海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
一度ついてしまった小さな嘘を取り繕おうとして、言い訳を重ねるうちに、かえって状況が悪くなってしまった。そんな覚えはありませんか。あそこで黙っていればよかった、と後になって思う場面です。
そんなときに使われる「dig oneself deeper」を、『メンタリスト』シーズン6第8話の中盤、身柄を拘束された元捜査官たちが、行方をくらました同僚の居場所を上司から問い詰められる場面から、一緒に見ていきましょう。
「dig oneself deeper」の意味とニュアンス
dig oneself deeper
意味:自分の首をさらに絞める、状況を余計悪化させる
dig は「穴を掘る」動詞で、自分自身を穴に追い込んでいくイメージを持つ表現です。すでに問題を抱えている人物が、嘘や言い訳、抵抗を重ねることで事態をさらに悪くしてしまう様子を表します。
dig oneself into a hole(自分で穴に入り込む)という言い方が先にあり、そこから「すでに掘った穴をさらに深くする」という形で使われるようになったと説明されます。だからこの表現には、最初のつまずきがすでに起きているという前提が含まれています。
多くの場合、これ以上事態を悪化させるなという警告や忠告の形で登場します。Don’t 〜 の否定命令と組み合わせると、相手の言動を止める強い一言になります。
【ここがポイント!】
- 自分で自分を穴に追い込んでいく、という絵が骨格にある一言
- 嘘や言い訳を重ねることで事態が悪化していく過程を指す
- 「これ以上掘るな」という警告の形で使われることが多いのがコツ
『メンタリスト』S06E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
追跡していた車から肝心の人物が姿を消していたと判明した直後の場面です。すでに身柄を拘束されているチョウとリグスビーに対し、アボットが苛立ちを隠さずに詰め寄ります。
Abbott: Don’t dig yourself any deeper. Where did he go?
(これ以上、自分の首を絞めるな。奴はどこへ行った?)Cho: I don’t know.
(知りません。)Abbott: You guys really have a death wish, don’t you?
(お前たち、本当に痛い目に遭いたいのか?)Cho: Sir, we really don’t know.
(サー、本当に知らないんです。)The Mentalist Season6 Episode8 (Red John)
シーン解説と心理考察
「これ以上首を絞めるな」という警告は、単なる忠告というより脅しに近い響きを持っています。すでに拘束されている二人に、これ以上罪状を重ねさせまいとする上司の切実さと、答えを引き出せない苛立ちが同時ににじむ場面です。
対するチョウは表情ひとつ変えず、同じ答えを繰り返すだけです。この淡々とした態度が、アボットの怒りをさらに逆撫でしている様子がうかがえます。追い詰める側と動じない側の温度差が、短いやり取りの中ではっきりと表れています。
二度目の返答で「サー」という敬称を添えている点も見どころです。反抗しているわけではない、しかし答えるつもりもない。その姿勢を丁寧語という形で示すあたりに、チョウらしい距離の取り方が重なっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
自分の足元に穴を掘り続け、気づけば頭まで埋まってしまう情景を思い浮かべると分かりやすい表現です。すでに困った状況にいるのに、さらにシャベルで掘り続けて自分を追い込んでいくイメージがそのまま言葉になっています。
劇中でもアボットは「これ以上掘るな」と、すでに拘束されている二人にこれ以上の罪状を重ねるなと警告しており、穴を掘る比喩がそのまま状況に重なっています。
「掘るほど深く埋まる」という一連の動作で覚えると定着しやすくなります。手を止めるだけで悪化は止まる、というところまで含めて絵にしておくのがおすすめです。
例文で覚える「dig oneself deeper」
嘘や言い訳を重ねて状況を悪化させてしまう場面で使える表現です。3つの例文で、使われ方の幅を見ていきましょう。
Stop lying to your boss—you’re just digging yourself deeper.
(上司に嘘をつくのはやめなさい――自分の首をさらに絞めるだけだよ。)
職場で同僚に忠告する場面です。劇中に近い警告の文脈で使える定番の形になります。
The more excuses he made, the deeper he dug himself.
(言い訳を重ねれば重ねるほど、彼は自分の首を絞めていった。)
誰かの失敗談を語る場面です。the more…the deeper という比較構文との組み合わせが自然に響きます。
A: I told them I was sick, but now they want a doctor’s note.
B: See, that’s what happens when you keep digging yourself deeper.
(A:体調が悪いって伝えたんだけど、今度は診断書を出せって言われてさ。)
(B:ほらね、それが自分の首を絞め続けるとどうなるかってことだよ。)
友人同士のカジュアルな会話です。keep 〜ing と組み合わせると、悪化が続いているという継続の含みが出ます。
あわせて覚えたい関連表現
be in a hole
(苦しい状況にいる)
すでに困った状況にいること自体を指す静的な表現です。dig oneself deeper はその状況を自ら悪化させていく動的な行為を指す点が違いになります。
shoot oneself in the foot
(自分で自分の首を絞める、墓穴を掘る)
一回の失策・自滅的な行動を指すことが多く、繰り返しのニュアンスは薄い表現です。dig oneself deeper は徐々に悪化していく過程を表します。
make matters worse
(事態を悪化させる)
自分自身の状況に限らず、一般的な事態悪化を表せる中立的な表現です。dig oneself deeper は自分自身の立場が掘り下げられる点が強調されます。
Note|なぜ人は言い訳を重ねてしまうのか
一度取った行動や発言を、なぜ人は正当化し続けようとしてしまうのでしょうか。
一度嘘をついたり誤った判断をしたりすると、それを認めるより取り繕おうとするほうを選びやすい、という傾向がしばしば指摘されます。背景として語られるのは、自分の言動に一貫性を持たせたいという心理と、ここまで来てしまった以上いまさら引き返せない、という感覚の組み合わせです。前者は「さっきああ言った以上、今さら違うとは言えない」という形で働き、後者は「ここで認めたら、これまでの労力がすべて無駄になる」という形で働きます。二つが噛み合うと、最初の失敗より大きな代償を払うところまで進んでしまいます。投資の判断、人間関係、仕事上の説明など、場面を選ばず現れる行動パターンだと言えます。
掘れば掘るほど抜け出しにくくなるという感覚は、比喩以上に実感に即したものです。dig oneself deeper という言い方がここまで日常的に使われているのも、この「引き際を見失う」経験が誰にとっても身近だからかもしれません。
穴の深さは、たいてい最初の一言から決まっていくものです。
まとめ|掘るほど深くなる、その一言の重み
dig oneself deeper は、嘘や言い訳を重ねることで自ら状況を悪化させてしまう様子を表す表現です。
「これ以上言い訳を重ねるとまずい」という空気を察知したときに、この一言を思い出せると、引き際の判断そのものにも役立ちます。
自分の言動が事態をどちらへ動かしているのか、ふと立ち止まって考えさせられる表現と言えます。


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