海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
つらい時期や難しい局面を、なんとか通り抜けてその先へ進む。そんな「乗り越える」という気持ちを、英語でどう表すのだろうと考えたことはありませんか。
そんなときに使える「get past」を、『フレンズ』シーズン5第17話の終盤、チャンドラーが自分たちの関係の良さを、モニカに誠実に語る場面から、一緒に見ていきましょう。
「get past」の意味とニュアンス
get past
意味:(段階・困難・障害を)乗り越える・通り過ぎる
もともとは「〜の前を通り過ぎて進む」という物理的な意味を持ちます。そこから比喩的に広がり、「つらい時期を抜ける」「難しい段階を越える」「わだかまりを乗り越える」といった使い方をされるようになりました。物理的な通過も、感情的・時間的な通過も同じ形で表せるのが特徴です。困難や段階を「くぐり抜けて向こう側に出る」という到達のニュアンスがあり、否定形 can’t get past にすると「どうしても乗り越えられない・引っかかって先に進めない」という気持ちも表せます。
【ここがポイント!】
- 「past(〜を過ぎて)」を get する、つまり通り抜けて先へ進むイメージが芯
- 物理的な通過から、時期・困難・感情を「越える」比喩まで幅広く使える一言
- 否定形 can’t get past で「引っかかって進めない」という気持ちも表せる
『フレンズ』S05E17のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
「一番アツいカップル」の座に妙に執着していたモニカに対し、チャンドラーがその競争にこだわった本当の理由を打ち明けます。関係の成熟を静かに語るくだりで、フレーズが登場します。
Chandler: I’ve never been in a relationship that’s lasted this long before. And to get past the beginning and still want to be around each other– I think that’s pretty incredible.
(こんなに長く続いた関係、今までなかったんだ。始まりの時期を越えても、まだずっと一緒にいたいと思える。それって、すごいことだと思うんだ)Monica: That’s so sweet. I know I was acting a little crazy, but I feel the same way.
(すごく素敵。私、ちょっとおかしくなってたけど……同じ気持ちよ)Friends Season5 Episode17(The One with Rachel’s Inadvertent Kiss)
シーン解説と心理考察
いつもは冗談で本心をはぐらかすチャンドラーが、ここでは茶化さずに素直な気持ちを口にしています。get past the beginning という言い方には、恋愛の初期という「関門」を通り抜けて、関係が成熟した段階に入ったという前向きな捉え方がにじみます。競争にこだわっていた理由が、実は今の関係を大切に思う気持ちの裏返しだったと明かされ、モニカの態度もやわらぐ空気があります。派手な告白ではなく、通り過ぎてきた時間そのものを慈しむような静けさが、この一言に重なっています。エピソードのドタバタを穏やかに着地させる、温かい場面と言えます。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
past を「通過点の標識」として思い浮かべてみてください。get past は、その標識の前を get(進んで)通り抜けるイメージです。チャンドラーが語る「the beginning(始まりの時期)」という関門の看板を、二人が手をつないで通り抜けていく──その先にも、まだ一緒にいたいと思える関係が続いています。物理的に「通り過ぎる」から、時期や困難という抽象的な関門を「抜ける」へと絵が広がると、比喩的な使い方もすっと頭に入ります。
例文で覚える「get past」
段階や困難を通り抜けるという感覚を、さまざまな場面で使えるフレーズです。肯定形と否定形の両方を練習してみましょう。
Once you get past the first chapter, the book gets really interesting.
(最初の章を越えれば、この本はぐっと面白くなるよ)
本や作品を勧める場面です。「序盤という段階を通り抜ければ」という、時間的・段階的な通過を表す比喩的な使い方になります。
It took me a while to get past the breakup.
(別れを乗り越えるのに、しばらくかかった)
つらい経験からの立ち直りを語る場面です。感情的な困難を「通り抜ける」という、get past の代表的な使い方のひとつです。
A: You still seem upset about the meeting.
B: Yeah, I just can’t get past how rude he was.
(A:まだあの会議のこと引きずってるみたいだね)
(B:うん、彼のあの失礼な態度がどうしても引っかかって、先に進めないんだ)
同僚同士の会話です。否定形 can’t get past を使うと、「わだかまりを越えられない」という、もやもやした気持ちが伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
get over
((病気・ショックなどから)立ち直る・克服する)
感情的なダメージから回復することに力点があります。get over a breakup のように使い、get past が「段階・障害を通り抜けて前へ進む」のに対し、痛手からの回復に焦点が寄ります。
move on
((気持ちを切り替えて)前へ進む)
過去を手放して次へ向かう、心の切り替えが中心の表現です。get past が「特定の関門・困難を越える」通過に焦点を置くのとは、少し向きが異なります。
get through
((困難な期間を)切り抜ける・やり通す)
つらい期間の最中を耐えて通り抜ける、という持続のニュアンスがあります。get past が「その段階を越えて向こう側に出る」到達点に焦点を置くのと対照的です。
Note|「越える」を運ぶ past の空間感覚
get past がこれだけ幅広い場面で使えるのは、past という語が持つイメージの力によるところが大きいと言えます。
past は前置詞・副詞として「〜を通り過ぎて」「〜の向こうへ」という位置関係を表します。walk past the station(駅の前を通り過ぎる)のように、まずは空間的な「通過」が基本です。ところが英語では、この空間の感覚がしばしば時間や状態にそのまま持ち込まれます。時期を「通り過ぎる」、困難を「通り過ぎる」、感情のしこりを「通り過ぎる」──いずれも、目の前にある何かの「向こう側」へ移動するという同じ絵で捉えられているのです。get past は、この past に「(努力して)たどり着く・成し遂げる」という含みを持つ get が組み合わさることで、「関門の向こう側へ、自力で抜け出る」という到達の感覚を帯びます。だからこそ、本の序盤も、別れのつらさも、人への不満も、すべて「通り抜けるべき何か」として同じ形で表せるわけです。
チャンドラーの get past the beginning も、恋愛の初期という段階を「通り過ぎて向こう側に出た」という一言でした。past のコアにある「〜の向こうへ」という感覚をつかんでおくと、この表現の応用範囲の広さが見えてきます。
一つの前置詞が、これだけの景色を運んでいるのは面白いものです。
まとめ|チャンドラーの本音から学ぶ「乗り越える」一言
「get past」は、段階や困難を通り抜けて、その向こう側へ進むことを表す表現です。物理的な「通り過ぎる」から、時期・つらさ・わだかまりを「越える」まで、past のイメージひとつで幅広くカバーします。
この表現を知っておくと、「なんとか乗り越える」という気持ちを、前向きな到達感とともに伝えられるようになります。can’t get past にすれば「引っかかって進めない」という本音も表せて、使い分けの幅も広がります。
いつもの冗談を脇に置いて本音を語ったチャンドラーの、あの静かな瞬間でした。


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