海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
うまいこと言いくるめられて、あとから「あれ、これ利用されただけかも」と気づく。そんな悔しい経験、ありませんか。
そんなときにぴったりの「take someone for a ride」を、『フレンズ』シーズン5第5話、ホテルの部屋をめぐってチャンドラーが妙に張り切るシーンから、一緒に見ていきましょう。
「take someone for a ride」の意味とニュアンス
take someone for a ride
意味:〜をだます、カモにする、いいように利用する
take someone for a ride は、相手を欺いて振り回す、都合よく利用する、という意味のイディオムです。直訳すると「誰かをドライブに連れて行く」ですが、実際の意味はまったく物騒な方向へ向かいます。車に乗せてぐるぐると連れ回し、行き先も分からないまま相手を思うように扱う——そんなイメージが、「だます」という意味の背景にあります。
金銭をだまし取る、信用につけ込む、話をうまく作って相手を欺く、といった場面で幅広く使われます。受け身の be taken for a ride(だまされる、カモにされる)の形も頻出で、「気づいたら利用されていた」という悔しさを表すのにぴったりです。ぼったくりや詐欺まがいの体験を語るときの、定番の言い回しと言えます。
【ここがポイント!】
- 車に乗せて連れ回すイメージから「相手を振り回して欺く」に転じた表現
- 金銭でも信用でも、幅広く「だます・利用する」に使える一言
- 受け身の be taken for a ride で「だまされた」と表せるのがコツ
『フレンズ』S05E05のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ホテルで何度も部屋を替えさせられたチャンドラーは、その実、テレビのカーチェイス中継に夢中です。ロマンチックな週末を楽しみにしているモニカが部屋を決めるよう促しても、チャンドラーはすっかりギャング映画のノリに入り込んでいます。
Chandler: These clowns are trying to take us for a ride and I’m not going to let them. Now, we’re not a couple of suckers.
(あのマヌケども、俺たちをカモにしようとしてるんだ。そうはさせないぞ。いいか、俺たちはただのお人好しじゃないんだからな)Monica: I hear ya, Mugsy. But look, all these rooms are fine, okay. Can you just pick one so I can watch the…
(はいはい、わかったわよ、マグジー。でもね、どの部屋も別にいいでしょ。どれか一つ選んでくれない? そしたら私、見られるから……)Chandler: Have a perfect magical weekend together with you?
(君と完璧で魔法みたいな週末を過ごせる、って?)Friends Season5 Episode5(The One with the Kips)
シーン解説と心理考察
直前までカーチェイスの中継に見入っていたチャンドラーの口から take us for a ride が飛び出すところに、二重の可笑しさがあります。文字どおりの ride(車での逃走)を見ていた流れで、比喩の ride(カモにする)が出てくる。言葉遊びの得意なチャンドラーらしい一言として響きます。
さらにチャンドラーはすっかりギャング気取りで、モニカを Mugsy(子分風のあだ名)と呼びます。ロマンチックな週末を過ごしたいモニカと、テレビと妄想に気を取られている彼とのすれ違いが、軽妙なやり取りとして表れています。皮肉と芝居がかったノリで武装するのはチャンドラーの得意技で、その持ち味がこの場面によく出ていると言えます。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
「車に乗せられて、あちこち遠回りに連れ回されて、気づいたら財布が空っぽ」という映像を思い浮かべてみてください。相手を ride(乗車)に連れ出し、行き先も告げずに振り回す——その先にあるのが「だます」という意味です。
チャンドラーがカーチェイス中継に夢中になりながら「あいつらは俺たちを take us for a ride してる」と口にする、あの ride つながりの場面とセットにすると、言葉と意味が結びついて忘れにくくなります。
例文で覚える「take someone for a ride」
「うまいこと利用された」という悔しさを一言で表せるのが、この表現です。場面の異なる3つの例文で、使い方を見ていきましょう。
I think that salesman took us for a ride.
(あの店員、私たちをカモにしたと思う)
買い物のあとで、相場よりずっと高く売りつけられたと気づいたときの一言です。劇中と同じ「ぼったくられた」という文脈で、そのまま使えます。
He realized he’d been taken for a ride.
(彼は自分がだまされていたことに気づいた)
あとから騙されていたと悟る場面で使えます。受け身の be taken for a ride は、「知らないうちに利用されていた」という展開でよく登場します。
A: This investment doubled my money in a week!
B: Be careful—it sounds like they’re taking you for a ride.
(A:この投資、一週間でお金が倍になったんだ!)
(B:気をつけて。それ、カモにされてる気がするよ)
うまい話に乗りかけた相手へ、忠告として使う会話です。相手の魂胆を見抜いて、やんわり注意を促すときに便利な表現になります。
あわせて覚えたい関連表現
rip someone off
(〜からぼったくる、法外な値段を取る)
rip off は金銭的に高く取られることに特化した表現です。take for a ride はもっと広く「欺く・利用する」全般をカバーするので、金額の話に限らず使える点が違います。
pull the wool over someone’s eyes
(〜の目をごまかす、だます)
相手をうまく欺いて真実を隠す、というニュアンスです。take for a ride が「利用して振り回す」方向なのに対し、こちらは「隠して欺く」ことに重心があります。
take advantage of
(〜につけ込む、いいように利用する)
必ずしも「だます」ではなく、弱みや好意につけ込んで利用する広い表現です。take for a ride のほうが、欺きの色がはっきり出ます。
Note|禁酒法時代のギャング隠語という説
take someone for a ride の背後には、意外に物騒な由来があるとされています。なぜ「車に乗せる」が「だます」を通り越した意味を帯びるのか、その来歴をたどってみましょう。
この表現は、1920年代アメリカ、禁酒法(プロヒビション)の時代に広まったギャングの隠語に由来すると言われています。当時のギャングにとって take someone for a ride は、標的を車に乗せてそのまま連れ去り、二度と戻らせない——という穏やかでない意味を持っていたとされます。車に乗せられた時点で相手の運命は決まっている、というわけです。その後、意味が和らぎながら比喩として一般に広がり、「相手を思うように振り回す」「うまく欺いて利用する」という現在の使われ方へ落ち着いたと考えられています。物騒な原義が、日常的な「カモにする」へと角を丸くしていった流れは、言葉が社会とともに変化していく一例と言えます。
こうした背景を知ると、チャンドラーがギャング気取りで take us for a ride と口にする場面が、いっそう筋の通ったジョークに見えてきます。カーチェイスとギャング隠語、二つの ride がひそかに重なっているのですね。
台所や日常だけでなく、時代の裏側からも英語表現は生まれてくるのだと感じさせる一語です。
まとめ|チャンドラーのギャングごっこから学ぶ「カモにする」
take someone for a ride は、相手を車に乗せて振り回すイメージから、「だます・カモにする・いいように利用する」を表すイディオムです。金銭でも信用でも、幅広い場面で使えます。
この表現を知っておくと、ぼったくりや怪しい話にひっかかりそうな場面で、「それ、カモにされてるよ」と一言で注意を促せます。受け身の be taken for a ride もあわせて覚えておくと、「気づいたら利用されていた」という展開まで表現できます。
カーチェイス中継に夢中でギャング気取りになるチャンドラーの一言が、実は物騒な歴史を持つ表現だったんですね。会話の引き出しに加えてみてください。


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