海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
したくてしたわけではないけれど、他に道がなくて動くしかなくなる瞬間が、ドラマには時々あります。
そんなときに使える「have no choice but to」を、『モダンファミリー』シーズン10第6話の中盤、講座を守るために取った行動をフィルが振り返る語りの中から、過去形の形で一緒に見ていきましょう。
「have no choice but to」の意味とニュアンス
have no choice but to
意味:〜するしかない、〜せざるを得ない
have no choice but to は、他に選べる道がなく、その行動を取るしかない状況を表す表現です。no choice が「選択肢がない」、but が「〜以外は」、to のあとの動詞が「唯一の行動」を示します。直訳すると「〜すること以外の選択肢を持たない」となり、日本語の「〜するしかない」「〜せざるを得ない」と重なります。
but を「しかし」と読んでしまうと意味がつかみにくくなりますが、この but は「〜を除いて」という意味で使われています。「to 以外の choice はない」と読むと、to のあとの動作だけが残る形だとわかります。to のあとには動詞の原形が続きます。
この表現には、「やりたくはないけれど」「事情に押されて」という気持ちが背景に入りやすいのも特徴です。自分から進んで選んだ行動というより、状況がそうさせたと説明する言い方になるため、事情の説明や、理由を添えた決断の報告に向いています。日本語に直すときは、会話では「〜するしかない」、文章や改まった場面では「〜せざるを得ない」と選ぶと、場面に合った訳になります。
【ここがポイント!】
- 「have no choice but to」の核は、一本道しか残っていない状況のイメージ
- but は「しかし」ではなく「〜以外は」の意味で、to のあとに動詞の原形が続く形
- 時制に合わせて have の部分が had や will have に変わるのがコツ
『モダンファミリー』S10E06のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
フィルが、自分の講座で起きた出来事を振り返って語る場面です。生徒たちの笑い声がいつもより一人分少なく聞こえたことから、ペイジ・スティーブンスという生徒の様子に気づきます。語りの最後に出てくる一言に注目です。
Phil: It had become a familiar sound my 18 devoted students laughing as one.
(それはすっかりおなじみの音になっていた。俺の熱心な18人の生徒たちが、そろって笑う声だ。)Phil: Only something was different this time.
(ただ、今回は何かが違っていた。)Phil: It sounded like 17.
(17人分に聞こえたんだ。)Phil: Could it be that I had a wobbler in my midst? Sure enough, Paige Stevens was going through the course catalog.
(ひょっとして、俺の生徒の中に気持ちがぐらついてる者がいるのか? 案の定、ペイジ・スティーブンスが講座の一覧に目を通していた。)Phil: If I lost her, I’d be below my minimum and lose the class.
(彼女を失えば、最少人数を割って、講座そのものを失ってしまう。)Phil: For the sake of those 17 dreamers, I had no choice but to unleash the Dunphy charm.
(その17人の夢見る生徒たちのために、俺はダンフィー流の魅力を全開にするしかなかった。)Modern Family Season10 Episode6 (On the Same Paige)
シーン解説と心理考察
フィルの語りは、笑い声の数という小さな違和感から始まります。18人が一緒に笑うはずの音が、17人分にしか聞こえません。そこから「気持ちがぐらついている者がいるのか」と考え、ペイジ・スティーブンスが講座の一覧に目を通している様子を見つけます。18と17という数字を並べて、人数が一人分減った状況を具体的に示す言い方になっています。
そのあとに続くのは、状況を一つずつ積み上げる流れです。彼女がいなくなれば最少人数を割り、講座そのものを失ってしまいます。だから残る17人のために、「ダンフィー流の魅力」を使うほかなかった、と結びます。理由を先に並べてから had no choice but to で結論を置くことで、他に道がなかったという説明がそのまま筋道になっています。
「ダンフィー流の魅力を全開にする」という言い回しも見どころです。魅力を「解き放つ」と大きく言い切る言葉選びが、深刻な状況をどこか大げさに語る語り口を作っています。講座を失うかもしれないという状況と、自分の魅力を頼りにする言い方の大きさが、同じ文の中に並んでいます。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
分かれ道のない一本道を歩く場面に置き換えると、形が頭に入りやすくなります。no choice は分かれ道が1つもないこと、but は「この道以外は」という目印、to のあとの動作がその一本道そのもの、という見立てです。
フィルの語りも、笑い声が17人分に聞こえたところから講座を失う危機までを一本の道として並べ、その先に「魅力を全開にする」という行動だけを置いていました。道の前に理由を並べておくほど、「そうするしかなかった」という言葉に説得力が出ます。例文を作るときも、先に事情を1つ置いてから had no choice but to を続けると、形が自然に決まります。
例文で覚える「have no choice but to」
現在、過去、未来の形を取り混ぜながら、3つの例文で確認していきましょう。
The flight was canceled, so we had no choice but to stay another night.
(便が欠航になったので、もう一泊するしかありませんでした。)
旅行中の予定変更を説明する場面です。so のあとに結果を続けると、「他に道がなかった」という流れが自然につながります。
If the budget doesn’t increase, we’ll have no choice but to cancel the project.
(予算が増えなければ、私たちはそのプロジェクトを中止せざるを得なくなります。)
会議で今後の見通しを伝える場面です。if の条件を前に置き、未来の形の will have で「そうなったらそうするしかない」と述べています。
A: Why did you sell your car?
B: I had no choice but to. I couldn’t afford the repairs.
(A:どうして車を売ったの?)
(B:そうするしかなかったんだ。修理代が払えなくてね。)
事情を聞かれて答える往復会話です。to のあとの動詞は、直前の質問で内容がわかっているので省略されています。質問の中に sell your car とあるので、省いても何をしたのかが相手にそのまま伝わります。この形は、理由だけを短く添えて答えたいときに収まりがよい言い方です。
あわせて覚えたい関連表現
have no other option but to
(〜するほか選択肢がない)
choice を option に置き換えた言い方で、意味はほぼ同じです。choice の代わりに option を使うと、説明の調子が少し事務的になります。other が加わる分、「ほかに」という意味がはっきり出ます。
be forced to
(〜せざるを得なくなる、強いられる)
外から強制された側面を強く出す表現です。have no choice but to は、他に道がない状況そのものを述べる点が違います。
have little choice but to
(〜するしかほとんど選択肢がない)
little を使うと、選択肢がほとんどない、と少し弱めた言い方になります。no は選択肢がまったくない、という言い切りです。
Note|have・had・will have で変わる、「するしかない」の時間の置き方
have no choice but to は、いつの話をするかによって、最初の have の部分だけが形を変えます。
今の状況なら I have no choice but to leave now. で、「いま帰るしかない」という意味です。過去のことなら I had no choice but to leave. で、「帰るしかなかった」となります。これから先の見通しを述べるなら I’ll have no choice but to leave. で、「帰るしかなくなる」という言い方です。主語が3人称なら、The store has no choice but to raise its prices. のように has の形を取ります。どの時制でも変わらないのは、but to のあとに動詞の原形が続く点です。to のあとには、そうするしかない行動をそのまま置くので、leave や stay や cancel のような動詞が直接続きます。
フィルが語った I had no choice but to unleash the Dunphy charm は、過去形の形でした。起きた出来事を振り返りながら「そうするしかなかった」と述べているので、日本語に直すと「〜するしかなかった」と過去の言い方になります。現在形で同じことを言えば「〜するしかない」、未来の形なら「〜せざるを得なくなる」と訳し分けられます。
形が変わるのは最初の部分だけで、but to 以降は変わりません。そう押さえておけば、時制に迷わず使えます。
まとめ|フィルの語りから学ぶ、「他に道がない」の伝え方
have no choice but to は、他に選べる道がなく、その行動を取るしかない状況を表す表現です。but は「〜以外は」の意味で、to のあとに動詞の原形が続きます。
フィルが、笑い声の数の違和感から講座を失う危機まで、状況を一つずつ並べたうえで「魅力を全開にするしかなかった」と結んだように、先に理由を示してからこの表現を置くと、事情の説明がすっきり伝わります。現在なら have、過去なら had、未来なら will have と形を変えれば、いつの話にも使えます。
17人分に聞こえた笑い声から、ダンフィー流の魅力を解き放つまでの一本道を、ひと息に語りきる一言が had no choice but to でした。


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