海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『モダンファミリー』シーズン9第12話では、入院中のフィルが、クレアとの思い出が詰まったクマのぬいぐるみの由来を語ります。そのぬいぐるみをめぐって、夫婦のちょっと噛み合わない電話の会話も交わされます。
思い出の品について話すとき、英語ではどう話を運び、どう締めくくるのか。失敗の重ね方から相づちの打ち方まで、この回にはそのための材料が一通りそろっています。
「no dice」と「it happened」で、失敗続きの思い出を語る
フィルは、交際していたころのある出来事をこう振り返ります。
Phil: Our first year dating, we went to a carnival.
(付き合い始めて1年目に、カーニバルに行ったんだ。)
Phil: At the milk-can toss, there was a bear that Claire really liked.
(ミルク缶倒しのところに、クレアがすごく気に入ったクマがあってさ。)
Phil: I spent all night trying to win it, but I just couldn’t.
(ひと晩中取ろうと頑張ったけど、どうしても取れなかった。)
Phil: Came back the next night and the carnival had left town.
(次の晩にまた行ったら、カーニバルはもう町を出てた。)
Phil: So, I drove to Fresno, failed again.
(だからフレズノまで車で行って、また失敗。)
Phil: Sacramento, no dice.
(サクラメントでも、だめ。)
Phil: Six weeks later, in Carson City, Nevada, it happened.
(6週間後、ネバダ州のカーソンシティで、ついにその時が来た。)Modern Family Season9 Episode12 (Dear Beloved Family)
話の出だしの Our first year dating は、「付き合って1年目のころ」と時期を最初に示す言い方です。いつの話かを先に置くことで、聞き手は昔話の始まりだと受け取れます。
I spent all night trying to ~ は「ひと晩中〜しようとした」と、費やした時間で努力の大きさを伝える形です。spend + 時間 + ~ing は、I spent the weekend cleaning.(週末は掃除で終わった。)のように日常でも使える組み合わせです。
後半は文が短くなっていきます。Came back the next night では主語の I が省かれ、Sacramento, no dice. では動詞すらありません。no dice は「だめだった」「うまくいかなかった」を表すくだけた言い方で、地名と結果だけを並べるリズムが、失敗が重なっていった様子を伝えています。
最後の it happened は、何が起きたかをあえて言わずに「ついにやった」と山場を示す言い方です。それまでの失敗の連続があるからこそ、短い一言が成功の場面として響きます。
「on the spot」で、思い出話を締めくくる
クマを手に入れたあとの出来事を、フィルはこう続けます。
Phil: When I handed it to her and saw the smile on her face, I proposed to her on the spot.
(それを渡して彼女の笑顔を見た瞬間、その場でプロポーズしたんだ。)Modern Family Season9 Episode12 (Dear Beloved Family)
on the spot は「その場で、すぐに」という意味で、迷うことなく何かをしたことを表します。She was hired on the spot.(彼女はその場で採用された。)のように、面接や決断の場面で使われることもある表現です。
the smile on her face は「彼女の顔に浮かんだ笑顔」で、smile に on one’s face を添えると、その瞬間の表情を目に浮かぶように描けます。When I ~ and saw ~, I … と、きっかけになった動作を前半に重ね、結果を後半に置く組み立てが、話の締めにふさわしい流れをつくっています。
When I opened the box and saw the letter, I called her right away.(箱を開けて手紙を見たとき、すぐに彼女に電話した。)のように、自分の思い出話の山場にもそのまま応用できる形です。
失敗を短く刻んで重ね、山場を it happened で示し、最後に on the spot で一気に結末へ運ぶ。前の引用とあわせて読むと、思い出話を聞き手に届ける話の運び方が分かります。
品物を人のように語る会話と、話を合わせる相づち
別の場面で、クレアはこのクマを探し回りますが、なかなか見つかりません。そんなクレアに、フィルからこう尋ねられます。
Phil: Hey, honey, did you find Surgery Bear?
(やあハニー、サージェリー・ベアは見つかった?)
Claire: Uh yeah, sure did.
(えっと、うん、見つけたわよ。)
Claire: He’s He’s right here with his beautiful blue eyes.
(ここ、ここにいるわよ。きれいな青い目をして。)
Phil: I always considered them hazel, but who could tell underneath those sunglasses?
(俺はずっとヘーゼルだと思ってたけど、あのサングラスの下じゃ分からないよな?)
Claire: Sunglasses.
(サングラス。)
Claire: Right.
(そうね。)Modern Family Season9 Episode12 (Dear Beloved Family)
sure did は Yes, I did. を強めたくだけた返事で、「もちろん見つけた」という調子になります。ところがクレアの blue eyes に対して、フィルは目の色を違うように説明し、サングラスの話まで付け加えます。クレアは Sunglasses. と繰り返し、Right. で話を合わせています。やりとりの中で、フィルはクマの「人物像」をさらに語ります。
Phil: I mean, I hate surfing.
(つまり、俺はサーフィンが大嫌いだろ。)
Phil: But it makes sense that a fireman would love it.
(でも消防士なら、サーフィンが好きでも不思議じゃない。)
Claire: Yes, of course.
(ええ、もちろん。)
Phil: In my mind, he’s a volunteer fireman during the summer because professors have those off.
(俺の頭の中では、あいつは夏のあいだだけボランティアの消防士なんだ。教授は夏休みがあるからね。)
Claire: Professors have Yes.
(教授には……そうね。)Modern Family Season9 Episode12 (Dear Beloved Family)
In my mind, ~ は「自分の頭の中では〜」と、自分だけの想像や設定を語るときの前置きです。フィルにとってこのクマは、目の色や趣味、仕事まで持った一人の人物として語られています。he や his と人称代名詞で呼んでいる点も、品物を人のように扱う語り方の表れです。クレアの Yes, of course. や、言いかけて Yes で切る返事は、相手の話に合わせて相づちを打つ形です。思い出の品を人のように語る言葉と、話の中身を知らないまま合わせる相づちが、同じ電話の中に並んでいるという場面です。
まとめ|思い出の品を語る英語
I spent all night trying to ~、no dice、it happened、on the spot で思い出話を運び、In my mind で品物を人のように語り、sure did や Right. で話を合わせる流れを見ました。品物一つから、話の組み立て方が見えてきます。
『モダンファミリー』の夫婦の会話を観ながら、昔話の語り口に耳を傾けると、英語の物語の運び方もつかみやすくなります。
同じ回のほかのコラムでは、誘いを断る側と引く側の英語や、人目を気にする相手への声のかけ方も取り上げています。


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