海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
「分かりません」と答えた相手に、それでも推測でいいから聞かせてほしい。会話をもう一歩だけ前に進めたい場面があります。
そんなときに使える「give it a shot」を、『メンタリスト』シーズン1第10話の終盤、ジェーンとリズボンが研究所のラボで、事件の関係者に聞き込みをする場面から、一緒に見ていきましょう。
「give it a shot」の意味とニュアンス
give it a shot
意味:試しにやってみる、ひとつやってみる
shot は「一発の射撃」、そこから転じて「一回の試み」を指します。的に向かって一発撃ってみる、という絵がこの表現の中心にあります。
持ち味は、その気軽さにあります。当たるかどうかは分からないが、とりあえず一回やってみよう。成功を保証しない代わりに、外れても構わないという安心感を相手に残します。だからこそ、ためらっている人の背中を押す一言としてよく使われます。
I’ll give it a shot. と自分について言えば「やってみます」という引き受けの表明になり、Give it a shot. と命令形で相手に向ければ「やってみなよ」という促しになります。give the new system a shot のように、it の位置に別の目的語を入れることもできます。くだけた口語なので、改まった提案書などでは try や attempt に置き換えるほうが収まります。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「当たらなくてもいい一発を撃ってみる」という射撃の絵
- 成功を求めない気軽さが、相手の心理的なハードルを下げてくれる一言
- I’ll give it a shot. で引き受け、Give it a shot. で促す。主語の向きで役割が変わるのがコツ
『メンタリスト』S01E10のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
事件の関係者がもう一人、遺体で見つかります。その人物が被害者と関係を持っていたことが分かり、ジェーンとリズボンは被害者の元妻であるソフィーのもとを訪ねます。彼女はかつてジェーンを診た精神科医でもありました。リズボンの質問に、ソフィーは最短の言葉で答えて話を閉じようとします。
Lisbon: We were wondering, did you know Kerry and Alex were having an affair?
(お聞きしたいのですが、ケリーとアレックスが関係を持っていたことをご存じでしたか?)Sophie: Well, I knew she was having an affair with a married man because she told me. I didn’t know it was Alex. I didn’t put it together.
(ええ、既婚の男性と関係を持っていることは知っていました。本人から聞いたので。でも、相手がアレックスだとは知りませんでした。結びつけていなかったんです)Lisbon: She had to have known you were Alex’s ex. Why would she talk to you, of all people?
(彼女は、あなたがアレックスの元妻だと知っていたはずです。よりによって、なぜあなたに打ち明けたのでしょう?)Sophie: I don’t know.
(分かりません)Jane: You’re a psychiatrist. Give it a shot.
(きみは精神科医だろう。ひとつ推理してみてよ)The Mentalist Season1 Episode10 (Red Brick and Ivy)
シーン解説と心理考察
I don’t know. という返事は、会話を終わらせるための言葉です。そこにジェーンが差し込むのが give it a shot でした。相手の「分かりません」をそのまま受け取らず、専門家なんだから当ててみてよ、と促しています。
この一言には二つの働きが重なっています。ひとつは、専門家としての見立てを引き出すこと。もうひとつは、相手が本当に何も知らないのか、それとも言わないことを選んでいるのかを見極めることです。推測でいいと言われたとき、人は答え方に本音を混ぜてしまいます。ジェーンが見ているのは、答えの中身よりもその混ざり方だと言えます。
構図としても印象的な場面です。かつて自分を診ていた相手に対して、今度は自分が読む側に回っている。しかも使っているのは、命じるのではなく気軽さで誘い出す言い方です。相手の警戒を解きながら、逃げ道だけを静かに塞いでいく手つきが表れています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
祭りの射的の屋台に立っている場面を思い浮かべてみてください。景品まではそれなりに距離があり、当てる自信はありません。それでも店主が「一発撃ってごらん」と銃を差し出してきます。give it a shot の shot は、この一発のことです。
大事なのは、誰も命中を保証していないという点にあります。外れても責められない。その気軽さがこの表現の持ち味です。劇中のジェーンも、「分からない」と答えたソフィーに、外してもいいから一発撃ってみてほしいと促していました。「当たらなくてもいい一発」という絵で覚えておくと、人を促す場面でも、自分が引き受ける場面でも同じように引き出せます。
例文で覚える「give it a shot」
このフレーズは、挑戦を促す場面と引き受ける場面の両方で使えます。三つの例文で、その使い分けを見ていきましょう。
I’ve never made bread before, but I’ll give it a shot.
(パンを焼いたことはないけど、試しにやってみるよ)
初めてのことに取りかかろうとする場面です。I’ll give it a shot. は「やってみます」を表す最も自然な口語で、そのまま覚えておくと出番が多くなります。
Let’s give the new workflow a shot for a month and see how it goes.
(新しい進め方を1か月試してみて、様子を見よう)
試験的な導入を提案する場面です。it の位置に別の目的語を入れられるため、業務の提案にも応用できます。
A: I don’t think I can fix this myself.
B: Give it a shot. I’ll help if you get stuck.
(A:これ、自分じゃ直せそうにないな。)
(B:やってみなよ。行き詰まったら手伝うから。)
自信のない相手に任せる場面です。突き放さずに促せるうえ、後半の一言が失敗しても大丈夫だという保証になっています。
あわせて覚えたい関連表現
give it a try
(やってみる)
意味はほぼ同じですが、こちらはやや中立的で、改まった場面にもなじみます。give it a shot は射撃の比喩を含むぶん、口語的で勢いが出ます。
take a stab at
(試しに手をつけてみる)
stab は「ひと突き」で、不慣れなことに雑にでも取りかかる感じが出ます。出来栄えを期待しない前置きとして使われる点が、give it a shot との違いです。
have a go at
(やってみる)
イギリス英語で好まれる言い方です。同じ場面で置き換えられますが、have a go at someone とすると「人を非難する」の意味になるため、目的語には注意が必要です。
Note|shot か go か ― 「やってみる」の海の向こう側
「試してみる」を表す言い方は、大西洋を挟んで少しずつ表情が変わります。
アメリカ英語で選ばれやすいのが give it a shot で、イギリス英語では give it a go や have a go のほうが日常的だとされます。さらにイギリス口語には give it a bash(一発かましてみる)、give it a whirl(ひと回ししてみる)といった言い方もあります。並べてみると、shot は撃つ、go は行く、bash は打つ、whirl は回す。どれも身体の動き一回分を「試み一回分」に見立てているという点で共通しており、発想そのものは海を越えて同じだと分かります。違うのは、どの動きを選んだかという語彙の好みだけです。なお give it a try は英米どちらでも自然に通じるため、相手の出身が分からない場面では無難な選択肢になります。ビジネスメールなど、くだけすぎたくない場面でも try のほうが収まりがよくなります。
劇中のジェーンが使ったのは、アメリカのドラマらしく shot でした。同じ場面をイギリスのドラマが描いていたら、Have a go. という一言になっていたかもしれません。
同じ気軽さを、それぞれの言葉が別の動きで表しています。
まとめ|外してもいい一発を差し出す
give it a shot は、的に向かって一発だけ撃ってみる姿を描いた表現です。当たる保証はないけれど、撃ってみること自体は誰にも責められない。その気軽さが、この言い方の核にあります。
使えるようになると、自分が新しいことを引き受けるときにも、誰かの背中を押すときにも、同じ一言で対応できるようになります。完璧を求めない構えが伝わるぶん、相手も動きやすくなります。
やってみようかと迷っている誰かの顔を思い浮かべながら、表現の引き出しに加えてみてください。


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