海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
とっさに言い訳をひねり出したり、その場しのぎの作り話をしたり——事実にないことを、頭の中からその場で作り出す瞬間が、私たちの日常には意外と多くあります。
そんな瞬間にぴったりの英語表現が 「make something up」 です。『フレンズ』シーズン3第4話の終盤、優しすぎるがゆえに正直に不採用を伝えられないフィービーが、わざと「ひどい不採用理由」を並べ立てて役者ジョーイに愛想を尽かさせようとする、実にフィービーらしい一幕から、一緒に見ていきましょう。
「make something up」の意味とニュアンス
make something up
意味:でっち上げる、作り話をする、でたらめを言う
make something up は、事実でないことを、その場で頭の中から作り出すという意味の表現です。嘘、言い訳、理由、口実——事実に基づかない「話」全般を「創作する」場面で幅広く使われます。日常会話では極めて頻度が高く、軽い嘘の指摘から本格的な捏造の追及まで、状況に応じてトーンを変えられる便利な句動詞です。
ここで注意したいのは、make up が非常に多義的な句動詞だという点です。仲直りする(make up with)、化粧する(put on makeup)、埋め合わせる(make up for)、そして今回の「でっち上げる(make up a story)」など、後ろに来る目的語や前置詞によって意味がガラッと変わります。「でっち上げる」の意味になるかどうかは、目的語に「話・言い訳・理由」といった「内容を持つもの」が来るかで判断できます。
なお、この語は必ずしも悪意のある嘘だけを指すわけではありません。子どもに寝る前のお話を作ってあげるといった、悪意ゼロの「創作」にも使えるフラットな語なので、文脈次第でニュアンスの温度は大きく変わってきます。
【ここがポイント!】
- 核は「事実でないことを、その場で頭の中から作り出す」創出のイメージ
- make up は多義動詞、目的語で意味が決まる
- 悪質な嘘から悪意ゼロの創作まで、温度の幅が広い
『フレンズ』S03E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
不採用を伝えるつらさに耐えかねたフィービーは、一計を案じます。「人間として説得力がない」「プリティだけどおバカ……じゃなくて、かなりおバカ」——わざとひどい不採用理由を次々に読み上げて、ジョーイの方から愛想を尽かし、自分をエージェント役から降ろしてくれるように仕向けたのです。まんまとエステルに戻ると言い出したジョーイでしたが、その直後にハッと気づきます。
Joey: Look, I really appreciate this, Pheebs, but… I think I’m going to have to go back to Estelle.
(なあ、ほんとに感謝してるんだ、フィーブス。でも……俺、エステルのところに戻ろうと思う。)Phoebe: Yeah. I know. I understand.
(ええ。わかってる。わかるわ。)Joey: You do? Thanks. Wait a minute. Did you just make all that stuff up to get out of being my agent?
(わかってくれるのか?ありがとな。……ちょっと待て。今の話、全部でっち上げて俺のエージェント辞めようとしただろ?)Phoebe: Ooh, you caught me. I am so busted.
(あら、バレちゃった。完全にお見通しね。)Friends Season3 Episode4 (The One with the Metaphorical Tunnel)
シーン解説と心理考察
フィービーの回りくどい優しさが、この短いやりとりに凝縮されています。ジョーイを傷つけまいとして考え抜いた末に出てきた解決策が、「わざとひどい嘘をついて相手から見限られる」という、あべこべに手の込んだ回避行動。彼女の中では筋が通っているのが、いかにもフィービーらしい思考回路と言えるでしょう。
一方のジョーイも、普段の脳天気なイメージからは意外なほど鋭く、あっさり信じかけた直後にこの嘘を見抜きます。「全部 make up しただろ?」と問い詰められたフィービーが、悪びれもせず「バレちゃった、完全にお見通しね」と観念する呼吸も絶妙。テンポよく畳みかけるオチが、二人のキャラクターと関係性を数秒でくっきり浮かび上がらせる、脚本の巧みさが光る場面です。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
make(作る)に up(すっかり・でっち上げて)が加わる——この組み合わせを、何もない空中から、話や言い訳を積み木のように「こしらえて積み上げる」動きとしてイメージしてみてください。up が加わることで、「ゼロから完成させる」という完了・創出の含みが生まれます。
『フレンズ』のシーンでは、フィービーがエージェント役から逃れるために、「ひどい不採用理由」を次々にでっち上げる姿が印象的です。優しさゆえの手の込んだ作り話——その創作の様子ごと思い出せれば、「事実でないことをこしらえる」という核心が、忘れようがなくなります。ジョーイの “Did you just make all that stuff up?” という問い詰めまでセットで覚えれば、疑問形の使い方まで一気に手に入ります。
例文で覚える「make something up」
make something up は、その場しのぎの言い訳から、悪意のない創作、ビジネスでの捏造への警告まで、幅広い場面で活躍します。3つの例文で、その温度の幅を見ていきましょう。
Stop making excuses—you’re just making it up as you go.
(言い訳はやめて。行き当たりばったりででっち上げてるだけでしょ。)
その場しのぎの言い訳を指摘する場面で、make it up as you go(行き当たりばったりでやる、その場でこしらえていく)は定番のイディオムです。
She made up a bedtime story for the kids on the spot.
(彼女はその場で子どもたちに寝る前のお話を作ってあげた。)
悪意ゼロの「創作する」用法。make up が必ずしも嘘とは限らず、ポジティブな意味で「その場でお話を作る」場面にも自然に使えることを示す例文です。
A: Are you making this up, or did that really happen?
B: I swear, it’s all true!
(A:それでっち上げてる?それとも本当にあったこと?)
(B:誓って全部本当だってば!)
話の真偽を疑うやりとりです。進行形 be making this up で「今まさに作り話をしている?」と問う形が、口語で自然に飛び出します。
あわせて覚えたい関連表現
come up with
((アイデアなどを)思いつく、考え出す)
新しい案・アイデアを出すという意味の表現で、こちらは中立的にただ「考え出す」ことを指します。make up が「事実でないことをこしらえる(嘘寄り)」の含みを強めに持つのに対し、come up with にはネガティブなニュアンスは基本的にない違いがあります。
fabricate
((証拠・話などを)捏造する)
make up のフォーマル版に相当する動詞で、書き言葉・報道・法的文脈で「捏造する」を厳密に言うときに使われます。make up よりも「悪質さ」「意図的な捏造」のニュアンスがぐっと強くなる、重い語感の表現です。
cook up
((話・計画を)でっち上げる、企む)
make up と近い口語表現ですが、cook up には「たくらみ・陰謀」のニュアンスが加わることが多いのが特徴です。単なる嘘というより、何かをたくらんで作り上げるイメージが強く出る違いがあります。
Note|make up / fabricate / cook up の使い分け
「事実でないことを作る」を表す英語動詞は、実はいくつも並存しています。ニュース、ドラマ、日常会話——それぞれの場面で、微妙に選ばれる語が違うのに気づいた人もいるかもしれません。今回登場した make something up と、関連表現で挙げた fabricate、cook up。この三つの棲み分けを、少し整理してみましょう。
まず fabricate は、報道・法廷・調査報告といったフォーマルな文脈で圧倒的に選ばれる語です。fabricate evidence(証拠を捏造する)、fabricate a story(話を捏造する)といったコロケーションが典型で、そこには「意図的な悪質さ」「重大な不正」の響きがしっかり伴います。書き言葉のトーンが強く、日常会話で “I just fabricated that” と言うと、少し大げさで芝居がかった印象を与えかねません。
一方の cook up は、口語で「たくらむ・企む」のニュアンスが加わる表現です。cook up a plan(計画を企てる)、cook up a story(話をでっち上げる)といった使い方をされ、単なる嘘というより「何かをこしらえて、たくらんでいる」感覚が強く出ます。犯人グループがアリバイを cook up する、というような、少し裏のある創作の文脈にはまりやすい語です。
これに対して make something up は、三つの中でいちばん幅の広い、いちばん温度のフラットな語です。とっさの言い訳、子ども向けのお話、その場しのぎの回答、フィービーの「回りくどい優しさゆえの嘘」——文脈次第で悪意もこもれば、まったく無害にも響きます。日常会話で「軽い嘘」も「悪意ゼロの創作」も両方カバーできる守備範囲の広さが、この語の便利さの正体と言えるでしょう。
フォーマルで重い場面なら fabricate、たくらみの気配があるなら cook up、それ以外の日常のあらゆる「こしらえる」なら make up。この三段階を意識しておくと、選ぶ語ひとつで話し手の態度まで伝わってきます。
まとめ|フィービーの下手な嘘から学ぶ「創作の語彙」
make something up は、事実にないことをその場で作り出すことを表す、日常会話の主力表現です。悪意のある嘘から悪意ゼロの創作まで、温度の幅が広く、文脈次第でトーンを自在に変えられる便利な句動詞と言えます。
『フレンズ』のシーンでフィービーが並べ立てる「ひどい不採用理由」は、彼女なりの精一杯の優しさから生まれた、手の込んだ作り話です。一度はまんまと信じかけたジョーイに結局は見抜かれてしまいますが、悪びれずに観念するその潔さこそがフィービーの魅力を際立たせている——そう思うと、この語の学び甲斐がぐっと増してくるかもしれません。
言い訳を指摘するとき、話の真偽を確かめるとき、あるいは楽しい創作を語るとき。日常のさまざまな場面で活躍するひと言として、表現の引き出しに加えてみてください。


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