海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
返事を待たされ続けて、そろそろ本気ではないのかもしれないと気づいた。そんな居心地の悪さを味わった経験はありませんか。
その状態を英語で名指しするのが「string someone along」です。応える気がないまま相手を引き止め続ける、という非難の一言。『メンタリスト』シーズン4第15話の後半、事情聴取を受けた男性が問われる前に自ら弁解を始めるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「string someone along」の意味とニュアンス
string someone along
意味:見込みのない期待を持たせたまま、相手を引き止め続ける
string は名詞で紐、動詞では紐でつなぐことを表します。along は「ずっと沿って」。二つが合わさって、相手を紐でつないだまま連れ歩く、という絵が浮かびます。
この表現の中心にあるのは、引き延ばしている側に応える気がないという点です。ただ返事が遅れているのではなく、最初から渡すつもりのないものをちらつかせ続けている。だからこの語は、状況の説明ではなく相手への非難として機能します。
使われる場面は大きく二つに分かれます。ひとつは人間関係で、結婚や交際について曖昧な態度を続ける相手について。もうひとつは仕事で、発注や採用の可否を伝えないまま検討中と言い続ける取引先や企業について。どちらも「決めない」ことで相手を拘束している構図が共通しています。
責める語であるため、自分について使うときは否定形になりがちです。I’m not stringing you along. のように、言われる前に先回りして否定する形がよく現れます。
【ここがポイント!】
- 紐でつないだまま連れ歩く、という絵が核になっている言い回し
- 遅れているのではなく「応える気がない」ことを名指しする非難の語
- 否定形で先回りに使われたら、後ろめたさのサインとして読むのがコツ
『メンタリスト』S04E15のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
事件の被害者と親しい関係にあった男性リチャードが、CBI でリズボンの事情聴取を受けています。関係を隠していた事情を追及され、彼は1年前からの経緯を認めたところです。既婚であることを指摘されると、まだ何も言われていないうちから自分で弁解を始めます。
Richard: Natalie and I started seeing each other about a year ago.
(ナタリーと会うようになったのは1年ほど前です)Lisbon: You were having an affair.
(関係を隠していたわけね)Richard: Yes… But I wasn’t just stringing her along. Uh, I planned to leave my wife. It’s just… you know, it’s complicated.
(ええ…でも、ただ引き延ばしていたわけじゃない。妻と別れるつもりでした。ただ…その、複雑なんです)Lisbon: Complicated? Because your wife’s family has millions of dollars and you make minimum wage at a nonprofit?
(複雑? 奥さんの実家が資産家で、あなたは非営利団体で最低賃金だから?)The Mentalist Season4 Episode15(War of the Roses)
シーン解説と心理考察
この場面で見逃せないのは、リチャードがこの言葉を誰にも言われる前に自分から持ち出しているという点です。リズボンは事実関係を確認しただけで、彼を責める言葉はまだ使っていません。
それでも彼は But I wasn’t just stringing her along. と先回りしました。この反応そのものが、string along という語の重さを教えてくれます。言われたら反論しづらい、しかも自分でも心当たりがある。だから相手の口から出る前に否定しておきたくなる。彼の内側にある後ろめたさが、この一言に重なっています。
続く It’s complicated. という言い訳も、同じ構造の中にあります。事情を複雑だと言うことで判断を先送りしてきたのだとしたら、それこそが string along の中身にほかなりません。リズボンがその一語をそのまま拾い上げ、金銭事情に置き換えて突き返すことで、彼の弁明は自分の言葉によって崩れていきます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
長い紐の先に何かをぶら下げて、相手の目の前で少しずつ引いていく場面を思い浮かべてみてください。相手は手が届きそうだと思って一歩前に出る。けれど紐を持っている側は、渡すつもりが最初からない。along(ずっと沿って)が示しているのは、この動作が一度きりではなく延々と続くという点です。
劇中のリチャードは、この紐を握っていた側だと自分でも分かっていました。だからこそ、追及される前に自ら否定してみせたわけです。紐の絵と、彼が慌てて先回りする様子をセットで覚えておくと、この表現が持つ非難の強さがそのまま思い出せます。
例文で覚える「string someone along」
責める側、待たされている側、弁解する側。立場を変えて3つ並べると、この表現の輪郭がはっきりします。
If you’re not interested, just say so. Don’t string her along.
(その気がないなら、はっきり言って。期待させたままにしないで)
友人の煮え切らない態度をたしなめる場面です。命令形の否定で使うと、この表現が持つ非難の強さがそのまま前面に出ます。
They strung us along for three months and then went with another vendor.
(三か月も引っ張っておいて、結局別の業者に決めた)
商談が長引いた末に破談になった経緯を同僚に話す場面です。期間を具体的に添えると、引き延ばされた側の徒労感が数字として伝わります。
A: Any word from the company?
B: Nothing. I think they’re just stringing me along at this point.
(A:あの会社から連絡あった?)
(B:何も。もう引き延ばされてるだけだと思う)
選考結果を待たされている状況を友人に話す会話です。at this point を添えることで、期待から見切りへ気持ちが移った時点まで表現できます。
あわせて覚えたい関連表現
lead someone on
(その気にさせる、思わせぶりな態度をとる)
string along が関係を引き延ばす時間の長さを含むのに対し、こちらは期待を抱かせる誘導そのものを指します。開始の時点に焦点があるという違いがあります。
keep someone hanging
(宙ぶらりんのまま待たせる)
返事や結論を保留にする状況に限定され、相手をつなぎ止めようという意図までは含みません。今回のフレーズより非難の度合いが軽くなります。
play someone
(人をだます、いいように操る)
利用する意図がはっきりしており、string along よりも悪質さが強い言い方です。金銭や利益が絡む場面で選ばれやすい表現になります。
Note|日本語に一語で対応する言葉がない理由
string someone along を日本語に訳そうとすると、訳語が場面ごとに割れてしまいます。人間関係なら「思わせぶりな態度をとる」、仕事なら「引っ張る」、少しくだけた言い方なら「キープする」。どれも部分的には重なるのに、どれひとつとして全体を覆いません。
理由は、この表現が三つの要素を一度に含んでいるところにあります。ひとつめは、相手に期待を抱かせていること。ふたつめは、その期待に応える気がないこと。みっつめは、それを知りながら関係を継続していること。日本語の「思わせぶり」は一つめだけ、「引っ張る」は三つめだけを切り取ります。二つめの、応える気がないと分かっていながら、という芯を名指しする語が見あたらないのです。
同じことは訳の方向を逆にしても起こります。日本語の「キープ」は関係の側に立った言い方で、責める語ではありません。誰かが誰かを「キープしている」と言っても、それは状態の記述であって告発ではない。ところが string along は、口にした瞬間に告発になります。
劇中のリチャードが、責められる前に自分から否定したのはそのためでした。日本語なら「別に引っ張ってたわけじゃない」と言っても弁解の一部で済みますが、英語ではその一語が投げられる前に打ち消しておかないと、告発が成立してしまう。彼の焦りは、語の重さの差そのものだったと言えます。
訳しにくい言葉には、その言語が何を問題として切り出してきたかが残っています。
まとめ|決めないことが、相手を縛るということ
string someone along は、嘘をついたことでも約束を破ったことでもなく、決めないまま関係を続けたことを責める表現です。何もしていないつもりの側が、実は相手の時間を握っていた。その構図を一語で名指しできるところに、この言い回しの強さがあると言えます。
だからこそ、この語は待たされている側の実感にぴったり寄り添います。返事が来ないという事実だけでは説明しきれない居心地の悪さに、輪郭を与えてくれる。仕事でも人間関係でも、その感覚を言葉にできるようになると、状況を客観的に眺め直しやすくなります。
決めないという選択も、ひとつの行為として数えられる。そんな見方を含んだ表現と読み取れます。


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