「throw someone off the trail」の意味と使い方|『メンタリスト』S04E17で学ぶ英会話

「throw someone off the trail」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

話しているうちに、いつのまにか本題からずれていた。あとで振り返って、あれは意図的にそらされたのかもしれない、と気づく。そんな瞬間が会話には時々あります。

その「そらす」を一語で言い表すのが「throw someone off the trail」です。『メンタリスト』シーズン4第17話の終盤、森の中でダーシー捜査官がジェーンに詰め寄る場面で、この表現が使われます。追う側と追われる側が入れ替わるやりとりを、一緒に見ていきましょう。

目次

「throw someone off the trail」の意味とニュアンス

throw someone off the trail
意味:追跡をかわす、相手の目を別の方向へ逸らす

trail は獲物が地面に残した跡のこと。猟犬がその跡をたどって進むところを、途中で断ち切って別の方向へ放り出す。この絵から生まれた言い方です。

大事なのは、ただ隠れることではないという点です。相手の向きそのものを変えてしまう、能動的な操作を指します。痕跡を残したままでも、相手が別の方向を向いてくれれば目的は果たされます。

主語は逃げる側とは限りません。第三者が誰かを誤らせる場合にも使えますし、意図せず結果的にそうなってしまった場合にも使えます。She threw me off the trail. と言えば、彼女の話し方のせいで見当違いの方向へ行ってしまった、という意味になります。

throw のかわりに put を使う put someone off the trail、trail のかわりに scent を使う put someone off the scent も、ほぼ同じ意味で使われます。

【ここがポイント!】

  • 猟犬がたどる跡を断ち切って、別の方向へ放り出す絵が核にある表現
  • 隠れるのではなく、相手の向きを変えるという能動的な操作を指す一言
  • 意図せずそらしてしまった場合にも使えるので、責める文脈とは限らないのがコツ

『メンタリスト』S04E17のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

FBIのダーシー捜査官は、捜査への協力を口実にジェーンを呼び寄せていました。本当の目的は事件ではなく、ジェーン自身を近くで観察することにあります。それを見抜いたジェーンが芝居をやめさせると、ダーシーも取り繕うのをやめ、正面から本題を切り出します。追及の言葉に、この表現が使われています。

Darcy: Red John is alive, and you know it.
(レッド・ジョンは生きている。あなたも分かっているはずです)

Jane: Well, that’s a theory.
(まあ、それはひとつの説だね)

Darcy: It’s a fact. And the only question is, why would you deny it? Why would you try and throw me off the trail? I realized something. You’re not hunting Red John, you’re protecting him. That’s why you claim he’s dead.
(事実です。問題は、なぜあなたが否定するのか。なぜ私の目を逸らそうとするのか。気づいたんです。あなたはレッド・ジョンを追っているのではなく、かばっている。だから死んだと言い張る)

Jane: That’s absurd.
(ばかげているよ)

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シーン解説と心理考察

ダーシーのこの言葉は、非難であると同時に告白でもあります。throw me off the trail と言った時点で、彼女は自分が跡をたどらされる側にいたと認めていることになる。追う立場のはずが、実は導かれていたかもしれない。その悔しさがこの一言に重なっています。

ジェーンの返し方も対照的です。That’s a theory. と受け流し、That’s absurd. と切り捨てる。どちらも短く、内容には踏み込みません。真正面から否定していないのに、話を進ませない。この受け答えの薄さが、かえって相手の疑いを強めていく構図になっています。

場所の選び方も効いています。森の中、車の前という開けた場所で、二人だけが向かい合う。取調室でも執務室でもないところに置くことで、公的な追及ではなく個人と個人のぶつかり合いとして描かれています。役職の後ろに隠れられない状況が、二人の会話をやわらかく見せています。

『メンタリスト』流・覚え方のコツ

地面に残ったにおいの跡を、鼻先でたどっている猟犬を思い浮かべてみてください。その跡が途中で川に入り、ふっつり途切れる。犬は跡を見失い、まったく別の方向へ走り出していきます。

この「跡が断たれて、向きがずれる」という二段構えが、フレーズの中身です。単に姿を消す hide とは働きが違い、相手を動かしてしまうところまで含んでいます。throw という乱暴な動詞が選ばれているのも、静かに消えるのではないからです。

劇中でダーシーがこの言葉を使うとき、彼女は自分を猟犬の側に置いています。追っていたはずが導かれていた、という立場の入れ替わりごと覚えておくと、この表現が持つ悔しさの温度まで一緒に思い出せます。

例文で覚える「throw someone off the trail」

追跡にも、会話の脱線にも、企業の戦略にも使えます。三つの場面で動かしてみましょう。

He changed his phone number to throw them off the trail.
(彼は追跡をかわすために電話番号を変えた)
小説やドラマのあらすじを説明する場面です。to 不定詞で目的を示す、いちばん基本的な形になります。

The company released a decoy product to throw competitors off the trail.
(その会社は競合の目を逸らすために囮の製品を出した)
企業戦略の解説記事などで見かける使い方です。decoy(囮)と組み合わせると、意図的な撹乱であることがはっきりします。

A: I still don’t understand what she actually meant.
B: She kept changing the subject. It threw me off the trail too.
(A:結局、彼女が何を言いたかったのかまだ分からない)
(B:話題を変え続けてたからね。こっちも見当違いの方向へ行かされたよ)
はぐらかされたと後から気づく会話です。物理的な追跡でなくても使える、日常寄りの用法が見えてきます。

あわせて覚えたい関連表現

put someone off the scent
(においの跡を外させる、目をくらます)
同じ狩りの絵を使う、イギリス英語寄りの言い方です。trail が地面に残る跡なのに対し、scent はにおいそのもの。焦点がわずかにずれますが、意味はほぼ重なります。

cover one’s tracks
(自分の痕跡を消す)
主語は隠す本人で、相手を誤らせるのではなく証拠そのものを消します。throw off the trail は相手の向きを変える操作なので、痕跡を残したままでも成立する点が違います。

a red herring
(気を逸らすための偽の手がかり)
名詞で「囮そのもの」を指し、逸らす動作は表しません。throw off the trail が行為だとすれば、こちらはそのために使う道具にあたります。

Note|狩りの語彙が、捜査の語彙になるまで

throw someone off the trail の trail は、もともと引きずった跡や踏み分けられた道を指す語でした。狩りの場では、獲物が地面に残した跡を意味します。

英語の捜査ものを見ていると、狩りに由来するとされる言葉が驚くほど多く出てきます。hot on the trail は跡が新しく、追いつきそうな状態。on the scent なら、においをたどっている最中。lose the scent は跡を見失うことで、追跡が途切れた場面で使われます。犯人を追い詰める場面の at bay も、猟犬に追い詰められた獲物の姿に結びつくとされる言い方です。

こうした語は、足跡やにおいをたどって獲物を追う狩りの構図を、人や手がかりを追う場面へ重ねています。現代では実際の狩猟を意識せずに使われることが多くても、「追う側」と「追われる側」という位置関係は比喩の中に残っています。

同じ場面に別の由来の語が混じっているのも面白いところです。この回の捜査会議では dead-end という道路由来の言い方が出てきますし、red herring という燻製ニシンに由来するとされる語も、捜査ものの定番として定着しています。狩りの跡、道路の行き止まり、魚のにおい。出どころの違う比喩が、同じ「行き止まりと撹乱」の語彙群を作っています。

ダーシーが throw me off the trail と口にするとき、彼女はもちろん猟犬を思い浮かべてはいません。それでも、この語を選んだ瞬間、彼女は自分を追う側に置き、相手を追われる側に置いています。比喩は薄れても、立場の割り振りだけはしっかり残っているわけです。

言葉が生まれた場所は消えても、その構図だけが残り続けます。

まとめ|追う側が、追われていたと気づくとき

throw someone off the trail は、相手がたどっている跡を断ち切って、別の方向へ向かわせる表現です。隠れるのではなく、相手を動かす。この能動性が、似た表現との分かれ目になります。

追跡や捜査だけでなく、会話をはぐらかされた場面や、企業が競合の目を逸らす場面にも使えます。意図せずそうなってしまった場合にも使えるので、責める言葉としてだけ覚えると使いどころを狭めてしまいます。

追っていたはずの人が、実は導かれていたのかもしれない。そんな立場の揺らぎが、静かな森の中で交わされた一言に透けて見える場面でした。

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