海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
厄介ごとを持ち込んだ相手がようやく席を立って、扉の向こうへ消えていく。その後ろ姿を見ながら、思わずほっと息をついた経験はありませんか。
そんなときの気持ちをそのまま言い表すのが「see the back of someone」です。『メンタリスト』シーズン4第17話の序盤、記者会見で容疑者を挑発したジェーンが、FBIの捜査官に連れられて出ていく場面で、リズボンがこの一言を口にします。二人のやりとりから、一緒に見ていきましょう。
「see the back of someone」の意味とニュアンス
see the back of someone
意味:その人がいなくなってせいせいする
直訳すると「誰かの背中を見る」。相手がこちらに背を向けて去っていく、その後ろ姿を見送っている場面を描いた言い方です。顔ではなく背中しか見えていない、つまりもう向き合わなくていい。そこから「やっと厄介払いできた」という安堵を表す表現になりました。
単独で使われることはほとんどなく、glad / happy / relieved といった感情を表す語とセットになります。be glad to see the back of ~ の形が最も一般的で、「~がいなくなって助かった」という意味になります。
目的語は人に限りません。長引いた仕事、うんざりする天候、手を焼いたシステムなど、離れたい対象であれば何にでも使えます。ただし、面と向かって相手に言う言葉ではありません。本人のいない場所で、あるいは軽口として親しい相手に向けて漏らす一言です。
否定形にすると向きが変わります。We haven’t seen the back of this yet. は「この件はまだ終わっていない」。厄介ごとがまだ去っていない、という言い方になります。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「もう顔を合わせなくていい」という、背中だけが見えている絵
- glad / relieved とセットで使うのが基本で、単独では立たない一言
- 面と向かっては言わない表現。本人のいない場で漏らす本音と覚えるのがコツ
『メンタリスト』S04E17のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
記者会見の場で、ジェーンは目をつけた企業経営者をわざと挑発し、殴らせて逮捕に持ち込みます。その後始末が丸ごと回ってきたリズボンのもとに、今度はFBIのダーシー捜査官が現れ、別の事件のためにジェーンを借りていくことになりました。上機嫌で出ていこうとするジェーンを見送りながら、リズボンが返した一言に、この表現が使われています。
Darcy: Thanks for lending him to me.
(彼を貸してくださってありがとうございます)Lisbon: My pleasure. Glad to see the back of him.
(どういたしまして。いなくなってくれてせいせいするわ)Jane: Oh, okay.
(へえ、そう)Lisbon: Well, bye. Bye. Just go and have fun.
(それじゃ、さようなら。せいぜい楽しんできて)Jane: I’m gonna have a great time. There’s my back. See you.
(最高に楽しんでくるよ。ほら、これが僕の背中。それじゃ)The Mentalist Season4 Episode17 (Cheap Burgundy)
シーン解説と心理考察
リズボンのこの一言は、本気の厄介払いではありません。直前まで、ジェーンが記者会見で容疑者を挑発して殴らせ、その後始末が自分に回ってきたところです。文句のひとつも言いたい気持ちが、送り出しの言葉の形を借りて出ています。
面白いのは、ジェーンがこれを正面から受け取らないところです。皮肉で返すのでもなく、傷ついた顔をするのでもなく、実際に背中を向けて「ほら、これが僕の背中」と見せる。慣用句を字義どおりに演じ返すことで、当てこすりが軽い冗談に変わっています。相手の言葉を素材にして遊んでみせる、ジェーンらしい返し方が表れています。
ダーシーの Thanks for lending him to me という言い方も見どころです。人を lend(貸す)の目的語に置くこの形が、ジェーンがチームの一員というより持ち回りの道具のように扱われている状況をやわらかく見せています。三人の立ち位置の違いが、短いやりとりに重なっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
出口に向かって歩いていく人を、部屋の内側から眺めている自分を想像してみてください。見えているのは顔ではなく背中だけ。もうこちらを向いていないし、話しかけられることもない。その「背中しか見えていない」状態が、この表現の中身そのものです。
日本語の「後ろ姿を見送る」には名残惜しさが混じりますが、英語のこの言い方は真逆で、肩の力が抜ける方向に働きます。同じ絵から反対の感情が出てくると押さえておくと、混同しません。
そして何より、ジェーンがくるりと背を向けて「ほら、これが僕の背中」とやってみせる場面ごと覚えてしまうのが早道です。フレーズの意味が、そのまま身振りになっている珍しい例と言えます。
例文で覚える「see the back of someone」
人にも物事にも使えて、否定形にすると意味が裏返る表現です。三つの場面で動かしてみましょう。
Three weeks of rain — I’ll be glad to see the back of this weather.
(三週間も雨続きで、この天気とはもう縁を切りたい)
天気の話でぼやくときの言い方です。人以外にも使えることがよくわかる形で、軽口として使いやすくなります。
Honestly, everyone was relieved to see the back of that software.
(正直なところ、あのシステムから解放されて全員ほっとしていました)
社内システムの入れ替えが終わったあとの振り返りです。glad 以外の感情語とも組める点が押さえどころです。
A: You seem lighter today.
B: My difficult neighbor moved out last week. I was glad to see the back of him.
(A:今日はなんだかすっきりしてるね)
(B:先週、面倒だった隣人が引っ越したんだ。いなくなってくれてほっとしたよ)
親しい相手に本音をこぼす会話です。本人のいない場だからこそ自然に響く、という使いどころが見えてきます。
あわせて覚えたい関連表現
get rid of someone
(追い払う、厄介払いする)
追い払う動作そのものを指す言い方で、自分が動いて相手を遠ざけるニュアンスがあります。see the back of は相手が去った結果を見届ける側の感情語で、自分が手を下したとは限らない点が違います。
good riddance
(せいせいした、厄介払いだ)
相手が去ったあとに吐き捨てる決まり文句で、敵意がはるかに直接的です。see the back of は文の一部に組み込めるぶん、当てこすり程度の軽さに収められます。
see the last of someone
(それきり会わずにすむ)
「これが最後」という終結の含みが強く、再会の可能性を打ち消す言い方です。see the back of は今回離れられたことへの安堵で、また会う可能性までは否定していません。
Note|大西洋をまたぐと変わる、厄介払いの言い方
同じ「いなくなってくれて助かった」でも、英語圏のどこで話されているかによって選ばれる表現が違います。see the back of someone も、そのひとつです。
この言い回しは、イギリスやアイルランド、オーストラリアの英語で特によく使われます。英国の新聞やスポーツ中継では、成績不振の監督が退任したときや、長引いた混乱がようやく終わったときに、glad to see the back of ~ という形が繰り返し現れます。一方、アメリカ英語の話し手が同じ気持ちを表すときは、good riddance や glad he’s gone、あるいは単に I’m glad that’s over が選ばれることのほうが多くなります。
とはいえ、この表現がアメリカで通じないわけではありません。イギリス英語由来の言い回しは映画やドラマを通じて広く共有されており、聞いて意味がわからない話し手はまずいないでしょう。自分から使う側に回るかどうかは別として、聞き取りの語彙として押さえておく価値があります。
このシーンでリズボンがこの言い方を選んでいることも、そう考えると読み方が変わります。good riddance のように吐き捨てるのではなく、ひとつ回りくどい言い回しで軽く刺す。皮肉をやわらかく包む選択が、そのまま彼女とジェーンの距離感を表しています。
同じ気持ちでも、どの言葉を選ぶかで人となりが見えてきます。
まとめ|リズボンの一言に見える距離の取り方
see the back of someone は、去っていく相手の背中を見ながら「やっと離れられた」と息をつく表現です。誰かを追い払う言葉ではなく、離れられた側の安堵を描く言葉だ、という向きの違いが核にあります。
glad や relieved とセットで使い、目的語は人でも仕事でも天候でもかまいません。否定形にすれば「まだ終わっていない」に反転します。この二つを押さえておけば、会話でもニュースでも取り違えずに読み取れます。
厄介ごとがようやく片づいたときの、ほっとした気持ちを一言で伝える表現として、表現の引き出しに加えてみてください。


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