海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
順調に話していた相手が、ある話題に触れた途端ぴたりと黙り込んでしまった。そんな瞬間に立ち会ったことはありませんか。
その状態を一語で言い表す「clam up」を、『メンタリスト』シーズン2第16話の後半、ある人物への聴取をめぐってジェーンとリズボンが対立するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「clam up」の意味とニュアンス
clam up
意味:口をつぐむ、黙り込む、しゃべらなくなる
それまで話していた人が、緊張や警戒から急に何も言わなくなる状態を指します。clam は二枚貝のこと。砂の上の貝に指を近づけると殻がぴたりと閉じる、あの反射的な動きがそのまま言葉になっています。
単に静かにするのとは違い、話すことを拒んで殻に閉じこもるという含みがあります。しかも多くの場合、本人が意識して黙るというより、外からの刺激に反応して閉じてしまう。こじ開けようと力を加えるほど固くなる、という貝の性質まで意味に引き継がれているのが特徴です。
原因は緊張、警戒、恐怖などさまざまです。核心を突かれて口を閉ざす場面にも、人前で緊張して言葉が出なくなる場面にも使えます。自分について I tend to clam up in large meetings のように言えば、性格の説明として角が立たずに伝わります。
【ここがポイント!】
- 指を近づけると閉じる二枚貝の反射が、そのまま意味になっている表現
- 意識して黙るというより、刺激に反応して閉じてしまう受け身の感覚が核
- 押すほど固くなるので、相手を黙らせたくないときの警告としても使えるのが便利
『メンタリスト』S02E16のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
新たに浮上した人物への聴取をめぐって、ジェーンとリズボンの意見が割れる場面です。リズボンは手順どおり他機関の責任者に知らせようとしますが、ジェーンはそれに強く反対します。理由として彼が持ち出すのが、聞き方を誤ったときに起きることでした。
Jane: But whatever you do, do not tell Harken.
(ただし、何があってもハーケンには言わないで)Lisbon: Why not? It’s procedure.
(どうして。手順でしょう)Jane: Fig for procedure. He’ll stomp all over her. She’ll clam up. You’ll get nothing but a waste of time.
(手順なんてどうでもいい。彼が踏み荒らせば、彼女は貝みたいに黙り込む。時間を無駄にするだけです)Lisbon: I’m telling Harken.
(ハーケンには言います)The Mentalist Season2 Episode16(Code Red)
シーン解説と心理考察
ジェーンの反対が、相手への思いやりではなく効率の話として組み立てられている点が特徴的です。追い詰め方を間違えれば口を閉ざされ、そこから何も出てこない。だから正しい順序ではなく、正しい聞き手を選べという理屈になっています。
stomp all over her と clam up が並んで置かれているのも見どころです。踏み荒らす側の動きと、閉じる側の反応。原因と結果が二つの動作として提示されることで、相手を黙らせてしまう構図が短い台詞の中に収まっています。
リズボンはそれを退けて手順を選び、ジェーンは食い下がらずに引き下がります。あれほど強く反対していた人物が、あっさり引くという不自然さ。この間の取り方が、直後の彼の独断行動への布石になっており、二度目に見ると印象の変わる場面と言えます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
砂の上の二枚貝に、そっと指を近づける。殻がぴたりと閉じる、あの一瞬の動きを思い浮かべると、この表現の意味も速さもまとめて手に入ります。開いていたものが、外からの刺激に反応して、こじ開けようとするほど固く閉じる。
さらに、口に出したときの感触も味方になります。clam up と言い終えると、唇が合わさった形で音が止まります。閉じる意味の言葉が、閉じる口の形で終わる。劇中のジェーンは、踏み荒らせば彼女は閉じてしまうと言いました。貝の反射と、自分の唇の動きを重ねておくと、意味を思い出す手がかりが二重になります。
例文で覚える「clam up」
他人の様子を描写する使い方と、自分の性質を説明する使い方があります。三つの例文で見ていきましょう。
He clams up whenever anyone asks about his first marriage.
(最初の結婚の話になると、彼はいつも黙り込んでしまいます)
触れてはいけない話題を人に説明する場面です。特定の話題が引き金になるという構図が、この形でよく表れます。
I tend to clam up in large meetings, so I send my thoughts by email.
(大人数の会議では黙りがちなので、意見はメールで送るようにしています)
自分の性格を職場で申告する場面です。欠点として並べるのではなく、対処法とセットにすると前向きに響きます。
A: Did she say anything useful?
B: No. She clammed up the moment I mentioned the money.
(A:何か有益なことは言った?)
(B:いや。金の話を出した途端に黙り込んだ)
聞き取りの結果を報告し合う会話です。どの瞬間に閉じたかを添えると、状況が一気に立体的になります。
あわせて覚えたい関連表現
keep mum
(黙っている、口外しない)
秘密を守るために意図的に黙る意味合いが強い表現です。clam up は緊張や警戒による反射的な反応を指すことが多く、意志の有無が分かれ目になります。
shut down
(心を閉ざす、反応しなくなる)
会話だけでなく感情面まで含めて閉じる状態を指します。clam up は発話に限定されるぶん、状況を描写する言葉として使いやすくなっています。
hold one’s tongue
(言いたいことを言わずにこらえる)
言葉が出ないのではなく、出そうな言葉を意識的に抑える表現です。抑制の主体が本人にある点で、clam up とは正反対の構図になります。
Note|閉じる音で終わる言葉
clam up を声に出してみると、言い終えた瞬間に唇が合わさります。意味と口の動きが一致しているこの現象は、偶然ではないのかもしれません。
英語で「口を閉ざす」を表す言い回しを集めてみると、唇を使う音で終わるものが目立ちます。clam up の最後は唇を閉じて出す音。ファスナーを閉めるように黙れという zip it も同様です。button one’s lip に至っては、唇そのものが語に含まれています。いずれも、言い終えたときの口の形が、そのまま黙るという動作を再現します。
一方、同じく黙らせる意味でも shut up は口が開いた形で終わり、突き放すような響きになります。この違いは実際の使われ方にも現れていて、shut up が強い命令や苛立ちに寄るのに対し、clam up は状況の描写に使われることが多くなっています。音の締まり方が、表現の温度をある程度決めているとも言えます。
声に出して確かめられるのは、この覚え方の利点です。clam up と zip it と shut up を続けて発音し、最後に口がどうなっているかを比べてみると、意味の違いが身体の感覚として残ります。
閉じる言葉は、閉じる口で終わります。
まとめ|口を閉ざす一瞬をつかまえる
clam up は、話していた相手が緊張や警戒から急に黙り込む状態を指す表現です。二枚貝が閉じる反射が芯にあり、押すほど固くなるという性質までまとめて運んでくれます。
他人の様子を描写するときにも、自分の性質を説明するときにも同じ形で使えます。どの瞬間に閉じたのかを一緒に添えると、状況が具体的に立ち上がるのもこの表現の強みです。
劇中のジェーンは、間違った聞き手が来れば相手は閉じてしまうと言いました。言葉を引き出したい場面ほど、押す力の加減が問われるということでもあります。会話のレパートリーに加えてみてください。


コメント