海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
間違いを指摘しただけなのに、なぜか場の空気が固くなってしまった。正しいことを言ったはずなのに、相手の顔が曇る。そんな経験はありませんか。
そんな場面の「受け止められ方」を言い表すのが「go down well」です。『メンタリスト』シーズン5第17話の前半、基地の病院でリズボンとジェーンが、亡くなった女性兵士の同僚から人柄を聞き出すシーン。そこで語られる一言から、一緒に見ていきましょう。
「go down well」の意味とニュアンス
go down well
意味:好意的に受け入れられる、受けがいい
go down は、飲み物や食べ物が喉を通っていく動きを表します。そこから、言葉や提案、演目のように「相手に差し出されたもの」が、受け手の中をすんなり通っていくかどうかを表す言い方が生まれました。well が付けば「うまく通っていく」、つまり好意的に受け止められたという意味になります。
主語になるのは人ではありません。発言、冗談、提案、料理、演出など、受け止められる側のものが主語に立ちます。「彼は受けが良かった」ではなく「彼の冗談は受けが良かった」という形になる点が、日本語から組み立てるときにつまずきやすいところです。
実際の会話では、否定形の doesn’t go down well、didn’t go down well の形で使われることがよくあります。反応が良かったことより、思ったほど受け入れられなかったことのほうが、わざわざ言葉にする必要が生じるからです。
誰に対して受けたのかを示したいときは、with を添えます。didn’t go down well with the team とすれば、受け止めた側がはっきりします。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは、言葉や提案が相手の中をすっと通っていく感覚
- 主語は人ではなく、発言・冗談・料理・演出など差し出されたもの
- 否定形で使われることが多く、with を足して相手を示すのがコツ
『メンタリスト』S05E17のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
リズボンとジェーンが訪ねたのは、殺害された衛生兵ルーシーと同じ部隊で働いていた同僚のローズです。優秀で規律に厳しかったという評判の裏で、彼女が部隊の中でどう見られていたのか。二人がその点に踏み込んでいくと、ローズの口から部隊の空気を映す一言がこぼれます。
Jane: What did she have trouble with?
(彼女が手を焼いていたのは何です?)Rose: People, I guess. Guys in the unit, mostly. She’d be the first to tell you she was O.C.D. about the rules. Real detail-oriented. She’d point out if you messed up, and that doesn’t go down well. Especially with guys.
(人、だと思います。ほとんどは部隊の男性たちに。ルールにはうるさいくらい厳格だって、本人が最初に認めるような人でした。とにかく細かくて。ミスがあれば指摘する、それがよく思われないんです。特に男性には。)Lisbon: You defended her?
(あなたはかばったの?)Rose: I tried to. She looked out for me.
(かばおうとはしました。彼女は私を気にかけてくれていたので。)The Mentalist Season5 Episode17 (Red, White and Blue)
シーン解説と心理考察
ローズの言葉には、亡くなった同僚への敬意と、彼女が置かれていた立場への理解が同時に含まれています。「本人が最初に認めるくらい規則に厳格だった」という言い方は、欠点を挙げながらも相手を突き放していません。
注目したいのは、that doesn’t go down well という言い方が選ばれている点です。「男たちが怒った」でも「彼女は嫌われた」でもなく、主語に置かれているのは「指摘するという行為」のほうです。誰かを名指しで責める形を避けたまま、起きていた摩擦だけを差し出している。この言い換えに、ローズの慎重さが表れています。
そのうえで especially with guys と続けることで、部隊の空気の偏りまで言い添えているのが面白いところです。一般論に見せかけて、実は具体的な相手を示している。
そして直後の「かばおうとはしました。彼女は私を気にかけてくれていたので」という短い返しに、二人の関係の重さがにじむ場面です。この一言が、のちに明かされる事情への伏線になっていきます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
go down well を覚えるときは、言葉を飲み込む場面を思い浮かべてみましょう。差し出されたものが喉をすっと通っていくのが go down well、途中でつかえて止まるのが doesn’t go down well です。
ローズが語ったのは、まさにその「つかえた」瞬間でした。ルーシーの指摘そのものは正しかった。それでも部隊の男性たちの喉を通らなかった。正しさと、受け止められやすさは別の話なのだという構図が、この動詞句にそのまま重なります。
飲み込む動作は自分の身体で再現できます。すっと通る感覚と、ぐっと詰まる感覚。その二つを覚えておけば、well と not の切り替えは自然に出てくるはずです。
例文で覚える「go down well」
go down well は、肯定形よりも否定形で耳にすることが多い表現です。受け止められ方の温度を測る言葉として、三つの場面で見てみましょう。
His joke about the deadline didn’t go down well with the client.
(締め切りについての彼の冗談は、クライアントには受けが良くなかった。)
会議室の空気が一瞬で冷えた場面です。with を添えると、誰に対して受けなかったのかがはっきりします。
The chocolate cake went down well with everyone at the party.
(そのチョコレートケーキは、パーティーのみんなに好評だった。)
食べ物が主語になると、文字どおり喉を通る意味と、好評だったという意味が重なります。go down のもとの絵がいちばん見えやすい使い方です。
A: How did your presentation go?
B: Not great. The new pricing didn’t go down well at all.
(A:プレゼンどうだった?)
(B:あまり。新しい価格設定がまったく受け入れられなくて。)
同僚同士の報告の場面です。at all を足すと、まるで受けなかったという否定の度合いが強まります。
あわせて覚えたい関連表現
go over well
(好意的に受け止められる)
北米の会話で選ばれやすい形です。意味はほぼ同じで、go down well が英国英語寄りなのに対し、こちらはアメリカのビジネス会話でよく耳にします。
fall flat
(すべる、期待した反応が得られない)
冗談や演出が空振りに終わる様子を表します。go down well が受け止められ方の良し悪しを幅広く言うのに対し、fall flat は反応がなかったという結果に焦点があります。
rub someone the wrong way
(相手の神経を逆なでする)
特定の相手を不快にさせるという意味で、doesn’t go down well より当たりが強い言い方です。ルーシーの指摘が部隊の反感を買った状況は、この表現でも描けます。
Note|go down well と go over well、海を挟んで分かれた言い方
ローズが口にした doesn’t go down well は、英国英語の教材でよく見かける形でもあります。カリフォルニアを舞台にしたドラマの中で聞こえてくると、少し意外に思えるかもしれません。
「受け止められる」を down で言うか over で言うか。この分かれ方には、大西洋を挟んだ語彙の傾向が関わっています。英国系では go down well、go down badly、さらに go down a treat のように down を使う形が層をなしています。一方、北米では go over well、go over big といった over 側の形が定着してきました。同じ発想を、別の前置詞で受け止めてきたわけです。
ただし、この線引きは年々ゆるくなっています。映像作品や出版物を通じて英米の語彙は相互に流れ込んでおり、アメリカ英語の話者が go down well を使う場面も珍しくなくなりました。軍の衛生兵であるローズが、カリフォルニアの捜査官を前にこの形を選んでいること自体が、その混ざり具合を映していると読み取れます。
どちらの形でも意味は同じなので、聞き取りのときに down か over かで身構える必要はありません。自分で使うときだけ、相手の英語圏に寄せて選べると自然さが増します。迷ったときは、どちらでも通じる表現だと思って構いません。
同じ気持ちが、海を挟んで別の前置詞に落ち着いた形です。
まとめ|「受けが良くない」を一言で
go down well が測っているのは、内容の正しさではなく、その内容がどう受け止められたかです。ルーシーの指摘は間違っていなかった。それでも部隊の喉を通らなかった。その二つを切り分けて言えるところに、この表現の使いどころがあります。
会議で自分の提案が思ったほど響かなかったとき、集まりで用意した料理が好評だったとき。主語を「自分」ではなく「差し出したもの」に置き換えるだけで、状況を落ち着いて描写できるようになります。感情を挟まずに反応だけを伝えられるのは、この言い方の大きな利点です。
正しさと受け止められやすさのあいだにある距離を、そっと言葉にできる一言として、表現の引き出しに加えてみてください。


コメント