海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
日付が変わってもまだ資料に向かっている。そんな誰かの背中を見て、労いなのか軽い皮肉なのか、判断に迷う一言をかけたくなることがあります。
そんな場面で使われる「burn the midnight oil」を、『メンタリスト』シーズン5第12話の終盤、深夜のオフィスで資料を読み込むリズボンにジェーンが声をかけるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「burn the midnight oil」の意味とニュアンス
burn the midnight oil
意味:夜遅くまで働く、夜なべする
電灯がなかった時代、夜に作業を続けるには油ランプの火をともし続けるしかありませんでした。その油を燃やし続ける様子が、そのまま「夜遅くまで働く」という意味の比喩になった表現です。
試験前の追い込みから仕事の締め切り、家庭での作業まで、夜更かしをしてでも何かをやり遂げようとする場面全般で使われます。深夜労働そのものを表すだけでなく、期限に追われている切迫感や、そこまでして仕上げたいという意志の強さを同時ににじませる点が特徴です。電灯が普及した現代でも、この表現だけは油の時代のまま生き残っています。
【ここがポイント!】
- 油ランプをともし続けて夜も働くという、時代を超えたイメージが核
- 労いにも軽い皮肉にもなる、両義性のある声かけの表現
- 期限に追われる切迫感が言葉の裏に潜んでいると読み取るのがコツ
『メンタリスト』S05E12のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
行方の分からない少年の手がかりもつかめず、供述調書を読み返しても決め手が出ない深夜のCBIオフィス。書類に向かい続けるリズボンに、ジェーンが声をかける場面です。
Lisbon: I HEARD YOU TALKED TO HIS MOTHER.
(母親と話したそうね)Jane: YES. SHE THINKS THE WORST. HARD NOT TO AGREE WITH HER. BURNING THE MIDNIGHT OIL, I SEE.
(ああ。最悪の事態を考えていたよ。同意しないでいるのは難しいね。それにしても、夜なべしているようだね)Lisbon: THERE’S GOTTA BE SOMETHING HERE. JANE… AMANDA SHAW WAS MY WITNESS. I GAVE HER MY WORD THAT I’D PROTECT HER, AND VOLKER HAD HER KILLED.
(何かあるはずなのよ。ジェーン……アマンダ・ショウは私の証人だった。守ると約束したのに、ヴォルカーに殺されたの)The Mentalist Season5 Episode12 (Little Red Corvette)
シーン解説と心理考察
ジェーンが burning the midnight oil という軽い言い方を選んだところに、彼らしい距離の取り方が表れています。深刻な状況の最中でも、あえて重くならない声のかけ方をすることで、相手に息をつく隙間を与えているとも読めます。労いとからかいの中間にあるこの一言は、ジェーンが親しい相手にだけ見せる話し方でもあります。
リズボンの返答は、その軽さを受け流さず本音を明かす方向へ動きます。「there’s gotta be something here」という短い言葉のあとに、守ると約束した証人を失った自責の念を吐露する流れは、深夜まで机に向かい続ける理由がただの職務熱心さではないことを示しています。
軽い声かけから始まったやり取りが、一人の捜査官が背負う責任の重さへとつながっていく。この温度の落差が、深夜のオフィスという舞台をより印象的にしています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
暗い部屋の中、小さな油ランプの炎だけが揺れている光景を思い浮かべてみてください。電気のない時代、夜に何かをやり遂げようとする人は、その油を燃やし尽くす覚悟で机に向かっていました。
burn(燃やす)という動詞が選ばれているのがポイントです。ただ起きているのではなく、限りある資源を使い切ってでもやり遂げようとする姿勢が、この一語に込められています。
このシーンでリズボンが向き合っていたのは書類の山でしたが、燃やしていたのは油ではなく、証人を守れなかった自分自身への苛立ちだったのかもしれません。深夜の資料の山と、消えない未練。そのふたつを重ねて覚えておくと、この表現の持つ切実さごと記憶に残ります。
例文で覚える「burn the midnight oil」
試験勉強からビジネスの締め切りまで、幅広い場面で使える表現です。3つの場面で、burn the midnight oil のニュアンスを見ていきましょう。
I’ve been burning the midnight oil all week to finish this report.
(この報告書を仕上げるために、一週間ずっと夜遅くまで働いているよ)
締め切りに追われる状況を説明する言い方です。深夜労働の大変さをそのまま伝える、素直な使い方です。
The team burned the midnight oil to launch the product on schedule.
(チームは予定どおり製品を発売するために、夜遅くまで作業を続けた)
プロジェクトの報告やビジネスメールで使える言い方です。過去の努力を客観的に振り返る響きがあります。
A: You look exhausted. Late night again?
B: Yeah, I was burning the midnight oil trying to fix that bug.
(A:疲れてるみたいだね。また夜更かし?)
(B:うん、あのバグを直すのに夜遅くまでかかってさ)
同僚同士のカジュアルな会話です。相手の疲労を気遣う導入から、深夜労働の理由を軽く説明する流れで使えます。
あわせて覚えたい関連表現
pull an all-nighter
(徹夜する)
burn the midnight oil が「夜遅くまで働く」という程度を表すのに対し、こちらは一睡もしない徹夜そのものを指します。より極端な状況で使われる言い方です。
work around the clock
(昼夜を問わず働き続ける)
時計が一周する様子から生まれた表現で、burn the midnight oil が夜という時間帯に焦点を当てるのに対し、こちらは昼夜の区別なく続く労働そのものを強調します。
stay up late
(夜更かしする)
仕事に限らず、趣味や娯楽での夜更かしにも使える中立的な表現です。burn the midnight oil に比べて、何かをやり遂げるという目的意識は薄れます。
Note|ランプの油を燃やし尽くした時代の働き方
burn the midnight oil という言い方が最初に記録に残ったのは、17世紀のイギリスだとされています。
1635年、詩人フランシス・クォールズが著書『エンブレムズ』の中で、”our mid-day sweat, our mid-night oyle”(昼の汗と、夜の油)という一節を残しました。これが「midnight oil」という言葉のもっとも古い記録のひとつとされ、以後この言い回しが定着していったと考えられています。当時、電灯はまだ存在せず、日が沈んだあとに読書や仕事を続けるには、鯨油や植物油を燃料にしたオイルランプをともし続けるしかありませんでした。燃料には限りがあり、深夜まで机に向かうということは、そのぶん油を消費し続けるということでもありました。burn(燃やす)という動詞には、この「限りある資源を使い切る」という当時の実感がそのまま残っていると考えられます。
19世紀に入ると、電灯の普及とともに実際の油ランプは姿を消していきますが、慣用句としての形はそのまま受け継がれました。19世紀の書き手たちもこの言い回しを使い続けたとされ、蛍光灯やパソコンの明かりの下で働く現代人にも、違和感なく使われ続けています。
深夜のCBIオフィスでリズボンが向き合っていたのも、書類の山でした。燃えているのは油ではなく彼女自身の意志だとしても、burn the midnight oil という言葉が指し示す「使い切ってでも」という切実さは、時代を超えてそのまま当てはまります。
灯りの種類が変わっても、夜を燃やして働くという感覚だけは残り続けています。
まとめ|燃やしているのは油だけではない
burn the midnight oil は、単に「夜遅くまで働く」と言いたいときの表現ではありません。限りある資源を使い切ってでもやり遂げようとする、当時の切実さごと受け継がれた言い方です。
この一言を知っていると、深夜労働の大変さを、労いにもからかいにも使える温度感で語れるようになります。pull an all-nighter のような直接的な表現とは違い、burn the midnight oil には油ランプの時代からの重みが静かに宿っています。
日付が変わっても机に向かい続ける誰かの背中を見たとき、この表現を会話のレパートリーに加えてみてください。


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