海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
誰かのちょっとした失敗が知れ渡って、周りが一斉に盛り上がってしまう、そんな場面があります。当人にとっては気まずいだけでも、外から見ている人には格好の話題になる瞬間です。
そんなときに使われる「have a field day」を、『メンタリスト』シーズン2第8話の終盤、取調室でのやり取りの中でジェーンが口にするシーンから、一緒に見ていきましょう。短い一言ですが、誰が得をして誰が困るのかがはっきり分かれる表現です。
「have a field day」の意味とニュアンス
have a field day
意味:ここぞとばかりに楽しむ、格好の機会にする
誰かにとって都合のよい材料が転がり込み、それを思う存分に利用して盛り上がる状況を表します。日本語では「格好のネタにする」「大喜びする」あたりが近い訳になります。
よく使われるのは、批判や報道、からかいの文脈です。The media will have a field day. は不祥事の発覚を予告する定型として繰り返し使われ、当事者にとっては歓迎しにくい事態を表します。主語になるのは「盛り上がる側」であって、材料を提供してしまった側ではありません。
with を伴って have a field day with… とすると、何をネタにするのかがはっきりします。
一方で、皮肉を含まない使い方もあります。The kids had a field day in the snow. のように、単純にはしゃぎ回った様子を表す場合もあり、文脈によって色が変わる表現です。
【ここがポイント!】
- 核は「思う存分やれる一日」、材料を得た側が盛り上がるイメージ
- 報道や批判の文脈で使われることが多く、当事者側から見れば歓迎しにくい事態
- 誰が盛り上がるのかを主語で示すのがコツ、材料は with で足せます
『メンタリスト』S02E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
取調室での長いやり取りの終盤です。緊迫した会話が続いたあと、向かい合っている人物が、急に好きな音楽やペット、収集癖といった日常の話を並べ始めます。ジェーンがそれをどう受けるのか。ここでは物語の核心に触れない範囲で引用しています。
Rebecca: And I have a cat named Rex. And I collect porcelain frogs. Don’t ask me why. It’s just a quirk, really.
(それにレックスっていう猫がいて、陶器のカエルを集めてるの。理由は聞かないで。ただの癖よ)Jane: Well, the psychologist will want to talk to you next. He’ll have a field day with that.
(このあと心理士が話を聞きに来るよ。その話で大喜びだろうね)Rebecca: But I’m as sane and as healthy as can be. I really am.
(でも私は、どこまでも正気で健康よ。本当に)The Mentalist Season2 Episode8(His Red Right Hand)
シーン解説と心理考察
張り詰めたやり取りのあとに並べられるのが、猫の名前と陶器のカエルです。取り調べの場にはあまりに不釣り合いな話題で、しかも語る口調はどこまでも穏やか。この落差そのものが、この場面の不気味さを作っています。
ジェーンはその不自然さを正面から指摘しません。代わりに、次に来る心理士がその話に飛びつくだろう、と返します。専門家の目にはこれが格好の材料に映る、と伝えることで、その平静さは普通ではない、と遠回しに突きつけているわけです。
責めもせず、驚きもせず、第三者の反応を予告する形で相手の自己申告を揺さぶる。相手が「正気で健康だ」と言い返してしまうところまで含めて、この一言がきちんと届いていることが表れています。直接ぶつからずに相手を動かす会話術が、短いやり取りの中に凝縮された場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
field day は、もともと屋外で一日かけて行われる催しを指す言い方です。教室を出て校庭に集まった日、いつもの規則がゆるみ、誰もが伸び伸びと動き回る。その一日ぶんの解放感が、この表現の土台にあります。
そこに「格好の材料を見つけた人」が重なると、遠慮なく思う存分やる、という意味になります。運動会の日の校庭を思い浮かべて、そこに走り出す人を一人置いてみてください。走り出すのは、材料を手にした側です。
劇中でも、収集癖の告白を聞いた直後に、次に来る心理士が校庭へ駆け出す姿が浮かんでいました。誰かのひと言が、別の誰かにとっての運動会になる。この構図で覚えると、皮肉の色まで一緒に残ります。
例文で覚える「have a field day」
盛り上がるのが誰なのかを意識すると、使い方が安定します。3つの例文で見ていきましょう。
If the press finds out, they’ll have a field day.
(報道に知られたら、格好のネタにされるよ)
社内の問題について話し合う場面での一言です。この表現の代表的な使い方で、主語には the press や the media がよく置かれます。当事者にとっては、避けたい事態を予告される一言になります。
Critics will have a field day with this script.
(批評家はこの脚本を格好の的にするだろう)
作品の出来を心配するときの言い方です。with を添えると、何が材料になるのかが明示され、心配の中身がはっきりします。作品や企画を守る立場から出てくる、典型的な言い方です。
A: I fell asleep during the client meeting.
B: Oh no. The group chat is going to have a field day.
(A:クライアントとの打ち合わせ中に寝落ちした)
(B:うわ。グループチャットで散々いじられるやつだ)
同僚同士のやり取りです。盛り上がる側を主語にすることで、失敗した本人の気まずさが浮かび上がります。
あわせて覚えたい関連表現
go to town on
(徹底的にやる、思う存分取り組む)
熱の入れように焦点がある言い方です。今回のフレーズのように、他人の失敗を材料にするという含みは必ずしもありません。打ち込む姿勢そのものを肯定的に描くこともできます。
a field day for someone
(〜にとっての絶好の機会)
名詞句として使う形です。It was a field day for lawyers. のように状況を主語にできる点が、動詞句である今回の形との違いになります。新聞の見出しのような、短くまとめたい文でよく見かけます。
rub it in
(嫌なことを何度も蒸し返す)
相手を直接いたぶる行為に限定されます。今回のフレーズが持つ「大勢が一斉に盛り上がる」という広がりはありません。一対一のやり取りに限られるところも違いです。
Note|野外演習の日から、報道が飛びつく日へ
field day という言い方は、いまでこそ皮肉を含む場面で使われますが、もとは文字どおり「野外の日」を指す言葉でした。
辞書の説明でよく挙げられるのが、軍隊で行われた屋外演習の日という出発点です。兵士が兵舎を離れ、一日を屋外の訓練に費やす特別な日を指していたとされています。そこから意味が広がり、19世紀にかけては自然観察や野外調査の日、さらに学校で行われる屋外の競技会も field day と呼ばれるようになりました。現在でもアメリカの小学校では、学年末に校庭で競技を行う field day が広く定着しています。
いずれの場面にも共通しているのは、いつもの日課を離れて、その日だけは思うぞんぶん動き回れる、という性格です。この核が残ったまま比喩へ移り、「格好の機会を得て存分にやる」という意味が生まれたと説明されます。成立の時期や経路については辞書によって説明が分かれるため、断定はできません。
面白いのは、比喩になった途端に立場の非対称が生まれた点です。運動会そのものには勝者も敗者もいませんが、have a field day と言うとき、盛り上がる人と、材料にされる人がはっきり分かれます。報道が飛びつく場面で定型として使われるのも、この非対称があるからです。
劇中の使い方も同じ構図でした。専門家にとっての絶好の材料と、それを提供してしまった側。訳すときに「大喜びだろうね」と少し軽く響かせられるのは、この語が運動会の記憶を引きずっているからです。
楽しむ側と、楽しまれる側。同じ一日が、立つ位置で色を変えます。
まとめ|誰かの一言が、別の誰かの祭りになる
「have a field day」は、格好の材料を得た側が、それを思う存分に利用して盛り上がる状況を表す言い方です。もとにある「一日じゅう外で好きに動き回れる日」という感覚が、そのまま比喩に残っています。
報道が不祥事に飛びつく場面、仲間内で誰かの失敗が話題になる場面、批評家が作品を的にする場面。主語に「盛り上がる側」を置くだけで、当事者の気まずさまで一緒に伝わります。with を添えれば、何が材料になったのかまで一息で示せます。皮肉の色は、主語の置き方だけで生まれます。
材料を差し出した側にとっては、なかなか落ち着かない一日になりそうですね。


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