海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
手間のかけ方が不自然に大きくて、「そこまでする必要があったのだろうか」と引っかかった経験はありませんか。労力の大きさが、かえって説明のつかなさを生む場面があります。
そんな引っかかりを一言で表せるのが「go to such lengths」です。そこまで手を尽くす、という意味で使われます。『メンタリスト』シーズン4第13話の序盤、FBIのダーシー捜査官が、解決済みとされた事件の不自然さをジェーンたちに投げかけるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「go to such lengths」の意味とニュアンス
go to such lengths
意味:そこまでのことをする、そこまで手を尽くす
length は「長さ」や「距離」を表す語です。この表現では、その距離が「どこまで手を伸ばしたか」という労力の量に読み替えられています。誰にでも「ここまでなら手が届く」という範囲があり、その外側まで腕を伸ばしてしまった状態、と考えると輪郭がつかめます。
標準的な形は go to great lengths で、such に替えると、直前に話題になっている行動を受けて「そこまで」を指せます。形容詞を extraordinary にすれば度合いが上がり、any lengths になると「手段を選ばない」という危うさが加わります。
評価の向きは固定されていません。相手の骨折りに感心するときにも、行動が手の込みすぎで不自然だと疑うときにも使えます。どちらに転ぶかは前後の文脈が決めます。後ろに to do を続けて「何のためにそこまでしたのか」を示す形が定番です。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「腕をどこまで伸ばしたか」という距離のイメージ
- such / great / any と形容詞を替えるだけで、感心から疑いまで振れる表現
- 後ろに to do を置いて「何のためにそこまで」を示すのが自然な形
『メンタリスト』S04E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
CBIのオフィスに、FBIのダーシー捜査官が訪ねてきます。すでに決着したとされている事件を、彼女はまだ追っていると告げる場面です。リズボンが証拠を並べて事件は終わったと説明しますが、ダーシーが引っかかっているのは証拠の中身ではなく、犯人とされた人物が取った行動の大きさそのものでした。その違和感が、次の一言に集約されます。
Darcy: I’m not certain about that.
(私は、そう言い切れません)Lisbon: Well, there was conclusive evidence. There was the murder weapon, Panzer’s blood on Maier’s clothing, not to mention the confession Maier wrote before killing himself.
(決定的な証拠がありました。凶器も、マイヤーの服についたパンザーの血も。それに、マイヤーが自殺前に書いた自白もあります)Darcy: Right. Odd, don’t you think? I mean, why would he go to such lengths to make it look like Red John was the killer? It doesn’t make any sense. And why would he send CBI a video of me?
(ええ。でも妙だと思いませんか。なぜそこまでして、レッド・ジョンの仕業に見せかける必要があったのか。筋が通りません。それに、なぜ私の映像をCBIへ送ったのでしょう?)Jane: Who can fathom the mind of a desperate man?
(追い詰められた人間の心など、誰に読めるでしょうね)The Mentalist Season4 Episode13(Red Is The New Black)
シーン解説と心理考察
ダーシーは、証拠そのものを否定してはいません。凶器も血痕も認めたうえで、「では、なぜそこまでしたのか」とだけ問い返しています。事実を崩すのではなく、事実の背後にある労力の大きさを指さすやり方が、この場面の緊張を作っています。
go to such lengths が置かれているのは、追及の入口にあたる位置です。断定を避けながら相手に自分で考えさせる問いの形になっており、質問というより静かな圧として響きます。
ジェーンの返しは、その圧をやわらかく見せています。追い詰められた人間の心理は測れない、という一般論に着地させることで、話の焦点を個別の事件から人間一般へずらしている点が見どころです。かわしているようでいて、問われた中身には一言も答えていない。そのずらし方の鮮やかさが、短いやりとりの中に表れています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
腕を伸ばす絵で覚えるのが近道です。誰にでも「ここまでなら手が届く」という範囲があり、その外側まで無理に腕を伸ばした状態が go to such lengths にあたります。距離が長いほど、かけた労力も大きくなります。
ダーシーが引っかかったのも、まさにこの距離でした。見せかけを作るという目的に対して、伸ばした腕が長すぎる。割に合わない、という感覚が違和感の正体です。
such を great や extraordinary に替えれば、腕の長さをそのまま伸縮できます。形容詞が距離の目盛りになっている、と押さえておくと迷いにくくなります。
例文で覚える「go to such lengths」
感心にも疑いにも転ぶ表現なので、どちらの向きでも使えるようにしておくと便利です。3つの場面で見ていきましょう。
I can’t believe he went to such lengths just to surprise her.
(彼女を驚かせるためだけに、そこまでやったなんて)
友人が恋人へのサプライズを大がかりに準備していたと聞いた場面です。just to を添えると、目的の小ささと労力の大きさのギャップが際立ちます。
Why would anyone go to such lengths to hide a simple mistake?
(単純なミスを隠すのに、なぜそこまでするのでしょう)
同僚の報告のつじつまが合わないと感じた場面です。劇中のダーシーと同じ、疑いの入口としての使い方になります。
A: I made the cake from scratch and hand-wrote all the invitations.
B: You didn’t have to go to such lengths for me.
(A:ケーキは一から焼いて、招待状も全部手書きしたの)
(B:私のために、そこまでしてくれなくてよかったのに)
相手の厚意が大きすぎて恐縮している場面です。否定形で受けると、感謝とためらいを同時に伝えられます。
あわせて覚えたい関連表現
go out of one’s way
(わざわざ〜する)
自分の道筋から外れて回り道をする、という絵から生まれた表現です。今回のフレーズが労力の総量を測るのに対し、こちらは相手のために手間をかけたという好意の含みが強く、疑いの文脈では選ばれにくくなります。
go the extra mile
(期待以上のことをする)
決められた一マイルの先まで進む、という発想の言い方です。肯定的な評価に固定されているため、皮肉や違和感の表明には使えません。
go so far as to do
(〜するまでに至る)
後ろに具体的な行動を置いて「そこまでやった」と示す形です。今回のフレーズは行動を明示せず労力の量だけを指せる点で、使える場面が少し広くなります。
Note|労力を「距離」で測る英語
go to such lengths を字義どおりに追うと「そのような長さまで行く」となります。労力を長さに置き換えて語るこの発想は、英語の中で孤立したものではありません。
同じ発想で作られた言い方を並べると、輪郭がはっきりします。go the extra mile は、決められた距離の先へもう一マイル進むこと。go out of one’s way は、本来の道筋を外れて回り道をすること。go far は、その人がどこまで到達できるかという将来性まで距離で語ります。どれも共通しているのは、移動した距離がそのまま労力や成果の量になる、という一本の物差しです。実際に体を動かして遠くへ行くわけではないのに、距離の長短だけで努力の重さが伝わってしまいます。
一方、日本語で同じ内容を言おうとすると、「手間をかける」「労を惜しまない」「骨を折る」のように、作業量そのものを名指す言い方が中心になります。距離ではなく、体の負荷や作業の分量を測っているわけです。同じ場面を語りながら、持ち出す物差しが違っていることになります。
この違いを知っておくと、such が何を指しているのかも見えてきます。such が測っているのは行動の中身ではなく、そこまで伸びた距離の長さです。だから形容詞を替えるだけで、行動を説明し直さなくても度合いだけを動かせます。
物差しが違えば、同じ行動でも見え方が変わります。
まとめ|「そこまでするか」を距離で言い表す
go to such lengths は、行動の中身ではなく、そこにかけられた労力の大きさを指す表現です。腕をどこまで伸ばしたか、という一本の物差しで測っているため、感心にも疑いにも同じ形で使えます。
この一言が使えるようになると、「すごい」「変だ」と評価を先に出さずに、まず労力の大きさだけを置くことができます。相手の骨折りをねぎらう場面でも、つじつまの合わなさを指摘する場面でも、角を立てずに話を進められる言い方です。
そこまでする理由は何だったのか。そう問い返す入口として、表現の引き出しに加えてみてください。


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