「no such thing as」の意味と使い方|『フレンズ』S03E13で学ぶ英会話

「no such thing as」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

「ただ食事に行っただけだから」と軽く弁解したつもりなのに、まわりから「その”ただ”が怪しいんじゃないの」と突っ込まれてしまった経験はありませんか。自分では本当に何でもないつもりでも、周りの目にはそう映らないことがあります。

そんな場面で飛び出すのが「no such thing as」、そんなものは存在しない、という一言です。『フレンズ』シーズン3第13話の序盤、元恋人とばったり再会したモニカが、翌朝それを仲間に打ち明けるシーンから、一緒に見ていきましょう。

目次

「no such thing as」の意味とニュアンス

no such thing as ~
意味:~なんてものは存在しない

「there is no such thing as ~」の形で使われ、「~というものは、そもそもこの世に存在しない」と言い切る表現です。ポイントは、否定している対象が「可能性」ではなく「存在そのもの」だという点にあります。目の前の一つの事例を否定するのではなく、そのカテゴリーごと消してしまう。だから断言の強さが際立ちます。

such は「そのような」を指す言葉で、直前に出てきた話題を受け取る働きをします。相手が口にした言葉をそのまま拾い上げ、「そのようなものは、ない」と返す。この構造があるからこそ、相手の前提そのものを覆す切り返しとして機能します。

用途は幅広く、「There’s no such thing as a stupid question(バカな質問なんてない)」のような励ましにも、「There’s no such thing as a free lunch(タダより高いものはない)」のような警句にも使われます。会話では、相手の言い分にきっぱり異を唱えるとき、あるいはことわざ的に真理を語るときに顔を出す表現です。

【ここがポイント!】

  • 否定しているのは「可能性」ではなく「存在」そのもの、という一言
  • 相手が使った言葉をそのまま拾って返すと、切り返しとして決まる
  • 励ましにも警句にも化ける、幅の広い型として覚えておくのがコツ

『フレンズ』S03E13のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

モニカは、別れた元恋人リチャードとレンタルビデオ店で偶然再会します。翌朝、帰りが遅かったことを仲間に指摘され、しぶしぶ事情を白状するのですが、彼女はあくまで「何でもないこと」として話そうとします。その言い訳の一語を、フィービーがすかさず拾い上げます。

Monica: Well, I ran into Richard.
(それがね、リチャードにばったり会っちゃって。)

Rachel: When did this happen?
(それ、いつの話?)

Monica: Oh, around 8:02. And then we went out for an innocent burger.
(ええと、8時2分ごろ。それで、無害なバーガーを食べに行っただけ。)

Phoebe: Oh, there’s no such thing as an innocent burger.
(あら、無害なバーガーなんてものは存在しないわよ。)

Ross: Are you gonna see him again?
(また会うのか?)

Monica: Tomorrow night.
(明日の夜。)

Friends Season3 Episode13(The One Where Monica and Richard Are Just Friends)

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シーン解説と心理考察

モニカが選んだ innocent(無害な、やましくない)という一語に、この場面のすべてが凝縮されています。彼女は再会を「ただのバーガー」に格下げすることで、自分の中に残る未練を認めまいとしている。その防御の姿勢が、言葉選びのわざとらしさから伝わってきます。

フィービーの返しが効くのは、モニカの言い分を否定していないからです。「会ったこと」も「食べたこと」も否定しない。ただ、彼女が付け足した「無害な」という修飾語だけを取り上げて、そんなカテゴリーは存在しないと言い切る。弁解の土台になっていた一語を抜き取られ、モニカの理屈は静かに崩れます。

そして直後、次に会う予定を訊かれたモニカが即答してしまう。「何でもない」と言い張った本人が、翌日の約束をすでに持っている。フィービーの一言が正しかったことを、モニカ自身の返答が証明する構図になっています。短いやりとりの中で、自己欺瞞が二段構えで暴かれていく運びが見どころです。

『フレンズ』流・覚え方のコツ

このフレーズは、相手が差し出した箱の中身を確かめるのではなく、箱ごと持ち去ってしまう動作でイメージすると定着します。

モニカは「無害なバーガー」という箱を差し出しました。普通なら「本当に無害だったの?」と中身を検分するところです。ところがフィービーは中身を見ようともせず、「その箱、そもそも存在しないから」と箱ごと消してしまう。議論の土俵をひとつ手前に引き戻す、あの身のこなしです。

no such thing as と口にするときは、目の前に置かれた箱をひょいと持ち上げて、そのまま後ろへ放り投げる。その空っぽになったテーブルの絵を思い浮かべると、「存在ごと否定する」という核心が手に残ります。

このエピソードの他のフレーズ

例文で覚える「no such thing as」

存在そのものを否定するこの型は、励ましにも忠告にも使えます。三つの場面で、その振れ幅を見てみましょう。

There’s no such thing as a stupid question.
(バカな質問なんて存在しないよ。)
研修や授業で、手を挙げるのをためらっている相手にかける一言です。「その質問は悪くない」ではなく「悪い質問というカテゴリー自体がない」と言うことで、励ましの強度が上がります。

In this industry, there’s no such thing as job security.
(この業界に、雇用の安定なんてものは存在しない。)
キャリアの相談で、現実を率直に伝える場面。個別の会社を批判するのではなく、業界全体の前提として言い切ることで、冷静な忠告として響きます。

A: I found a site that doubles your money in a week.
B: Come on. There’s no such thing as easy money.
(A:一週間でお金が倍になるサイトを見つけたんだ。)
(B:やめときなよ。うまい話なんてこの世にないって。)
友人のあやしい儲け話に釘を刺すやりとりです。相手の言葉を最後まで検証せず、前提ごと否定する。この使い方が、フィービーの切り返しにいちばん近い形です。

あわせて覚えたい関連表現

there is no way (that) ~
(~なんてありえない)
同じ「ありえない」でも、こちらが否定しているのは可能性や実現性です。no such thing as が「そのカテゴリーは存在しない」と言うのに対し、there is no way は「そうなる見込みはない」と言っています。否定の的が一段違います。

anything but ~
(~とは正反対で、まったく~ではない)
性質を強く打ち消す表現です。「an innocent burger」を anything but innocent と言えば「まったく無害じゃない」となり、そのバーガーの性質を否定することになります。存在自体を消す no such thing as とは、狙う場所が異なります。

by no means
(決して~ではない)
程度や状態をきっぱり否定する副詞句で、ややかたい響きを持ちます。文の一部を強く打ち消すために使うもので、no such thing as のように名詞の存在そのものを消す働きはありません。

Note|「タダ飯なんて存在しない」――no such thing as が背負ってきた警句の歴史

no such thing as という型が英語圏でこれほど定着した背景には、この形で語り継がれてきた有名な警句の存在があります。その代表格が「There’s no such thing as a free lunch」です。

この言い回しの出どころは、19世紀アメリカの酒場にあったとされています。当時の店は「飲み物を一杯頼めば昼食は無料」という看板を掲げて客を呼び込みました。ところが出てくるのは塩気の強い料理で、客は喉が渇いて追加の一杯を頼むことになる。結局、無料に見えた昼食の代金は飲み物の値段にしっかり織り込まれていた、という仕組みです。やがてこの経験が「タダに見えるものには必ず代償がある」という警句として広まり、20世紀には経済学者ミルトン・フリードマンが同名の著書を世に出したことで、経済の原則を語る決まり文句として定着したと言われています。

興味深いのは、この警句が「その昼食は無料ではなかった」という個別の指摘ではなく、「無料の昼食というものは存在しない」という全否定の形を選んだ点です。個別の事例を否定すれば「例外もある」と反論の余地が残りますが、存在そのものを否定すれば、議論は最初の一歩で終わります。no such thing as が警句と相性がいいのは、この逃げ場のなさゆえです。

フィービーの「無害なバーガーなんて存在しない」も、構造はまったく同じです。「そのバーガーは無害じゃなかった」と言えば、モニカは「今回は本当に何もなかった」と粘れます。しかし「無害なバーガーというものは存在しない」と言われてしまえば、反論の足場がありません。何気ない笑いの一言が、100年以上使われてきた警句の型をそのまま踏んでいるわけです。

言い切りの強さは、否定する場所の選び方から生まれるのかもしれません。

まとめ|「その”ただ”が怪しい」を英語で

no such thing as は、目の前の一例を否定する表現ではありません。相手が持ち出したカテゴリーそのものを、この世からなかったことにする一言です。だからこそ、反論の余地を残さない断言として働きます。

使いどころは、相手の言い分の「前提」に引っかかったときです。細部を検証するより、その前提ごと外してしまったほうが早い。励ましにも、忠告にも、軽いツッコミにも化けるのは、この構造の身軽さがあるからです。

言い訳をやんわり、しかし確実に崩したいとき。あるいは「そんなうまい話はない」と伝えたいとき。フィービーがバーガー一つで見せたこの型を、表現の引き出しに加えてみてください。

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