海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
気の進まない予定を、あえて一番早い時間に入れてしまう。そうやって早く終わらせようとする場面が、日常には時々あります。
そんなときに口をついて出るのが「get something over with」です。嫌なことを片づけてしまいたい、という気持ちごと運ぶ一言。『メンタリスト』シーズン4第15話の序盤、乗り気でない取引の手続きをリズボンが進めようとするシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get something over with」の意味とニュアンス
get something over with
意味:(気の進まないことを)さっさと済ませる、片づけてしまう
over は「終わった状態」を表し、with は「それを伴って」を担います。二つが重なることで、対象をまるごと終わった側へ持っていってしまう、という絵ができあがります。get はその運ぶ動作にあたります。
この表現の前提になっているのは、対象が気の進まないことだという点です。歯医者の予約、健康診断、苦手な相手への謝罪、面倒な事務作業。楽しみにしている予定に対しては使いません。使った時点で、話し手はそれを「嫌なこと」に分類していることになります。
だからこそ、他人が用意した企画や同僚の仕事に対して使うと失礼になります。自分のタスクや、みんなが面倒だと思っている共有の作業になら自然に使えます。
代名詞を挟む形が基本で、get it over with、get this over with のように使われます。be over with という受け身寄りの形も日常的で、Once the presentation is over with のように「終わってしまえば」を表します。
【ここがポイント!】
- 対象を「終わった側」へ押しやってしまう、というのが核のイメージ
- 使った瞬間に、それを嫌なことだと分類してしまう表現
- 相手の企画や他人の仕事には向けない、と覚えておくのが安全
『メンタリスト』S04E15のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
犯人の情報と引き換えに、収監中のエリカ・フリンを一時的に外へ出す取引が進んでいます。リズボンはこの取引に最初から反対で、いま刑務所で身柄の引き渡し手続きに立ち会っているところです。犯人の名前をはぐらかされた直後、ファイルの所在を確かめる場面に、彼女の本音が出ます。
Lisbon: Where are the files?
(ファイルはどこにあるの?)Erica: My lawyer is having them sent to your offices now.
(弁護士が今、そちらへ送っているところよ)Lisbon: Good. Let’s get this over with. You got her?
(結構。さっさと済ませましょう。引き受けてもらえる?)McClay: We got her. Miss Flynn, I’m Agent McClay.
(お預かりします。フリンさん、マクレイ捜査官です)The Mentalist Season4 Episode15(War of the Roses)
シーン解説と心理考察
Good. という素っ気ない一語が、リズボンの温度をそのまま示しています。情報が手に入ったことへの安堵ではなく、話を前に進めるためだけの相づちとして響きます。
この場面のリズボンにとって、取引そのものが片づけたい厄介ごとです。捜査に必要だという理屈は理解していても、納得はしていない。同じ「終わらせよう」でも Let’s finish this. ではなく Let’s get this over with. が選ばれているところに、その距離感がにじむ場面です。
直後に You got her? と監視役へ確認を投げ、手続きは事務的に進んでいきます。エリカとのやり取りを最小限で切り上げ、次の段取りへ移る流れそのものが、彼女の姿勢を物語っています。感情を言葉で説明することなく、動詞の選び方ひとつで立場を示す。この短さが会話の温度を変えています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
机の上に、触りたくない書類の山が置かれている場面を思い浮かべてみてください。中身をじっくり吟味するのではなく、とにかく over(向こう側、終わった側)へ、書類ごと with(それを抱えて)押しやってしまう。get はその押しやる動作です。
片づけたい気持ちが先にあって、中身への関心は後ろに下がっている。この温度感が finish との決定的な違いになります。劇中のリズボンにとって、エリカとの取引がまさにその「触りたくない書類」でした。Good. の素っ気なさと、書類を押しやる手つきを重ねて覚えておくと、この表現を使ってよい場面と避けるべき場面が体で分かるようになります。
例文で覚える「get something over with」
嫌なことだと分類してよい対象を選ぶのが、この表現を自然に使うコツです。日常・職場・打ち明け話の3つの場面で見てみましょう。
I hate dentist appointments, so I always book the earliest slot and get it over with.
(歯医者が苦手だから、いつも一番早い枠を取ってさっさと終わらせる)
自分の習慣を軽く話す雑談の場面です。前半の hate が、この表現の求める「気が進まない」前提をきれいに立ててくれます。
Let’s just get the paperwork over with before lunch.
(書類仕事は昼までに片づけてしまおう)
同僚に声をかけて面倒な作業を前倒しする場面です。just を添えると「深く考えずに、とにかく」という軽さが出て、相手を巻き込みやすい言い方になります。
A: Have you told your boss you’re leaving?
B: Not yet. I want to get it over with tomorrow morning.
(A:辞めること、上司に言った?)
(B:まだ。明日の朝に済ませてしまいたい)
言い出しにくい報告を控えている相手との会話です。中身が重い話題ほど、この表現の「早く終わらせたい」という気持ちが正確に伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
get it out of the way
(先に片づけて、道をあけておく)
get it over with が「嫌なものを終わらせたい」という気持ちに寄るのに対し、こちらは後続の予定のために先に処理しておく、という段取りの側に焦点があります。
be done with something
(〜と縁を切る、もう関わらない)
I’m done with him. のように、一度きりの作業ではなく関係や状態そのものを終わらせる言い方です。感情の切断が強く、対象が人になることもあります。
bite the bullet
(覚悟を決めて、つらいことに取りかかる)
get it over with が終わらせる側に立つのに対し、こちらは取りかかる側に立ちます。時間軸が一段手前にある表現だと考えると、使い分けやすくなります。
Note|have done with から get it over with へ
over と with が並ぶこの形は、初めて見ると少し冗長に映ります。どちらか一方でも意味は通りそうなのに、なぜ二つとも残っているのでしょうか。
英語には「終わらせる」を表す言い方の系譜があります。古くから使われてきた have done with something は、Have done with it! の形で「もうやめろ、それきりにしろ」という強い切り上げを表しました。ここでの with は、対象との関わりを断つ相手を指す役割を担っています。
これと並行して、be over and done with という言い方も定着していきます。over(終わった)と done(済んだ)を重ね、さらに with を付けて「もうすっかり片がついた」を言い切る形です。二重、三重に重ねてでも終わりを強調したい、という発想がここに見えます。
get it over with は、こうした言い方が並び立ってきた流れの中に置かれています。over が終わった状態を、with が対象との縁を、get が自らそこへ運ぶ動作を担う。役割が分かれているので、一見の冗長さは実は分業だったことになります。
そう考えると、劇中のリズボンが Let’s get this over with. と言ったとき、彼女は「終わらせる」だけでなく「もう関わらない場所まで持っていく」と言っていたことになります。over と with のあいだに、二つの願いが折り重なっているわけです。
言葉の重複には、たいてい理由が残っているものです。
まとめ|片づけたい気持ちごと運ぶ、そんな一言です
get something over with は、作業の完了ではなく、そこから解放されたい気持ちのほうを伝える表現です。同じ「終わらせる」でも、finish が結果を、この表現が心境を運ぶという役割の分かれ方をしています。
この違いを知っていると、相手の一言から状況を読み取れるようになります。同僚が Let’s get this over with. と言ったなら、その作業は誰にとっても気が重いものだという共通理解が、すでにそこにある。逆に自分が使うときは、対象を嫌なことに分類してしまう点にだけ気をつければ、ぐっと自然な英語になります。
面倒な予定を前にして、早く済ませてしまいたいと思ったとき。その気持ちをそのまま運んでくれる、そんな一言です。


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