海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
険悪になった相手と、このまま終わりにするのか、それとももう一度話してみるのか。決めかねているところに、事情を知る友人から「電話しろよ」と背中を押される。そんな場面が、誰の人生にも一度はあります。
そんなときにぴったりの「work it out」を、『フレンズ』シーズン3第15話の後半、落ち込むロスに対してチャンドラーが珍しくまっとうな助言を投げるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「work it out」の意味とニュアンス
work it out
意味:(問題を)解決する、折り合いをつける、なんとかする
work it out は、こじれた事柄を手を尽くして片づけることを表す表現です。すぐに答えが出るような場面ではなく、手間と時間をかけて、ようやく形になるような問題に対して使われます。
work という動詞が持つのは「手を動かして働きかける」感覚です。そこに out(外へ、最後まで)が加わることで、働きかけを続けて結果を外に出しきる、という筋道ができます。もつれた糸を、指先で少しずつほどいていくような手つきが、この句動詞の輪郭を作っています。
対象が代名詞のときは work it out と語順が決まり、あいだに挟む形になります。名詞であれば work out the details(詳細を詰める)のように、後ろに置くことも可能です。
守備範囲は広く、人間関係の仲直り、予定や条件のすり合わせ、計算して答えを出す場面まで届きます。とくに恋愛や友人関係の文脈では、「関係を終わらせずに、努力して立て直す」という前向きな含みを帯びます。
【ここがポイント!】
- work(働きかける)+ out(最後まで出しきる)で、粘って片づけるという筋道
- すぐ解ける問題ではなく、手間のかかる問題に向けて使われる一言
- 人間関係では「終わらせずに立て直す」という前向きな含みが乗るのがポイント
『フレンズ』S03E15のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
レイチェルとの言い合いのあと、ロスは友人たちのいるクラブへ現れます。すっかり気落ちして、もう終わりだと自分に言い聞かせようとしているロス。そんな彼に、いつもなら茶化す側に回るチャンドラーが、めずらしく正面から言葉を投げます。友人としての誠実さが顔を出す場面です。
Joey: Well, so what are you going to do?
(で、どうするんだ?)Ross: What can I do? One person wants to break up, you break up.
(どうしろって? 片方が別れたいなら、別れるしかないだろ)Chandler: Hey, no way. This is you guys. Call her and work it out.
(おい、そんなわけあるか。お前らだぞ。電話して、ちゃんと話をつけろよ)Ross: Come on. We just had this huge fight. Don’t I have to wait a while?
(勘弁してくれ。あんな大喧嘩したばかりだぞ。少し置くべきじゃないのか?)Friends Season3 Episode15(The One Where Ross and Rachel Take a Break)
シーン解説と心理考察
チャンドラーの一言が効いているのは、this is you guys という前置きがあるからです。一般論として「話し合え」と言うのではなく、お前たち二人は特別なのだと根拠を先に置いてから、work it out を差し出している。助言に説得力を持たせる順序を、彼は無意識のうちに踏んでいます。
この言葉の選び方にも意味があります。fix(直す)でも solve(解く)でもなく work it out。手間がかかることを認めたうえで、それでもやれと言っている。簡単だとは一度も言っていないところに、この助言の誠実さがにじみます。
対するロスの返しは、質問の形をした先延ばしです。待つべきではないか、と手続きの話に逃げている。本当は電話をかけたい気持ちがあるのに、動けない理由を探してしまう。前に進めない人間の足取りが、この短い問い返しに表れています。普段は軽口ばかりのチャンドラーが押し、慎重なロスがためらう。役割が入れ替わったような一往復が見どころです。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
work it out は、指先の動作で覚えるのが早い表現です。絡まったイヤホンのコードを手に取り、結び目を少しずつ緩めながら、端を外へ引き出していく。あの、時間はかかるけれど確実に進んでいく手つきが、この句動詞そのものです。
一気にほどく方法はありません。work(働きかける)を続けて、out(外へ)引き出しきる。その粘り強さが語の中に組み込まれています。
思い出すときの絵は、電話をかけろと迫るチャンドラーの手です。今すぐ、自分の手で、時間をかけてほどけ。そう促されているロスの姿と重ねておけば、この表現が「簡単ではないと分かったうえで前に進む言葉」であることまで、まとめて残ります。
例文で覚える「work it out」
仲直りから段取りの調整まで。work it out は手間のかかる問題を粘って片づける表現です。三つの場面で、その広さを見ていきましょう。
They had a rough year, but they worked it out.
(あの二人はしんどい一年を過ごしたけれど、なんとか乗り越えた)
関係を立て直した結末を語る場面です。過去形にすると、時間をかけて解決に至ったという道のりごと伝わります。
Don’t worry about the schedule — we’ll work it out.
(スケジュールのことは心配しないで。なんとかするから)
仕事の段取りを引き受ける場面です。具体策がまだなくても、必ず形にするという意思を示せます。
A: I don’t think we can fit everyone in the budget.
B: Let’s sit down tomorrow and work it out.
(A:全員分を予算に収めるのは無理だと思う)
(B:明日じっくり腰を据えて、なんとか詰めよう)
問題を前に、投げ出さずに向き合おうとする会話です。work it out を使うことで、時間をかけて調整する構えが相手に伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
sort it out
(片づける、収拾をつける)
散らかった状況を整理して収める、という含みが強い表現です。work it out が粘り強い働きかけを思わせるのに対し、こちらは仕分けて処理する感覚に寄ります。
figure it out
(答えややり方を見つけ出す)
理解や解明に重点があります。work it out が「手を動かして解決する」なら、figure it out は「頭で考えて分かる」で、動いている場所が違います。
patch things up
(仲直りする、関係を修復する)
人間関係の修復だけを指す表現です。work it out が予定や計算にも使える広さを持つのに対し、こちらは用途が絞られています。
Note|日本語なら四つに分かれる仕事を、一つの句動詞が引き受ける
work out という句動詞を日本語に置き換えようとすると、少し困ったことが起きます。ひとつの訳語では、どうしても足りないのです。
まず「解決する」があります。今回のシーンの work it out がこれにあたります。次に「算出する」。Can you work out how much we each owe?(それぞれいくら払うか計算してくれる?)のように、数字を出す場面で使われます。三つめが「運動する、鍛える」。I work out three times a week.(週に三回ジムに行く)という、あの用法です。そして四つめが「うまくいく」。It didn’t work out.(結局うまくいかなかった)のように、物事の帰結を語ります。日本語ではまったく別の動詞になる四つが、英語では同じ二語の中に同居しています。
これらを貫いているのが、out という一語です。out には「外へ出す」「最後までやりきる」という方向感覚があります。問題に働きかけて答えを外に出す、それが解決と算出。身体に働きかけて力を出しきる、それが運動。物事が働いて結果が外に現れる、それがうまくいく。対象が変わっているだけで、働きかけて結果を外に出すという骨格は、四つとも同じなのです。
日本語話者にとって難しいのは、この骨格が日本語側に存在しないことです。「解決する」「算出する」「鍛える」「うまくいく」を並べても、共通の芯は見えてきません。だから work out を四つの意味として暗記しようとして、覚えきれなくなる。逆に out の方向感覚さえ握ってしまえば、四つは同じ動作の応用として立ち上がってきます。
チャンドラーが Call her and work it out. と言ったとき、彼はロスに「働きかけて、結果を外に出せ」と言っていました。結果がどうなるかは分からない。それでも手を動かせ、と。
一つの句動詞の中に、これだけの射程が畳み込まれています。
まとめ|簡単だとは言わずに、前へ促す言葉
work it out が引き受けるのは、すぐには片づかない問題です。work(働きかける)と out(外へ出しきる)の組み合わせに、手間がかかることが最初から織り込まれている。だからこの表現は、安易な励ましにはなりません。
人間関係の仲直りにも、予定のすり合わせにも、数字の計算にも届きます。とくに関係を語る場面では、終わらせずに立て直そうとする前向きな構えが、言葉そのものに乗ります。
絡まったコードをほどく指先と、電話をかけろと迫るチャンドラーの手。その二つを重ねながら、粘って前に進むときの言葉として、表現の引き出しに加えてみてください。


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