海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
心が乱されるものと、穏やかでいられるもの。その二つを天秤にかけて、あえて後者を選んだと自分に言い聞かせたこと、ありませんか。
そんな瞬間にぴったりの「opt for」を、『フレンズ』シーズン2第7話の序盤、レイチェルがロスへの嫉妬を振り切ったと友人たちに宣言する場面から、一緒に見ていきましょう。
「opt for」の意味とニュアンス
opt for
意味:(複数の選択肢から)〜のほうを選ぶ
opt は option(選択肢)と同じ根を持つ動詞です。そこに for(〜のほうへ)が加わり、「いくつか並んだ選択肢のうち、こちらへ手を伸ばす」という動きを表します。
choose との違いは、比較のニュアンスにあります。choose が単に「選ぶ」であるのに対し、opt for には「他の可能性を検討したうえで、あえてこちらを取る」という含みがあります。天秤にかけた末の判断、という空気です。
そのぶん、少し理性的で落ち着いた響きを持ちます。勢いで「これにする!」と決めるときより、条件を比べて結論を出すときになじみます。
会議で方針を決めるとき、買い物で条件を比べるとき、人生の岐路で道を選ぶとき。日常でもビジネスでも使え、少しあらたまった場面にも耐える表現です。
【ここがポイント!】
- opt は option(選択肢)の頭、「選択肢のほうへ手を伸ばす」のが核
- choose より理性的で、比較検討を経た判断がにじむ言い方
- opt for A over B の形で「BよりAを選ぶ」と言えると使い勝手が上がる一言
『フレンズ』S02E07のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
レイチェルは、これまでロスとその恋人をめぐって心をかき乱されてきました。ところがこの日は様子が違います。デートの予定があると打ち明けた彼女に、ジョーイがおそるおそる過去の話題を持ち出すと、レイチェルは自嘲まじりの一言で切り返します。皮肉のきいた言い回しに注目です。
Joey: What about Ross and…
(ロスとのことは…?)Rachel: What, my whole insane jealousy thing? Well, you know, as much fun as that was I’ve decided to opt for sanity.
(何?あの常軌を逸した嫉妬のこと?まあ、あれはあれで楽しかったけど、正気でいるほうを選ぶことにしたの。)Chandler: You’re really okay about all this?
(本当にこれで平気なの?)Rachel: Oh, yeah. Come on. I’m moving on.
(ええ、平気よ。もう、前に進んでるんだから。)Friends Season2 Episode7(The One Where Ross Finds Out)
シーン解説と心理考察
ジョーイの言いよどみが、この場の空気をよく表しています。名前を出しかけて止めるその間に、この話題が地雷であることを全員が知っている、という空気があります。
レイチェルの返しは、二重に構えられています。まず自分の嫉妬を「常軌を逸した」と言い切り、先回りして笑いに変える。そのうえで「正気を選んだ」と、まるで正気が数ある選択肢の一つであるかのように語ってみせます。opt for という、どこか事務的で理性的な語を持ち出したことで、感情の話が選択の話にすり替わり、皮肉として響きます。
もっとも、これほど言葉を尽くして「平気だ」と示さなければならないこと自体が、彼女の未練を裏返しに見せています。強がりの輪郭が、この一言に重なっています。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
テーブルの上に、カードが二枚並んでいる場面を思い浮かべてください。片方には「嫉妬」、もう片方には「正気」と書かれている。レイチェルは両方をじっと見比べたあと、正気のカードのほうへ、すっと手を伸ばします。
この「見比べてから、片方へ手を伸ばす」動作が opt for です。opt は option(選択肢)、for は「〜のほうへ」。手が伸びる方向を for が示しています。
勢いで一枚をつかむなら go for、あきらめて残り物を取るなら settle for。手の動き方が違えば、使う語も変わります。
カードを見比べる、あの数秒の間。それが opt for に含まれた理性の時間だと思えば、choose との違いも自然に身につきます。
例文で覚える「opt for」
opt for は、比べたうえでの選択を伝えます。買い物から働き方まで、判断が求められる3つの場面で見ていきましょう。
Many workers now opt for remote work over long commutes.
(今や多くの働き手が、長い通勤よりリモートワークを選んでいる。)
働き方の傾向を語る、ややあらたまった場面です。opt for A over B の形にすると、「BではなくAを」という比較が一文で伝わります。
She opted for a career instead of graduate school.
(彼女は大学院ではなく、キャリアの道を選んだ。)
人生の岐路を振り返るときの言い方です。instead of と組み合わせると、選ばなかった側もはっきり示せます。
A: Should we go with the premium plan?
B: Let’s opt for the basic one until we see how it performs.
(A:上位プランにしたほうがいいかな?)
(B:動きを見るまでは基本プランのほうを選ぼう。)
仕事でプランを検討する場面です。「様子を見てから」という慎重さを含む判断に、opt for はよくなじみます。
あわせて覚えたい関連表現
go for
(〜を選ぶ、〜にする)
勢いのある選択です。opt for が比較検討を経た判断であるのに対し、go for は「それでいこう」という即断の空気をまといます。
settle for
((妥協して)〜で手を打つ)
本命に届かず、次善で妥協する選択です。前向きに選び取る opt for とは、選択の温度がはっきり違います。
select
((慎重に)選び抜く)
候補を吟味して選ぶ、かたい語です。opt for も理性的ですが、select はさらに公式で、審査や採用の文脈で使われます。
Note|「望む」から生まれた選択の言葉
opt for が持つ、あの理性的な響き。それは語の来歴とつながっています。
opt はラテン語の optare にさかのぼります。この語は「選ぶ」と同時に「望む、願う」を意味していました。選ぶことと望むことが、もともと一つの動詞の中に同居していたわけです。この optare から、英語にはいくつもの語が枝分かれしました。option(選択肢)は「望みうるもの」、optional(任意の)は「望めば取れる」、そして adopt(採用する、養子にする)は ad-(〜へ)+ optare で「自分のほうへ望んで引き寄せる」。養子縁組を adopt と呼ぶのは、血縁ではなく意志によって家族を選ぶからです。optimism(楽観主義)も、最善のものを望む態度として同じ根に連なります。どの語にも、「与えられたものを受け取る」のではなく「自分の意志で望んで取りにいく」という姿勢が流れています。
opt for の主体性は、ここから来ています。単に選ぶのではなく、望んでそちらへ手を伸ばす。レイチェルが「正気を opt for した」と言うとき、彼女は正気を望ましいものとして自分の意志で取りにいった、と宣言していることになります。
選ぶという言葉の底に、望むという願いが沈んでいます。
まとめ|正気を選んだと宣言したレイチェル
opt for は、複数の選択肢を見比べたうえで、あえてこちらへ手を伸ばす選択です。choose の中立さとも、go for の勢いとも、settle for の妥協とも違う、理性の時間を含んだ一語です。
この語が使えるようになると、自分の判断に理由があることまで相手に伝わります。「これにした」ではなく「比べたうえでこちらを選んだ」と言えるからです。
レイチェルの一言が可笑しいのは、感情のもつれを、まるでプランを選ぶように語ってみせたところにあります。理性的な語をあえて感情の場に持ち込む。その落差も含めて、表現の引き出しに加えてみてください。


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