海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
しばらく会っていなかった知人の近況を聞いて、あの人の飲み方は少し心配だ、と感じた経験はありませんか。
そんな飲み方を一言で表すのが「drink like a fish」で、浴びるように酒を飲む、という意味です。『メンタリスト』シーズン2第10話の序盤、殺害された野球スカウトの自宅で、共同経営者のフィッチが別居中の妻の様子を語る場面に登場します。どのように使われているのか、一緒に見ていきましょう。
「drink like a fish」の意味とニュアンス
drink like a fish
意味:浴びるように酒を飲む、大酒を飲む
水の中で口を開け閉めしている魚の姿を、水を飲み続けていると見立てた言い方です。ポイントは量そのものよりも、止まらないという点にあります。
一度の飲み会でよく飲んだ、という話ではありません。日常的に、習慣として飲み続ける人を指すのが基本です。そのため、相手の飲み方をある程度知っている人の口から出てきます。
話し手の評価が自然と乗る表現でもあります。呆れ、心配、非難のどれになるかは口調と文脈しだいですが、褒め言葉として使われることはまずありません。会話ではくだけた響きで、報告書のような硬い文書には向きません。
主語には人が入り、He drinks like a fish. のような現在形、She was drinking like a fish. のような進行形、どちらもよく使われます。過去形にすれば、今はもう違うという含みが自然に生まれます。
【ここがポイント!】
- 核は「口を開けたまま止まらない」姿。量よりも止まらなさを言う一言
- 一度の飲み過ぎではなく、習慣としての飲み方を指すのが基本
- 呆れにも心配にも振れるので、口調とセットで受け取るのがコツ
『メンタリスト』S02E10のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
殺害された野球スカウト、バーニーの自宅で、共同経営者のフィッチが捜査陣に事情を説明しています。バーニーは幼い息子を亡くしたあと、妻レスリーと別居していました。フィッチはその後のレスリーの様子を、感情を交えずに行動だけ並べて語ります。そのリストの先頭に、この表現が置かれました。
Fitch: Drinking like a fish, picking up strangers, calling Barney at all hours, screaming…
(浴びるように飲んで、知らない男を引っかけて、時間かまわずバーニーに電話しては怒鳴り散らす)Lisbon: I don’t get that kind of anger. Okay, her kid died. Is that gonna bring him back?
(あんな怒り方は理解できません。子どもを亡くしたのは分かります。でも、そうしたら戻ってくるんですか)Fitch: You don’t have kids.
(あんた、子どもがいないんだな)Lisbon: No, I don’t.
(ええ、いません)The Mentalist Season2 Episode10(Throwing Fire)
シーン解説と心理考察
フィッチの語り方に特徴が表れています。飲む、誘う、電話する、怒鳴る。動作を四つ並べただけで、どれにも説明を足していません。同情でも批判でもなく、事実の列挙として置かれることで、レスリーの状態がかえって際立ちます。
drinking like a fish が先頭に来ているのも効いています。この一語が示すのは止まらないという状態で、後に続く三つの行動もすべて止まらないものばかりです。最初の一言が、リスト全体の性質を決めているとも言えます。
反応したのはリズボンでした。理解できない、という言い方で会話に入り、怒っても子どもは戻らないと続けます。事件の関係者を評価する言葉としては、少し踏み込みすぎた一言です。
そこへフィッチが短く返します。あんたには子どもがいない。理解できないと言った側が、その言葉をそのまま返される形になりました。数秒で立場が入れ替わる呼吸が、会話の温度を変えています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
水槽の前に立って、魚の口元をしばらく眺めてみてください。開いて、閉じて、また開く。休む気配がありません。飲み込んでいるように見えるその動きが、この表現の絵になっています。
グラスを一気にあおる姿ではなく、口を止められない姿。そう覚えておくと、一度の飲み過ぎに使ってしまう間違いを避けられます。
劇中のフィッチも、量の話は一切していません。飲む、誘う、電話する、怒鳴ると並べただけです。止まらない四つの動作の先頭に置かれた一言として記憶に入れておくと、使いどころが自然に決まります。
例文で覚える「drink like a fish」
飲み方そのものより、止まらない状態を伝える表現です。呆れ、心配、振り返りの三つの場面で見てみましょう。
My uncle drinks like a fish, but he’s never once been late for work.
(叔父は浴びるように飲むけれど、仕事に遅れたことは一度もない)
親戚の話を友人にするときの一言です。but でつなぐと、呆れと感心が同じ文に収まります。
After the divorce, he started drinking like a fish, and no one knew how to help.
(離婚のあと彼は浴びるように飲むようになり、誰もどう助ければいいか分からなかった)
知人の変化を心配して語る場面です。start と組み合わせると、いつから変わったのかがはっきりします。
A: Are you coming to the reunion?
B: Only if Mark behaves. He drank like a fish last time.
(A:同窓会は来る?)
(B:マークがおとなしくしてればね。前回は浴びるように飲んでたから)
気の進まなさを伝える会話です。過去形にすることで、その日の出来事として振り返る形になっています。
あわせて覚えたい関連表現
hit the bottle
(酒に走る、酒浸りになる)
つらいことがあって飲み始めた、という経緯が含まれます。drink like a fish が経緯を問わず飲み方だけを指すのに対し、こちらは原因とセットで語られます。
be a heavy drinker
(大酒飲みである)
中立的な言い方で、医療の場や調査報告でも使えます。drink like a fish は口語で話し手の評価が乗るため、硬い文脈では言い換えたほうが安全です。
knock back a few
(何杯かひっかける)
その日一回の飲酒を指す軽い言い方です。習慣を問題にする drink like a fish とは、見ている時間の幅が違います。
Note|魚は本当に水を飲んでいるのか
浴びるように飲む人を、なぜ魚にたとえるのか。水の中にいる生き物を持ち出す発想は、考えてみると少し不思議です。
英語でこの言い回しが使われるようになったのは17世紀ごろとされ、当時から大酒飲みを指す比喩だったと説明されます。根拠になったのは、魚が口を開いたり閉じたりし続ける姿でした。人の目には、休みなく水を飲み込んでいるように映ります。
ところが実際の魚は、種類によって水との付き合い方がまったく違います。淡水にすむ魚は、体のほうが周囲の水より濃いため、放っておいても水が体に入ってきます。だから積極的に水を飲む必要がなく、余分な水分は薄い尿として大量に出しています。逆に海水にすむ魚は、体から水分が奪われていくため、海水を飲んで水分を確保し、余った塩をエラから外へ出しています。つまり、飲み続けているという見立てに近いのは海の魚のほうで、川や湖の魚はほとんど飲んでいません。
もちろん、この表現が生まれた時代にそうした知識はありませんでした。口の動きという見た目だけが根拠で、中身の正しさは問われないまま言葉として定着したことになります。
言葉が写し取ったのは、事実ではなく印象でした。だからこの表現は、飲んだ量を測る言い方にならず、止まらない姿を指す言い方として残っています。誰かの飲み方を心配するとき、頭に浮かぶのも数字ではなく、休みなく続く動きのほうではないでしょうか。
見た目の誤解が、そのまま二百年以上使われ続けている例です。
まとめ|四つ並んだ動作の、その先頭で
drink like a fish は、飲んだ量を報告する表現ではありません。止められない状態を、魚の口の動きに重ねて伝える言い方です。習慣としての飲み方を指すという一点を押さえておけば、使う場面を外しません。
会話に入れると、長い説明をせずに相手の状態を伝えられるようになります。心配として言うことも、笑い話として言うこともできて、口調しだいで受け取られ方が変わります。だからこそ、誰に向けて言うのかだけは選びたい表現です。
劇中のフィッチは、この一言を四つの動作の先頭に置きました。止まらないものが並ぶリストの、最初の一つとして。誰かの様子を短く言い表したい場面のために、表現の引き出しに加えてみてください。


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