海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『モダンファミリー』シーズン8第10話は、家族が集まる元日の一日を描きます。ミッチェルにせかされたジェイとグロリアが遺言の書類に取りかかり、自分たちに万一のことがあったらジョーを誰に託すかを話し合います。
縁起でもない話ほど、切り出し方や決め方に言葉の工夫が要るものです。この回には、仮定の前置きから候補の挙げ方、迷いを断ち切る一言までがそろっています。
「God forbid」と前置きして切り出す
話のきっかけは、ちょっとした騒ぎのあとのミッチェルの一言です。ミッチェルは、前からジェイに estate planning をせかしてきたと口にします。estate planning は、遺言や財産の分け方などを前もって決めておくことを指す言い方です。そこへクレアが加わります。
Claire: Dad, you still haven’t done that?
(パパ、まだやってないの?)Mitchell: They haven’t updated their paperwork since Joe was born.
(ジョーが生まれてから書類を更新してないんだ。)Mitchell: Uh, God forbid something bad should happen to them we don’t even know who’d they want to raise Joe.
(その、縁起でもないけど、もし二人に何かあったら、ジョーを誰に育ててほしいのかも分からないんだよ。)Modern Family Season8 Episode10 (Ringmaster Keifth)
God forbid ~ should happen は「〜なんてことがあってはならないが」と前置きしながら、起きてほしくない事態を仮定する言い方です。should を入れると「万が一」の響きが加わります。update their paperwork は「書類を最新の状態に直す」で、家族が増えたのに手続きが追いついていない様子が伝わってきます。
ジェイはその日のうちに取りかかると決め、prepare for the worst(最悪の事態に備える)という言い方で、新年の始め方としては皮肉だと言わんばかりの一言を添えます。のちに書類を前にしたジェイとグロリアの会話がこちらです。
Jay: What about these will questions? If something happens to us, who should raise Joe?
(この遺言の質問はどうする? 俺たちに何かあったら、誰がジョーを育てるべきか。)Gloria: No, Jay, don’t say that.
(やめて、ジェイ、そんなこと言わないで。)Jay: All right, look.
(分かった、いいか。)Jay: If someone other than us needs to raise Joe, I vote Mitch and Cam.
(俺たち以外の誰かがジョーを育てなきゃならないなら、俺はミッチとキャムに一票だ。)Modern Family Season8 Episode10 (Ringmaster Keifth)
If something happens to us は「私たちの身に何かあったら」で、はっきりした言葉を避けて万一を示す言い回しです。グロリアの don’t say that は口にすること自体を止める返しで、ジェイの I vote ~ は「〜に一票」と自分の推しを示す言い方と言えます。
候補を挙げて、迷いを口にする
場面が進むと、グロリアが別の候補を挙げます。
Gloria: What about Phil and Claire to take care of Joe?
(ジョーの面倒を見るのに、フィルとクレアはどう?)Jay: I don’t know.
(どうかな。)Jay: Isn’t Phil kind of silly?
(フィルはちょっとふざけすぎじゃないか?)Gloria: What are you talking about? Phil is a great father.
(何言ってるの? フィルは素晴らしい父親よ。)Gloria: He’s kind.
(優しいし。)Gloria: He’s fun.
(楽しいし。)Gloria: Even Lily likes him.
(リリーだってフィルが好きなのよ。)Modern Family Season8 Episode10 (Ringmaster Keifth)
What about A to ~? は「〜するのにAはどう?」と候補を差し出す形です。ジェイの Isn’t ~ kind of silly? は否定疑問で、「ちょっとふざけすぎじゃないか」と同意を求めながら不安を出しています。kind of が入ることで、言い切りを避けた柔らかい言い方になります。グロリアの What are you talking about? は、相手の言い分を真っ向から打ち消すときによく使われる返しと言われます。
このあとジェイは gravitas(重み、貫禄)が足りないのではと食い下がりますが、グロリアに jealous なのかと問われると、ばかげているのは分かっていると認めます。候補への不安の裏に、自分の気持ちが混じっていたと分かるやり取りです。続けてジェイは、クレアを role model(手本となる人)として高く評価します。一方のグロリアは、フィルとクレアはもう子育てを終えたのだから旅行を楽しむ時期だと言い、二人を候補から外す理由を挙げます。
人選の話では、候補の長所を並べる言い方と、ためらいを和らげて伝える言い方が交互に出てきます。kind of や否定疑問のような小さな工夫が、話し合いの角を丸くしているのが分かります。
「overthinking」を打ち切り、名乗り出る
決めあぐねる二人のもとにミッチェルが加わり、質問を一気に進めます。
Mitchell: We got to lightning round these forms.
(この書類は早押し方式で片づけよう。)Mitchell: You guys are overthinking this.
(二人とも考えすぎなんだよ。)Mitchell: Everybody knows in their heart what they want.
(誰だって心の中では自分がどうしたいか分かってる。)Mitchell: They just feel bad about making the decision.
(ただ、決めることに気がとがめてるだけなんだ。)Mitchell: So, who will be the executor of your estate? Go.
(じゃあ、遺産の執行者は誰にする? はい。)Jay: You.
(お前だ。)Mitchell: Aww.
(わあ。)Modern Family Season8 Episode10 (Ringmaster Keifth)
lightning round は、クイズ番組などで短い時間に次々と答える回を指す言い方で、ここでは動詞のように使われています。overthink は「考えすぎる」、know in one’s heart は「心の底では分かっている」です。feel bad about ~ing は「〜することに気がとがめる」で、決められない理由を責めずに言い当てています。executor は、遺言の内容を実行する役目の人を指す語です。さらに質問が進むと、名乗り出る人物が現れます。
Mitchell: Um, who do you want as Joe’s legal guardian? No, no, don’t think.
(えっと、ジョーの法的な後見人は誰がいい? いや、考えないで。)Mitchell: Just answer, okay? If something happens to both of you, who do you want to take care of Joe?
(とにかく答えて、いい? もし二人ともに何かあったら、ジョーの面倒を誰に見てほしい?)Manny: Me, obviously.
(もちろん僕さ。)Gloria: Ay, Manny, you’re too young.
(アイ、マニー、あなたは若すぎるわ。)Gloria: Besides, you’re about to start your new life soon.
(それに、もうすぐ新しい生活が始まるんだから。)Modern Family Season8 Episode10 (Ringmaster Keifth)
legal guardian は、親に代わって子どもの面倒を見る法的な立場の人を指します。マニーの Me, obviously. は「当然僕でしょ」と迷いなく名乗る短い答えです。このあとマニーは、ナニーを雇う(hire a nanny)、家を売って小さな住まいに移る(downsize to a condo)と案を並べ、The main thing is, ~(大事なのは〜だ)の形で、ジョーは自分の弟だという理由の核を一言で示します。あまりに考え抜かれた計画に、ジェイが落ち着かない様子を口にするのも面白いところです。
まとめ|縁起でもない話を進める言葉
God forbid や If something happens to us で万一を切り出し、I vote ~ や What about ~? で候補を挙げ、overthinking と言って迷いを打ち切る流れが見られます。言いにくい話し合いを前に進める言葉が、この回の家族会議に詰まっています。
次に『モダンファミリー』を観るときは、家族が言葉を選びながら大事なことを決めていく様子にも注目してみると発見があります。
父と息子が冗談の形で本音を伝える場面や、元日の集まりの英語は同じ回のほかのコラムで、個々の表現の使い方はフレーズ記事で読めます。


コメント