海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
会議で出した案が、その場では否定されないまま静かに流れていく。あるいは、用意した言い訳が相手にまるで届かない。こちらの差し出したものが、相手のところまで届かずに終わってしまう場面があります。
英語ではその状態を「won’t fly」と言います。『メンタリスト』シーズン3第11話の終盤、ジェーンが仕掛けた罠が動き、病院で相手と言葉を交わす場面に登場します。飛ぶか落ちるかで通用するかどうかを表すこの言い方を、一緒に見ていきましょう。
「won’t fly」の意味とニュアンス
won’t fly
意味:通用しない、受け入れられない
直訳は「飛ばないだろう」です。飛行機や鳥の話ではなく、提案・言い訳・証拠・企画といったものが、相手や制度の審査を通らないことを表します。
辞書では、案や説明などが成功する、うまく機能する、受け入れられるという意味の fly が示されています。その否定形が won’t fly です。相手に受け入れられない場合だけでなく、計画がうまく機能しない、説明が通用しないといった評価にも使えます。
後ろに with ~ を付けると「誰に通用しないか」を、in ~ を付けると「どこで通用しないか」を示せます。That won’t fly with my boss、This won’t fly in court のように、通らない場所を名指しできるのがこの形の便利なところです。
過去形にすると didn’t fly となり、実際に通らなかったという報告になります。主語には案・言い訳・説明・証拠など、人に向けて差し出すものが入ります。
【ここがポイント!】
- 核は「飛ばずに落ちる」、差し出したものが相手まで届かないという絵
- 成功しない、機能しない、受け入れられない、という評価に使える
- with ~ で相手を、in ~ で場所を足せる。どこで落ちるかまで名指しできるのが強み
『メンタリスト』S03E11のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
被害者が残したノートには、読み解けない記号が並んでいました。ジェーンはその記号を手がかりに罠を仕掛け、終盤、狙いどおりに現れた相手を病院で押さえます。追い詰められたはずの相手は、しかし少しも動じません。あんな記号は法廷で通用しない、と言い放つのです。その一言を、ジェーンは同じ動詞で受け返します。
Jane: Mr. Mitchell left the I.C.U. yesterday, but I’ll be glad to pass on your best wishes.
(ミッチェルさんは昨日 ICU を出ましたよ。お見舞いの言葉はお伝えしておきます)Lima: Whatever. You got nothing. That notebook shorthand crap won’t fly in court.
(どうでもいい。何も持ってないだろ。あのノートの速記だかなんだかは、法廷じゃ通らない)Jane: True enough. I happened to write that notebook shorthand crap myself. Charlotte Mitchell was murdered because she discovered a secret. I simply had to convince the killer that the secret didn’t die with her. Et voilà.
(確かに。あの速記だかなんだか、書いたのは私ですから。シャーロット・ミッチェルは、ある秘密を知ったために殺されました。私がしたのは、その秘密が彼女とともに消えたわけではないと犯人に信じ込ませることだけです。ほら、このとおり)Lisbon: And this should fly nicely in court.
(そしてこちらは、法廷でちゃんと通るはずよ)The Mentalist Season3 Episode11(Bloodsport)
シーン解説と心理考察
追い詰められた側が最初に持ち出したのが、証拠能力の話だったところに、この場面の緊張が表れています。行動そのものを否定するのではなく、こちらの手札が法廷まで届かないと指摘する。争点を中身から手続きへずらす言い方です。
面白いのは、その指摘をジェーンがあっさり認めてしまうところです。確かにそのとおりだと引き受けたうえで、あの記号を書いたのは自分だと明かします。相手が拠り所にしていた前提そのものが、最初から存在していなかったことになります。
そして最後に、同じ動詞が肯定形で戻ってきます。won’t fly と言い放った相手に、should fly と返す。一語だけを裏返して勝負をつける形になっており、この一往復に決着がまるごと収まっていると言えます。
締めの一言をリズボンが担っているのも、この場面らしい配置です。規則の外側から仕掛けたジェーンの手を、制度の側が受け取り直す流れとして響きます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
紙飛行機を折って、手を離す場面を思い浮かべてください。折り方が甘ければ、投げた瞬間に鼻先から落ちます。相手のところまで届かず、足元に転がって終わりです。
案も言い訳も証拠も、この紙飛行機と同じ扱いになります。won’t fly は「落ちる」と言っているだけで、紙の質そのものを問題にしているわけではありません。届くかどうかだけを見ているという性格が、この絵で押さえられます。
病院のシーンでは、その紙飛行機が二機投げられました。一機は落ち、もう一機はきれいに飛んでいく。won’t fly と should fly を並べて覚えておくと、否定形だけでなく肯定形の使い方も同時に手に入ります。
例文で覚える「won’t fly」
主語には、相手に差し出すものを置きます。3つの場面で見てみましょう。
That excuse won’t fly with my boss.
(その言い訳はうちの上司には通用しないよ)
同僚の言い分を聞いて率直に忠告する場面です。with ~ で相手を名指しすると、その言い訳がどこで落ちるのかまで一緒に伝わります。
The pricing model won’t fly in the European market.
(この価格設定はヨーロッパ市場では通用しません)
戦略会議で懸念を述べるときの形です。in ~ で場所を示すと、案そのものではなく市場との相性の話になり、提案者を責める響きが消えます。
A: Can we just push the deadline again?
B: That won’t fly. We’ve already moved it twice.
(A:締め切りをまた延ばせない?)
(B:それは通らないよ。もう2回動かしてる)
チーム内でスケジュールを相談しているところです。提案への即答として使うと、理由を添える前に結論だけを短く返せます。
あわせて覚えたい関連表現
won’t hold water
(筋が通らない、根拠が薄い)
主張や説明が検証に耐えない、筋が通らないことを指します。won’t fly と意味が重なる場合もありますが、hold water は特に論理や証拠の弱さに焦点があります。
won’t wash
(通用しない、信用されない)
特に言い訳や説明が受け入れられない、信用されない場面で使われます。地域差や頻度を一律に断定せず、対象となる名詞と文脈で選び分けます。
be a non-starter
(検討にすら値しない、はじめから見込みがない)
審査に入る前の段階で退けられることを表します。今回のフレーズが一応検討されたうえで通らないことを言えるのに対して、こちらは門前払いにあたります。
Note|三つの「通用しない」を比べる
英語には「これは通用しない」を表す言い方が複数あります。似ていますが、評価している対象に違いがあります。
won’t hold water は、議論・説明・理論などが検証に耐えないことを表します。容器が水を漏らすイメージは意味を覚える助けになりますが、ここでは成立時期や直接の語源まで断定しません。
won’t wash は、言い訳や説明が通用しない、信用されないことを表します。比喩的な won’t wash は19世紀の用例が確認されるため、「産業革命以前の洗濯から直接生まれた」と単純化できません。
won’t fly は、案・計画・説明が成功しない、機能しない、または受け入れられないことを表します。航空文化から発達したと断定できる資料や、三表現が時代順に入れ替わったと示す資料はここでは確認できません。
語源物語ではなく、何を評価しているかで三つを分けると、実際の会話で選びやすくなります。
まとめ|一語を裏返して決着をつける
won’t fly は、案・説明・言い訳などが成功しない、機能しない、または受け入れられないことを示す表現です。評価の範囲を「相手が受け入れるか」だけに限定しないことがポイントです。
この形を持っていると、案や言い訳を評価するときに、否定と説明を分けて伝えられるようになります。相手を責めずに「ここでは通らない」とだけ言える。with ~ や in ~ を足せば、通らない相手や場所まで一緒に示せます。
そして病院のシーンが見せたとおり、この動詞は肯定形でも戻ってきます。落ちるか飛ぶか。同じ一語で否定と肯定を往復できる表現として、会話のレパートリーに加えてみてください。


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