海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
今の仕事や環境が辛くて「もう辞めたい」と思う一方で、「でも、ここでやめたら中途半端かも」と思い直す。そんな行ったり来たりの気持ちを抱えたこと、ありませんか。
そんな揺れる心境にぴったりなのが「stick it out」。辛くても途中で投げ出さず、我慢して続けることを表します。『フレンズ』シーズン3第11話の中盤、憧れのファッション業界に入ったのに雑用ばかりのレイチェルが、ダイナーで働くモニカに愚痴をこぼすシーンから、一緒に見ていきましょう。
「stick it out」の意味とニュアンス
stick it out
意味:(辛くても)我慢して続ける、最後までやり通す
stick は「くっついて離れない」、out は「最後まで」を表します。この2つが組み合わさって、苦しい状況から逃げ出さずに耐え抜く、というイメージが生まれます。it は「今の辛い状況・試練」を漠然と指しており、特定の何かを置き換える必要はありません。「本当は投げ出したいけれど、歯を食いしばって踏みとどまる」という粘りのニュアンスが核にあり、きつい仕事・厳しい練習・長い下積みなどを「もう少し辛抱して続ける」と言いたいときに活躍します。前向きな決意にも、しぶしぶの我慢にも使える、幅のある表現です。
【ここがポイント!】
- 核は「離れず(stick)最後まで(out)踏みとどまる」という粘りのイメージ
- it は漠然と「今の辛い状況」を指す、と押さえると使いやすい
- 決意にも「しぶしぶの我慢」にも寄せられる、幅のある一言
『フレンズ』S03E11のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ファッションの世界に飛び込んだはずのレイチェルですが、任される仕事はコーヒー出しやハンガーの整理ばかり。フラストレーションが限界に達し、ダイナーで働くモニカ相手に本音をぶちまけます。「辞めたい、でも……」という揺れが、そのままセリフに表れます。
Rachel: Oh, God, I hate my job. I hate it.
(あーもう、この仕事大っ嫌い。ほんとに嫌。)Monica: I know, honey. I’m sorry.
(わかるよ、かわいそうに。)Rachel: Oh, I want to quit but then I think I should stick it out. Then I think why would such a person stay in such a demeaning job just because it’s remotely related to the field they’re interested in.
(あー、辞めたい、でもやっぱり我慢して続けるべきかもって思って。そしたら今度は、興味のある業界にちょっと関係あるってだけで、なんでこんな屈辱的な仕事に居続けるんだろうって思えてきて。)Friends Season3 Episode11 (The One Where Chandler Can’t Remember Which Sister)
シーン解説と心理考察
「辞めたい」と「stick it out(耐えて続けるべき)」の間で、レイチェルの気持ちが目まぐるしく揺れているのが伝わってきます。夢に少しでも近い場所にしがみつきたい必死さと、雑用に明け暮れる惨めさが同居しているのが、このセリフの見どころです。しかも相談相手のモニカは仕事中で、まともに取り合ってもらえない。誰もが通る下積み時代の孤独と焦りが、早口の愚痴ににじむ場面です。stick it out という表現が、単なる「継続」ではなく「歯を食いしばる継続」であることが、レイチェルの必死な口調からも表れています。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
ガムがべったりと靴の裏にくっついて離れないように、辛い状況(it)に自分をぴたりと貼りつけたまま、最後(out)まで離れずにいる姿を思い描いてみましょう。逃げ出したいのに、その場に踏みとどまって耐えている感覚です。レイチェルが「辞めたい……でも stick it out すべき?」と揺れながらも、結局その仕事にしがみつく姿を重ねれば、「投げ出さずに粘り続ける」という意味が体感として残ります。
例文で覚える「stick it out」
「もう少しの辛抱」を誰かに伝えたいとき、あるいは自分を奮い立たせたいときに便利な表現です。3つの場面で見てみましょう。
I know it’s tough right now, but try to stick it out for a few more months.
(今はきついのは分かるけど、あと数か月だけ我慢して続けてみて。)
落ち込んでいる友人を励ます場面です。相手の辛さを認めつつ、「もう少しだけ」と背中を押す、やさしい励ましのフレーズになります。
I wanted to quit halfway through, but I’m really glad I stuck it out.
(途中で辞めたかったけど、続けてよかったと本当に思う。)
やり遂げた後の振り返りです。過去形 stuck it out を使うと、「あのとき踏ん張った自分」を肯定するニュアンスが出ます。
A: The first year here is brutal. I’m not sure I can make it.
B: Everyone feels that way at first. If you can stick it out, it gets so much easier.
(A:ここの1年目って本当にきつい。やっていける自信がないよ。)
(B:最初はみんなそう感じるもの。乗り切れれば、ずっと楽になるから。)
新人が弱音を吐く職場の会話です。「その期間を耐え抜く」という時間の幅が、if 節と組み合わさることで自然に伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
hang in there
(踏ん張って、がんばって)
主に相手を励ますときの決まり文句です。stick it out が「自分が耐え抜く」行為そのものを指すのに対し、hang in there は「今この瞬間を耐えて」という応援の色が濃いのが違いです。
tough it out
(気合で乗り切る)
痛みや苦しさを根性で耐えるニュアンスが強い表現です。stick it out より「肉体的・精神的なきつさに耐える」場面に寄っている点が特徴です。
see it through
(最後までやり遂げる)
「途中で投げ出さず完遂する」という意味で、重心が「我慢」よりも「完結させる」に置かれています。stick it out が耐える過程を、see it through がやり切る結果を強調する、と整理できます。
Note|「耐えて続ける」を表す3つの言い方の違い
英語には「途中で投げ出さずに続ける」を表す言い方がいくつもあり、stick it out はその代表格です。ただ、似た表現にはそれぞれ微妙な温度差があります。
たとえば、辛い状況に直面している相手に「hang in there!」と声をかけると、これは「今を持ちこたえて」という、その場の応援に近い響きになります。一方で「tough it out」は、痛みや不快さを根性で押し切るイメージが強く、体育会系の粘りを思わせます。そして「see it through」は、始めたことを最後まで完結させる、という「やり切り」に重心があります。この3つと並べると、stick it out はちょうど中間に位置し、「辛い状況にしがみつきながら、最後まで耐え続ける」という、我慢と継続の両方をバランスよく含んだ表現だと分かります。辞書でも stick it out は「困難で不快な状況を、終わるまで続ける」と説明され、耐えることと続けることが一体になっている点が特徴です。レイチェルが仕事にしがみつくかどうかで揺れる場面に stick it out がしっくりくるのも、この「耐えながら続ける」というニュアンスが、彼女の心境と重なるからです。
同じ「粘り」でも、応援なのか、根性なのか、完遂なのか。言葉を選ぶだけで、伝わる励ましの質が変わってきます。
まとめ|しがみついてでも続ける、という粘り
stick it out は、辛い状況から逃げ出さず、我慢して続けることを表す表現です。stick(離れない)と out(最後まで)が結びついた、粘りのイメージが核にあります。
この一言を知っておくと、「もう少しの辛抱」を誰かに伝えたり、投げ出したくなった自分を奮い立たせたりする場面で、ぐっと自然な英語が使えるようになります。きつい仕事や長い下積みを語るとき、まさに手放せない表現です。
逃げ出したい気持ちをこらえて、その場に踏みとどまる。そんな「粘り」を一言で言い表せる表現です。


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