調子はどう?)
Chandler: Dehydrated Japanese noodles under fluorescent lights. Does it get better than this?
(蛍光灯の下で乾燥麺だよ。これ以上いいことってあるかい?)
Friends Season1 Episode8(The One Where Nana Dies Twice)
How’s it going? は「調子はどう?」と軽く様子を尋ねるあいさつです。Hey, gorgeous の gorgeous は本来「すてきな」という形容詞で、親しい相手への呼びかけとして冗談めかして使われることがあります。
ふつうなら Not bad.(悪くないよ)や Pretty good.(まあまあだね)と短く答える場面ですが、チャンドラーは答えの代わりに自分の状況をそのまま差し出します。
チャンドラーはその状況を名詞だけで並べ、そのあとに Does it get better than this? と続けます。直訳は「これより良くなることがあるか?」で、答えを求めない反語の問いかけです。並べた中身が蛍光灯の下の乾燥麺という冴えない休憩なので、「最高だ」と言いながら実際は「何ひとつ良くない」と伝える形になっています。
反語の皮肉は、言葉の意味と状況の落差で成り立ちます。同じ形で Could this day get any better?(今日はこれ以上ないくらい最高だね)と言えば、雨に降られた日や予定が崩れた日の自嘲にもなります。
ただし、文だけを見ると本気の感想とも区別がつきません。皮肉として受け取ってもらうには、冴えない状況が相手にも見えていることが前提になります。チャンドラーの場合は、自分で並べてみせた乾燥麺の休憩がその役を果たしています。
「I could do that」で相手の話を小さく見せる
レイチェルの交際相手パオロから、モニカとレイチェルの部屋に電話がかかってきます。電話に出たモニカがローマのパオロからだと伝えると、レイチェルは受話器を受け取ります。同じ部屋にいたロスは、ジョーイに向かってこう言います。
Ross: So he’s calling from Rome. I could do that.
(へえ、ローマから電話ね。俺にだってできるよ。)
Ross: Just gotta go to Rome.
(ローマに行きさえすればな。)
Friends Season1 Episode8(The One Where Nana Dies Twice)
I could do that. は「それくらい自分にもできる」という言い方です。can ではなく could を使うと「その気になれば」という仮定の響きが加わり、相手のしたことを大したことではないように扱う皮肉になります。続く Just gotta ~ は I’ve just got to ~ を縮めた口語で、「〜しさえすればいい」と条件を付け足す形です。ローマから電話をかけるにはローマにいるしかない、という当たり前の条件を持ち出すことで、張り合うような一言が冗談に変わっています。
この組み合わせは、相手の自慢話を軽く受け流すときにも応用できます。Oh, you ran a marathon? I could do that. Just gotta start running.(マラソンを走ったって? 俺にもできるよ。走り始めさえすればね)のように、できない理由をあえて条件として付け足すのがこつです。なお Just gotta ~ 自体は皮肉に限らず、Just gotta finish this email.(このメールを片づけさえすればいい)のように、ふつうの段取りの説明にも使われます。
その後、みんなで出かける前の部屋でも、ロスは似た調子の一言を口にします。モニカに靴のことを聞かれたレイチェルが、パオロがイタリアから送ってきたものだと答えたあとです。
Ross: What? We, uh, don’t have shoes here?
(何だって? ここには、その、靴がないってのか?)
Friends Season1 Episode8(The One Where Nana Dies Twice)
We don’t have ~ here? は、肯定文の語順のまま語尾を上げる疑問で、「ここには〜がないとでも?」と相手の前提に引っかかる言い方です。わざわざイタリアから取り寄せなくても靴ならここにある、という含みがあり、前の場面の I could do that. と同じく、パオロに張り合うような一言とも受け取れます。どちらの皮肉も、相手を正面から否定する言葉は使っていません。
まとめ|真顔の皮肉は形で伝わる
反語の Does it get better than this?、相手の話を小さく見せる I could do that. Just gotta ~、前提に引っかかる We don’t have ~ here? を見てきました。言葉と状況のずれを形にすれば、皮肉は真顔でも伝わります。
次回も『フレンズ』の何気ない会話を、一緒に楽しんでいきましょう。
同じエピソードのほかのコラムやフレーズ記事でも、この回の英語を場面ごとに取り上げています。


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