海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
大切な人を守ろうとして距離を取ったのに、かえって相手を傷つけてしまう。そんなすれ違いが描かれる瞬間が、ドラマには時々あります。
そんな場面で使われた「be in harm’s way」を、『メンタリスト』シーズン3第1話の最終盤、チームから離れようとするジェーンに、リズボンが正面から反論するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「be in harm’s way」の意味とニュアンス
be in harm’s way
意味:危険にさらされている、危険な場所に身を置いている
harm(危害)を、こちらへ向かって進んでくるものとして捉え、その進路上に立っている状態を表す言い回しです。way は「道・進路」を指し、危害が通る道の上にいるのか、外れているのかで危険の度合いを言い表します。
そのため、反対の意味は out of harm’s way(危険の届かない場所に)になります。keep someone out of harm’s way(人を危険から遠ざける)のような形で、避難や安全対策の文脈でよく使われます。
事故的に巻き込まれる場合にも、職務として自ら身を置く場合にも使えます。後者では put oneself in harm’s way のように put を伴い、覚悟を持って進路上に立つという響きが出ます。消防、警察、軍務、報道といった危険を伴う仕事について語るときの、定番の言い回しになっています。
【ここがポイント!】
- 危害が通る「道」の上に立っている、という位置の比喩が核にある
- out of harm’s way と対で覚えると、危険との距離を自在に言い分けられる
- put を伴うと「自ら進んで身を置く」覚悟の響きが出るのがポイント
『メンタリスト』S03E01のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
事件が片づいた後、ジェーンとリズボンが二人で向き合う最終盤の場面です。ジェーンは、自分に近づいた人が次々と危険に巻き込まれてきたと考え、チームから距離を取ろうとしています。リズボンはそれを優しさとして受け取らず、番号を振って理路整然と反論を組み立てていきます。
Jane: Anybody that gets close to me– bad things happen to them.
(私に近づいた人には、悪いことが起きる)Lisbon: “A,” that’s not true, and “B,” even if it were, I’m a cop. It’s our job to be in harm’s way.
(第一に、それは事実じゃない。第二に、仮にそうだとしても私は警官よ。危険な場所に身を置くのが仕事なの)Jane: You’re not listening to me.
(話を聞いていない)Lisbon: We’re family. What you’re doing is a kind of betrayal.
(私たちは家族でしょう。今していることは、一種の裏切りよ)The Mentalist Season3 Episode1
シーン解説と心理考察
リズボンが “A,” … and “B,” と番号を振って反論するところに、この人物の性格がそのまま出ています。感情で押し返すのではなく、まず事実認識を否定し、次に仮にそうだとしてもという譲歩を置いてから本題に入る。警官としての訓練が、私的な会話にまで滲み出ている話し方だと言えます。
It’s our job to be in harm’s way. という一文が、この場面の芯にあたります。危険を引き受けるのは自分が選んだ職業の中身であって、ジェーンが肩代わりして守るべきものではない。守られる側に置かれること自体を、リズボンはここで拒んでいます。
続く betrayal、surrender、defeat という言葉の並べ方も見どころです。三つとも、ジェーンが最も嫌う一点へ向かって収束していきます。相手の善意を頭から否定するのではなく、その善意が結果として何を招くかを突きつける組み立てになっており、最後に give me a hug と落として場を収める緩急も含めて、二人の関係の距離感がよく表れた場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
harm を、こちらへ向かって走ってくる大きな車だと想像してみてください。その車が通る道の真ん中に立っているのが in harm’s way、歩道に避けているのが out of harm’s way です。way が「道」だと分かれば、二つの形が一対で頭に入ります。
このシーンでリズボンが言っているのは、警官とはその道の上に立つ仕事だ、ということでした。誰かに引っ張って歩道へ移されるいわれはない、という拒否まで含んだ一言です。
道の上にいるのか外にいるのか、自分から立ったのか押し出されたのか。その違いで put、keep、stay、move といった動詞が変わっていくと押さえておくと、使い分けまで一度に整理できます。
例文で覚える「be in harm’s way」
危険との距離を言い表す表現です。三つの場面で、動詞との組み合わせに注目しながら見てみましょう。
Firefighters put themselves in harm’s way every single day.
(消防士は毎日、自ら危険な場所に身を置いている)
危険を伴う仕事について語る場面です。put oneself を使うと、巻き込まれたのではなく自分から進んで、という含みが加わります。
Our first priority is to keep staff out of harm’s way.
(最優先は、社員を危険にさらさないことです)
安全対策の方針を説明する、改まった場面です。否定形の out of harm’s way も同じくらいよく使われます。
A: Why did you go back inside?
B: Someone had to. I wasn’t going to leave her in harm’s way.
(A:なぜ中に戻ったの?)
(B:誰かが行くしかなかった。彼女を危険なままにしておけなかった)
危険を冒した理由を問われて答える場面です。leave someone in harm’s way で「危険な状態に放置する」という意味になります。
あわせて覚えたい関連表現
be at risk
(危険にさらされている)
医療や統計の文脈でも使える中立的な表現です。可能性の高さを述べる語で、be in harm’s way が持つ「進路上にいる」という空間の絵はありません。
be in danger
(危険な状態にある)
もっとも一般的で、場面を選ばずに使えます。be in harm’s way には危険を引き受けるという響きを込めやすく、職務を語る場面で選ばれます。
put oneself on the line
(自分の身や立場を賭ける)
失うものが命とは限らず、評判や地位を賭ける場面でも使います。be in harm’s way は身体的な危険が中心にある点が異なります。
Note|危険との位置関係を表すニュースの言葉
be in harm’s way は、日常会話よりもニュースや映像作品で耳にすることの多い表現です。どんな場面で選ばれてきたのかをたどると、この言い回しが担っている役割が見えてきます。
もっとも定着しているのは災害報道です。避難勧告や避難命令を伝える記事では、move residents out of harm’s way(住民を危険から遠ざける)という形が繰り返し使われます。誰が、どの方向へ、なぜ動かされるのかを一息で伝えられるため、限られた字数の見出しや第一文に収まりやすいという事情があります。同じ理由で、軍務や救援活動を報じる記事でも定番になっています。
映像作品では、危険を承知で職務に向かう人物の心情を示す台詞として置かれることがあります。本エピソードでも、警官としての職業観を語る一文として使われています。1965年には、同じ表現を題名にした海軍を舞台とする映画『In Harm’s Way』も公開されました。ここでは表現の由来とは結びつけず、危険を引き受ける題材との相性が作品名にも表れている、と整理できます。
つまり be in harm’s way は、危険を客観的に伝える報道の言葉であると同時に、危険を引き受ける覚悟を示す言葉でもあります。劇中のリズボンが使ったのは後者で、危険な道の上に立つことを自分の仕事として引き受ける宣言になっています。
同じ一文が、遠くから状況を伝えることも、自分の立ち位置を示すこともできます。
まとめ|危険との距離を、道の上と外で言い分ける
be in harm’s way は、危険の程度ではなく位置を言う表現です。危害が通る道の上にいるのか、外に避けているのか。その一点で状況を描き分けます。
この一言が入ると、危険についての話し方が具体的になります。dangerous では状態の説明で止まりますが、道の上という絵があれば、そこへ向かうのか、そこから遠ざけるのかまで一緒に伝わります。put、keep、leave といった動詞が自然に付いてくるのも、位置の比喩だからです。
ニュースで out of harm’s way という形に出会ったときも、危険との位置関係を示す同じ道の比喩だと読み取れます。


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