海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
積み上げてきた作業が、たったひとつの想定外で白紙に戻ってしまう。そんな徒労を経験したことはありませんか。
そんなときに口をついて出る「back to square one」を、『メンタリスト』シーズン1第10話の中盤、有力な容疑者を失ったリズボンが次の一手を決める場面から、一緒に見ていきましょう。
「back to square one」の意味とニュアンス
back to square one
意味:振り出しに戻って、また最初からやり直しで
square は盤面のマス目、square one はその一番目のマス、つまりスタート地点を指します。進めていた駒が最初のマスに戻される。それまでの手数が帳消しになり、出発点から再開するしかない状態を表す表現です。
使われるのは、何もしていなかった場合ではなく、一度は進んだうえで戻された場合です。ここが start from scratch との違いになります。積み上げた過程がある分、この言い方には徒労の響きが伴います。
形としては be back to square one(振り出しに戻っている)、go back to square one(振り出しに戻る)が基本です。right back to square one と right を挟めば「完全に振り出しだ」という強調になり、劇中のように Back to square one. とだけ言い切れば、状況を短く判定する一言になります。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「駒が一番目のマスに置き直される」という盤上の絵
- 一度は進んだうえで戻された、という経緯を含むのが特徴
- be / go と組み合わせ、right を挟んで強められるのが使いこなしのコツ
『メンタリスト』S01E10のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
拠点への突入、容疑者の確保、そして自供。順調に見えた捜査は、当の男が使った毒の種類を答えられなかったことで一気に崩れます。動物愛護団体の線は行き止まりだと結論づけたリズボンが、そのまま続けて口にするのがこの一言です。
Lisbon: Back to square one.
(振り出しに戻ったわね)Jane: The grieving widow?
(悲しみに暮れる未亡人かな?)Lisbon: That’s always a good place to start.
(そこから始めるのは、たいてい悪くない手ね)Jane: Yes, I think so.
(ああ、僕もそう思う)The Mentalist Season1 Episode10 (Red Brick and Ivy)
シーン解説と心理考察
この短いやり取りには、二つの機能が同時に働いています。ひとつは「これまでの進展は白紙になった」という現状の確認、もうひとつは「では次にどこから始めるか」という合図です。リズボンが振り出しを口にした直後、ジェーンはもう次の対象を挙げています。
注目したいのは、落胆を口にする時間がほとんどないことです。四つの発言のうち、後ろの三つはすべて次の方針に向かっています。振り出しに戻ったという事実を言葉にして共有し、そのまま次のマスへ駒を進める。チームとしての切り替えの速さが、この短さに表れています。
That’s always a good place to start. というリズボンの返しも見どころです。ジェーンの提案を、思いつきとしてではなく捜査の定石として受け止めています。型破りな相棒の勘を、手続きの言葉に翻訳して承認する。二人の役割分担がこの一文に重なっています。back to square one は徒労を表す言葉ですが、ここでは立ち止まる合図ではなく、再スタートの号砲として響きます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
すごろくの盤を思い浮かべてみてください。何度もサイコロを振り、駒はゴールの近くまで来ていました。ところが止まったマスに書かれていたのは「振り出しに戻る」。駒はつまみ上げられ、盤のはじ、スタートのマスに置き直されます。積み上げた手数はそのまま消え、盤面は最初の姿に戻ります。
劇中のCBIも、突入と逮捕という何手も進めた駒を、たった一つの質問で最初のマスに戻されました。盤そのものは残っていて、ゲームは続いている。だからこそ次の手が要ります。「駒がスタートに置き直される」という映像で覚えておくと、計画が白紙に戻るあらゆる場面で引き出せます。
例文で覚える「back to square one」
このフレーズは、進めていた計画が白紙に戻る場面で活躍します。三つの例文で、その使い方を見ていきましょう。
The client rejected the proposal, so we’re back to square one.
(クライアントに提案を却下されたから、振り出しに戻りだ)
企画が通らなかったことをチームに伝える場面です。so we’re back to square one という締め方が最も自然で、報告の結びとしてそのまま使えます。
If this doesn’t work, we’ll be right back to square one.
(これがうまくいかなければ、完全に振り出しに戻ることになる)
最後の手段を試す前に、リスクを共有する場面です。right を挟むことで、後がないという緊張感を加えられます。
A: How did the apartment hunt go?
B: The landlord changed his mind. Back to square one.
(A:部屋探しはどうだった?)
(B:大家さんが気を変えてね。振り出しに戻りだよ。)
進めていた話が急に流れた場面です。劇中と同じく主語を省いて言い切ると、肩を落とす感じが軽やかに伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
back to the drawing board
(設計からやり直し、練り直しだ)
作り直す作業台に戻る、という絵の表現です。back to square one が進捗の消失を指すのに対し、こちらは組み立て直しに着手するという前向きな動きを含みます。
start from scratch
(ゼロから始める)
何も土台がない状態から作り上げることを指します。back to square one には一度進んだ経緯が含まれますが、こちらにはその経緯がありません。
square one
(出発点、振り出し)
名詞句として単独でも使えます。We’re not even at square one.(出発点にすら立っていない)のように応用できるため、分解して覚えておくと表現の幅が広がります。
Note|盤上のマス目か、ラジオの実況か ― 二つの由来説
back to square one の由来には、よく知られた説が二つあります。どちらも「進んだものが最初の区画に戻る」という同じ絵を共有しているのが、この表現のおもしろいところです。
ひとつは、すごろくやボードゲームの盤面に由来するという説です。スタート地点のマスに駒が戻される動きが、そのまま比喩になったという見方で、蛇と梯子のゲームなど具体的な遊戯が引き合いに出されることもあります。もうひとつは、1920年代から30年代のイギリスのラジオ中継に由来するという説です。当時、サッカーの試合を音声だけで伝えるために、競技場を格子状の区画に分けた図が新聞に掲載され、聴取者はその番号を頼りにボールの位置を思い描いていたとされます。ボールが自陣に戻ることを square one と呼んだ、というのがこの説の骨子です。物語としては後者のほうが鮮やかで、紹介される機会も多いのですが、当時の中継記録との対応が乏しいとして疑問視する見方もあります。現在では、盤上遊戯に由来するという説のほうが穏当だと考える立場が有力です。
どちらの説を取るにせよ、square が「区画」であり、one が「最初」であるという構造は変わりません。劇中のCBIが戻された場所も、まさにその一番目の区画でした。
由来をめぐる二つの説自体が、振り出しに戻り続けているようにも見えます。
まとめ|振り出しに戻ったと口に出すこと
back to square one は、盤の一番目のマスに駒を戻された状態を描いた表現です。積み上げた手数が消える徒労の響きと、盤そのものはまだ残っているという事実が、同じ言葉の中に同居しています。
この一言が使えるようになると、計画の白紙化を短く共有できるようになります。長い説明よりも、振り出しだと一度言い切ってしまったほうが、次の手を考えやすくなることもあります。
やり直しを軽やかに宣言する言葉として、会話のレパートリーに加えてみてください。


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