海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
うまくいくかどうか分からないまま、それでも一度だけダメ元で聞いてみようかと、軽い気持ちで質問を口にしてしまう瞬間が、誰にでもあります。断られても、聞くだけならタダだから、と自分を納得させることもあるものです。
そんな瞬間にぴったりの「worth a shot」を、『フレンズ』シーズン5第22話の終盤、撮影現場で資金繰りの不安を主演のジョーイに打ち明けたプロデューサー格のスタンリーが、ダメ元で出資を持ちかけてあっさり断られ、ふと漏らす一言から、一緒に見ていきましょう。
「worth a shot」の意味とニュアンス
worth a shot
意味:やってみる価値がある、試す価値がある
worth a shot は「(結果は分からないが)試してみる価値はある」という意味の口語表現です。shot は本来「一発の銃弾」や「一回の試み」を指す語で、成功する保証はないものの、思い切って一度だけ挑戦してみようという前向きな姿勢を表します。
it’s worth a shot や worth a try のように、失うものがほとんどないダメ元の提案に対して使われることが多く、深刻な決断というより、軽い気持ちで背中を押すニュアンスを持っています。断られても構わない、という気楽さが根底にある表現です。
worth a try とほぼ同じ意味で言い換えられますが、shot の方がやや口語的でくだけた響きを持ちます。深刻に構えず、ものは試しと軽く肩の力を抜いて挑戦する姿勢が、この一語には込められています。
【ここがポイント!】
- 「worth a shot」の核は、ダメ元でも一度は試してみる価値があるという前向きな姿勢
- 失敗しても大きな損はない、軽い気持ちでの挑戦を後押しする表現
- It’s worth a shot. と単独で使える、会話の締めくくりにも便利な一言のひとつ
『フレンズ』S05E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
意気揚々と撮影現場に乗り込んだジョーイに対し、プロデューサー格のスタンリーが「資金の都合で一時中断してほしい」という予想外の知らせを告げます。喜びに浸る間もなく水を差された格好のジョーイは、なんとか状況を好転させようと食い下がります。「1週間、いや2週間くらいかも」という曖昧な返答のあと、スタンリーが藁にもすがる思いで主演俳優本人に持ちかける質問と、その後に続くひと言に注目です。
Joey: What, hang out? How long?
(え、待機って? どれくらい?)Stanley: I don’t know, a week, maybe two. The money will turn up. People always want to invest in movies. Hey, you’re not rich, are you?
(わからないな、1週間、いや2週間くらいかも。お金はきっと集まるよ。映画に投資したい人はいつでもいるものだから。なあ、あんた金持ちだったりしない?)Joey: No.
(いや。)Stanley: Well, worth a shot.
(まあ、やってみる価値はあったな。)Friends Season5 Episode22(The One with Joey’s Big Break)
シーン解説と心理考察
主演のはずが一転して「しばらく待機してほしい」と告げられたジョーイの動揺は、間髪入れずに繰り出される質問に表れています。「わからないな、1週間、いや2週間くらいかも」というスタンリーの曖昧な返答は、事態の深刻さをやんわりとぼかしているようにも読み取れます。
それでもスタンリーは「お金はきっと集まる、映画に投資したい人はいつでもいる」と楽観的な言葉で場を取り繕いながら、間を置かずに「あんた金持ちだったりしない?」とジョーイ本人に水を向けます。資金繰りに困っているはずの側が、よりによって主演俳優にダメ元で出資を持ちかけるという図々しさに、スタンリーの人物像がにじみます。
ジョーイの「No」という即答にも動じず、「まあ、やってみる価値はあったな」とあっさり切り替えるスタンリーの反応には、失敗を引きずらない図太さがコミカルに描かれています。ダメ元の頼み事をあっさり断られても平然としていられる、そんな軽やかさがこの一言に凝縮されています。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
worth a shot を覚えるコツは、的に向かって矢を一本だけ放つ瞬間を思い浮かべることです。当たるかどうかは分からないけれど、一本くらい放ってみても損はない、そんな軽やかな気持ちで shot という語を捉えると、この表現の前向きな軽さがつかみやすくなります。
スタンリーが放った出資の打診も、まさにこの「一本だけ試しに放ってみた矢」のようなものでした。断られることも織り込み済みで、それでも軽い調子で聞いてみる、その身軽さごと覚えておくと、ダメ元の場面でとっさに口から出てくるはずです。矢が外れても、また次の当てを探せばいい。そのくらいの軽さで構えておくのが、このフレーズを使いこなすコツです。
例文で覚える「worth a shot」
友人への相談から仕事の提案まで、worth a shot を、3つの例文で確認していきましょう。
I don’t know if they’ll say yes, but it’s worth a shot.
(承諾してくれるか分からないけど、聞いてみる価値はあるよ)
何かをダメ元でお願いしてみようと決意する場面です。but の前に不確実さを述べることで、期待しすぎていない気楽さが伝わります。
We could try a different marketing strategy. It’s worth a shot at this point.
(別のマーケティング戦略を試してみてもいいかもしれない。この段階なら試す価値はある)
行き詰まった状況を打開しようとするビジネスの場面です。at this point を添えると、「他に手立てがない中での挑戦」というニュアンスが強まります。
A: Should I ask him for a discount?
B: Sure, why not? Worth a shot.
(A:彼に値引きをお願いしてみようかな?)
(B:いいんじゃない? やってみる価値はあるよ)
友人に軽く相談するカジュアルな会話です。Worth a shot. だけを単独で使うと、気軽な後押しの相槌になります。
あわせて覚えたい関連表現
worth a try
(試してみる価値がある)
worth a shot とほぼ同じ意味を持つ言い換え表現です。try は「試み」を表す一般的な語で、shot よりもややフォーマルな場面でも使いやすい落ち着いたニュアンスがあります。
can’t hurt to try
(試してみても損はない)
「傷つかない、害はない」という can’t hurt の直訳から、失敗しても大きな痛手にはならないという安心感を強調する表現です。worth a shot よりも、リスクの低さそのものに焦点が当たります。
give it a shot
(一度やってみる、挑戦してみる)
worth a shot が「価値があるかどうか」を評価する表現なのに対し、give it a shot は「実際に挑戦する」という行動そのものを表す動詞句です。shot という語を共有しつつ、視点が評価から行動へと移ります。「試す価値がある」と判断したあと、実際に一歩を踏み出す場面で自然につながる言い方です。
Note|shot という一音に宿る、軽さとダメ元感
worth a shot という表現がこれほど気軽に使われる理由のひとつに、shot という単語そのものの音の短さがあります。母音ひとつ、子音に挟まれた一音節のこの単語は、発音するときも耳で聞くときも、パチンと弾けるような軽快な響きを持っています。
同じ「試み」を表す語でも、attempt や endeavor のような多音節の語には、どこか重々しさや慎重さがつきまといます。それに対して shot は、発音の短さそのものが「一瞬の、軽い挑戦」という意味と自然に結びついています。ビリヤードの一打、バスケットボールのシュート、写真の一枚(a shot)など、shot という語が使われる場面はどれも「一回きりの、瞬間的な行為」を指すものばかりです。この語感の一貫性が、worth a shot に「深く考えすぎず、とりあえずやってみよう」という軽やかさを与えています。
スタンリーが放った「まあ、やってみる価値はあったな」という一言も、断られた気まずさをふっと軽くする効果を持っていました。shot という一音の軽さが、ダメ元の頼み事をコミカルに着地させる役割を果たしているとも言えます。
音の短さが、意味の軽さにそのまま重なっている。worth a shot は、そんな英語らしい語感の妙を体感できる表現です。声に出して読んでみると、その軽快なリズムがなおさら実感として伝わってきます。
まとめ|ダメ元に挑む、その前向きさ
worth a shot は、結果が分からなくても一度は試してみる価値があるという、前向きな姿勢を表す表現です。shot の持つ軽やかな語感を覚えておけば、深刻になりすぎずに挑戦を後押しする感覚がそのまま伝わります。
うまくいくか分からないお願いをするときも、行き詰まった状況を打開しようとするときも、この一言があれば気軽に一歩を踏み出せます。
資金繰りの不安を打ち明けたそばから主演俳優にダメ元で出資を持ちかけたスタンリーの姿には、断られることを恐れずにひとまず聞いてみる、そんな身軽さが表れていると言えます。結果を引きずらず、さらりと次に進んでいく、その軽やかな切り替えの早さも印象的な場面です。


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