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決めつけるような言い方をされて、思わず「言っておきますけど」と切り出したくなる。そんな瞬間があります。声を荒らげるほどではない、けれど黙って見過ごすのも違う。そういう半端な苛立ちを、丁寧な言葉に包んで返したくなるときです。感情ではなく事実で応じたい、という気持ちが働きます。
その前置きにあたる「for your information」を、『Friends』シーズン2第15話の中盤、兄ロスの詮索にモニカが言い返す場面から、一緒に見ていきましょう。
「for your information」の意味とニュアンス
for your information
意味:言っておくけど、参考までに
直訳すれば「あなたの情報のために」となり、字面のうえでは親切な申し出です。ところが実際の会話では、相手の誤解や思い込みを正すときの前置きとして使われます。
つまり、丁寧な形をした反論です。この語で切り出すとき、話し手は相手の認識が間違っていると考えています。とげを含んで響くことが多く、言われた側は自分の発言を訂正されたと受け取ります。四語をわざわざ省略せずに口にすること自体が、その構えの表れでもあります。
ただし、常にとげがあるわけではありません。相手が知らない事実を純粋に伝える場面でも使われます。文脈と口調が、その温度を決めます。
省略形の FYI は、メールや文書の冒頭でよく見かけます。こちらは事務的な情報共有として定着しており、話し言葉ほどの含みは持ちません。同じ語句が、媒体によって性格を変える点が興味深いところです。
【ここがポイント!】
- for your information の核は「丁寧な形をまとった反論」という、ねじれた構造
- 相手の思い込みを正す前置きとして、静かなとげを含んで響くことが多い一言
- 略語の FYI はメールで中立的、話し言葉との温度差を押さえておくのがコツ
『Friends』S02E15のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
モニカがリチャードと会っていることを、兄のロスが知ります。驚きと戸惑いを隠さずに問いただすロスに対し、モニカは反発しました。リチャードの人柄を並べ立てて、自分の選択を守ろうとします。
Ross: You’re going out with Richard? Dad’s ophthalmologist?
(リチャードとデートしてるのか?父さんの眼科医の?)Monica: For your information, he happens to be one of the brightest, most sophisticated men I’ve ever been with.
(言っておくけど、彼はこれまで付き合った中で一番聡明で洗練された人よ。)Ross: He’s twenty-one years older than you.
(君より21歳も年上だぞ。)Friends Season2 Episode15(The One Where Ross and Rachel…You Know)
シーン解説と心理考察
ロスの問いかけには、驚き以上のものが含まれています。「父さんの眼科医の?」という念押しが、相手を値踏みする響きを帯びています。妹の選択を認めがたいという気持ちが、この一言ににじむ場面です。
モニカが「For your information」で切り出したのは、その響きを受け取ったからでしょう。この前置きは、相手の認識を正すという宣言であり、同時に苛立ちの合図でもあります。彼女は守勢に回っています。
続けて並べられるのは、リチャードの美点ばかりです。聡明で、洗練されている。人柄を語れば語るほど、彼女がこの関係を正当化しようとしていることが表れています。
そしてロスは、年齢差という動かしがたい事実で切り返します。兄妹の言い合いという形を借りて、モニカ自身が抱えている迷いまで浮かび上がってくる場面です。
『Friends』流・覚え方のコツ
腕を組み、少しあごを上げて「言っておきますけどね」と切り出す姿勢を思い浮かべてください。for your information は、その構えとともに発せられます。
字面は「あなたの情報のために」という親切な申し出です。けれど実際には、相手の思い込みを正す身構えが伴っています。丁寧な包装紙で包まれた反論。その落差が、この表現の性格を作っています。
一方、メールの冒頭に添えられる FYI には、その構えがありません。同じ語なのに、口に出すか書くかで温度が変わる。声に出したときの姿勢と、キーボードで打ったときの無表情。その対比ごと覚えておくと、使い分けを間違えずに済みます。
例文で覚える「for your information」
反論の前置きにも、純粋な情報提供にもなります。3つの例文で、その振れ幅を見ていきましょう。
For your information, I finished that report yesterday.
(言っておきますが、その報告書は昨日仕上げました。)
仕事の遅れを疑われた場面です。反論の前置きとして最も典型的な使い方で、事実だけを静かに置くことで、責めるより効果的に相手の誤解を解けます。
For your information, that restaurant closed last month.
(参考までに、あのレストランは先月閉店したよ。)
相手が知らない事実を伝える場面です。とげのない、純粋な情報提供としても機能します。口調をやわらげれば親切な補足として自然に響き、相手に恥をかかせずに情報を渡せます。
A: You’ve never even tried the new system.
B: For your information, I’ve been using it since March.
(A:新しいシステム、試したこともないでしょ。)
(B:言っておきますが、3月から使っていますよ。)
決めつけに対して事実で切り返す場面です。この前置きが静かな反撃として響き、感情をぶつけることなく、相手の思い込みだけを的確に崩せます。事実は、声を張るより強く届きます。
あわせて覚えたい関連表現
just so you know
(知っておいてほしいんだけど)
より柔らかく、反論の色が薄い表現です。for your information が訂正の構えを持つのに対し、こちらは事前に伝えておくという含みになります。相手を責めずに情報を渡したいときに選ばれます。
as a matter of fact
(実のところ、それどころか)
意外な事実を付け加えるときに使います。for your information が相手の認識を正すのに対し、こちらは自分の発言を補強する働きが強くなります。話に厚みを足す一言として、肯定的な文脈でも使えます。
mind you
(とはいえ、言っておくが)
前言に留保を加える表現です。文中や文末にも置ける点で、常に文頭に立つ for your information とは配置が異なります。イギリス英語での使用頻度が高く、会話に軽い含みを添えます。
Note|口にする FYI と、書き添える FYI
同じ語句なのに、声に出すか書くかで印象が変わる。for your information は、その代表例です。
この表現は、社内文書や電報の表題として使われてきた定型句だとされます。「以下は貴殿の情報のために」という、事務的な前置きです。書き言葉での頻用が略語 FYI を生み、電子メールの普及とともに一般化しました。今日、メールの冒頭に FYI と添えても、そこにとげを読み取る人はほとんどいません。単なる情報共有の合図です。
ところが、声に出して「for your information」と言えば、多くの場合いら立ちが伴います。相手の思い込みを正すという構えが、フルスペルの重さとともに伝わるからです。書き言葉が事務的な中立さへ向かい、話し言葉が反論の合図として残った。使用場面の分岐が、そのまま温度の分岐になっています。
劇中のモニカが選んだのは、当然ながら話し言葉のほうです。兄の詮索に対して、彼女はこの前置きで身構えました。もしメールで「FYI, he’s very sophisticated」と書き送っていたら、あの苛立ちは半分も伝わらなかったでしょう。四語をすべて口にしたことに、意味があります。
同じ言葉が、通り道によって表情を変えます。
まとめ|モニカが選んだ、丁寧な反撃
for your information は、相手の誤解や思い込みを正すときの前置きです。字面は親切な情報提供ですが、実際にはとげを含んだ反論として響きます。
この表現を知っておくと、感情的にならずに事実で切り返せます。決めつけられたとき、黙り込むのでもなく声を荒らげるのでもなく、静かに認識を正す。語気を強めずに立場を守れるぶん、相手との関係を壊さずに済む場面も多くあります。職場でも家庭でも、言い争いに発展させずに認識を揃えたいときの一手です。会話のレパートリーに加えてみてください。
略語の FYI で書けば、そのとげは消えます。丁寧さの衣は、時に反撃の道具にもなるのですね。


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