海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
過去に罪を犯した人物が、悔い改めた顔で当時を語る。その言葉が本心なのか、それとも自分を守るための言い直しなのか。判断がつかないまま聞くことになる場面が、犯罪ドラマには時々あります。
そんな場面で使われるのが「back in the day」という言い回しです。『メンタリスト』シーズン3第11話の中盤、教会に通う元受刑者が、10年前の事件について問われて答えるシーンに登場します。自分の過去をひとまとめにしてしまうこの表現を、一緒に見ていきましょう。
「back in the day」の意味とニュアンス
back in the day
意味:昔は、あのころは
過去のある時期を、現在と対比して「あのころ」と指すくだけた言い方です。
the day と単数になっていますが、特定の一日だけを指すわけではありません。文脈上の過去の時期をまとめて示します。期間の長さは数年から十数年に固定されず、話題によって変わります。
話し手自身の昔を語る場面でよく使われますが、辞書義は本人が生きた時代だけに限定していません。歴史上の時期をくだけて指す用例もあり、誰の過去を指しているかは主語と文脈から判断します。
くだけた口語で、雑談や振り返りの場面によく登場します。書き言葉や公式な文章では、in those days や at the time が選ばれることが多くなります。
【ここがポイント!】
- the day は一日とは限らず、文脈上の過去の時期を指す
- 話し手自身の昔にも、歴史上の過去にも使え、指示範囲は文脈で決まる
- 話し言葉では気軽に、書面では in those days に譲る。この住み分けを押さえておくと迷わない
『メンタリスト』S03E11のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
凶器の銃が10年前の殺人事件と同じものだと判明し、リズボンたちは当時の実行犯ジョー・レイエスを訪ねます。場所は彼がいま通っている教会で、礼拝が終わった直後の空間です。信仰を得て過去と縁を切ったと語る彼に、聴取が終わりかけたところで最後の質問が投げられます。返ってきた答えの中に、この表現が現れます。
Rigsby: Address?
(住所は?)Reyes: Don’t know. Like I said, I didn’t look for her when I got out. After finding my faith, I realize I had to turn my back on all my evil ways and all the people that could possibly lead me back there.
(知りません。言ったように、出所後は彼女を捜しませんでした。信仰を得てから、昔の悪い生き方も、そこへ引き戻しかねない人間関係も、全部断ち切らなきゃいけないと気づいたんです)Van Pelt: Thanks for your time. Why did you kill that man back in 2001? If you don’t mind my asking.
(お時間ありがとうございました。2001年に、なぜあの男を殺したの? 差し支えなければ)Reyes: I don’t know, ma’am. It was foolishness. Look, I-I did a lot of bad things back in the day, and that was just the one they caught me for.
(わかりません。愚かだったんです。昔は悪いことをたくさんやりました。捕まったのが、たまたまあの一件だっただけです)The Mentalist Season3 Episode11(Bloodsport)
シーン解説と心理考察
礼拝の直後という場所の選び方が、この場面の空気を決めています。過去と縁を切ったという言葉が、いちばん説得力を持つ場所で語られている。聞く側もそれを分かったうえで座っています。
聴取が終わりかけたところで投げられた質問に対し、レイエスは「愚かだった」と認めます。ただ、そのあとに続いたのが、悪いことをたくさんやった、捕まったのはたまたまその一件だった、という言い方でした。反省の言葉と、罪の輪郭をぼかす言い方が、同じ発話の中に並んでいます。
ここで効いているのが back in the day という表現です。個々の出来事ではなく時期そのものを指すため、都合の悪い一件も「あのころのこと」の中に溶けていきます。悔い改めを語りながら、同時に自分を過去から切り離す。その二重の働きがこの一言に重なっています。
礼を述べていったん話を閉じてから、あらためて核心の質問を差し込む運びも見どころです。相手の身構えが緩んだところを狙う間の取り方として響きます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
写真アルバムを一冊、棚から引き抜く動作を思い浮かべてください。中の一枚を指さすのではなく、背表紙をつかんで一冊まるごと持ち上げる。back in the day が指しているのは、その一冊分の時間です。
the day が単数なのに一日を指していない理由も、この絵で説明がつきます。アルバム一冊にまとまっている数年間が、話し手の中では切れ目のないひとつの塊になっている。だから複数形にはならないわけです。
教会のシーンでは、レイエスがまさにこのアルバムを一冊まるごと差し出しました。中の一枚を見せずに済ませるための持ち出し方だったと考えると、単数形の効き目まで一緒に覚えられます。
例文で覚える「back in the day」
文頭にも文末にも置ける身軽さが、この表現の使いやすさです。3つの場面で見てみましょう。
Back in the day, we had to rewind the tape before returning it.
(昔はテープを巻き戻してから返さなきゃいけなかったんだ)
年下の同僚や家族に昔の習慣を説明する場面です。文頭に置いてカンマで区切る、いちばん基本の形になります。
He was one of the best in the business back in the day.
(彼は昔、この業界で指折りの一人だった)
引退した人物を話題に出すときの言い方です。文末に添えると、いまの評価とは切り離して当時だけを語っているという線引きが伝わります。
A: You were in a band?
B: Yeah, back in the day. We played every weekend.
(A:バンドやってたの?)
(B:ああ、昔ね。毎週末やってたよ)
雑談で過去の趣味の話になったところです。単独で相づちのように返せるので、詳しく語る前のワンクッションとしても働きます。
あわせて覚えたい関連表現
in those days
(当時は、その時代には)
話し手が体験していない歴史上の時代にも使える言い方です。今回のフレーズが自分の記憶にある時期に限られるのに対して、こちらは射程がずっと広くなります。
way back when
(ずっと昔に)
back in the day よりさらにくだけた言い方で、時期をぼかす度合いが強くなります。文末に添えて「まあ、かなり前の話だけど」と軽く流したいときに向きます。
at the time
(その当時は、当時としては)
特定の出来事があった時点を指す言い方です。期間ではなく一点を指すため、今回のフレーズのように数年をひとまとめにする働きはありません。
Note|どの世代が「あのころ」を語るのか
同じ「昔」を指す言い方がいくつもあるなかで、back in the day はどんな人が使う表現なのでしょうか。
辞書では、この表現は「過去のある時期、特に現在と比べて振り返る時期」を指すくだけた言い方として説明されています。特定の年代や、音楽・スポーツを経由した普及経路を語義から確定することはできません。
押さえておきたいのは年代より用域です。back in the day は会話的で、懐かしさや現在との対比を添えやすい表現です。より中立に当時を指すなら at the time、過去の時期を説明するなら in those days などを選べます。地域ごとの頻度を断定せず、文体の違いとして捉えると安全です。
劇中では、レイエス自身が関わった過去をまとめて振り返るために使われています。ただし、これは場面上の指示対象であって、表現そのものが「当事者にしか使えない」という意味ではありません。
どの言葉で昔を呼ぶかに、その人の立ち位置が出るのかもしれません。
まとめ|レイエスが差し出した「あのころ」
back in the day は、過去のある時期を「あのころ」とくだけて振り返る表現です。誰の過去か、どのくらい前かは、語句だけでなく前後の文脈から決まります。
この一言を持っていると、昔の話を始めるときの入り口に困らなくなります。細かい年号を出さなくても、聞き手は「話し手が当事者だった時期の話だ」と受け取ってくれる。雑談で自分の経験を語るときにも、誰かの過去を紹介するときにも同じ形で使えます。
教会のシーンが見せたのは、この表現が持つもうひとつの顔でした。まとめて語れるということは、まとめて隠せるということでもある。使い勝手のよさと、その裏側までセットで覚えておきたい四語です。


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