海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
相手が大事な話をしている最中に、どうしても確かめたいことが頭に浮かんで、切り出しにくさを感じる。そんな場面があります。
そんなときの前置きとして、「I don’t want to be that guy, but」を、『モダンファミリー』シーズン8第6話の後半、ジェイが自分の居場所について語っている最中に、フィルが問いかける一言から、一緒に見ていきましょう。
「I don’t want to be that guy, but」の意味とニュアンス
I don’t want to be that guy, but
意味:嫌なやつになりたくないんだけど、言いにくいんだけど
I don’t want to be that guy, but は、このあと言うことが相手に嫌がられたり、水を差したりするかもしれないと分かったうえで、先に断りを入れる前置きです。直訳は「あの手の人にはなりたくないが」です。
that guy の that は、「あの」と特定の人を指しているのではなく、思い浮かべられるある種の人を指しています。ここでは、場の空気を読まずにうるさいことを言う人、催促ばかりする人のような、話し手が避けたい人物像です。その人物像にはなりたくない、と先に断っておくことで、続く用件を切り出しやすくします。
but のあとには、実際に伝えたいことが入ります。音量の注意、時間の指摘、期限の催促、席の確認のように、相手にとって耳が痛いかもしれない内容が合います。前置きと本題の落差が、この表現の骨組みです。
訳語は、「嫌なやつになりたくないんだけど」「言いにくいんだけど」「水を差すようで悪いけど」を、場面に合わせて選びます。「あの男にはなりたくない」と直訳すると、特定の人物の話に聞こえてしまいます。
【ここがポイント!】
- 「I don’t want to be that guy, but」の核は、言いにくいことを言う前に先に断る前置き
- that guy は特定の人ではなく、避けたい人物像を指す言い方
- but のあとに、指摘や催促、頼みごとなどの本題が続く形
『モダンファミリー』S08E06のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ジェイが、フィルに向けて、家族と分け合わなくていい自分だけの場所について語る場面です。その話の途中に、フィルが別の問いを挟みます。ジェイは問いに答えず、自分の話を続けます。フレーズは、フィルが問いを切り出す冒頭に出てきます。
Jay: But this is the only place I have left that I don’t have to share with my family.
(だがここは、家族と分け合わなくていい、俺に残された唯一の場所なんだ。)Phil: I don’t want to be that guy, but did you send that text yet?
(嫌なやつにはなりたくないんだけど、例のメッセージはもう送った?)Jay: The one place I feel special they call me “Ace” and “Jay Boy” and “Pritch.” I’m not comfortable other places, okay? But you you fit in everywhere. The whole world is your club! But I have this place! You get that, right?
(ここだけなんだ、俺が特別だと思える場所は。みんな俺を「エース」「ジェイ坊や」「プリッチ」と呼ぶ。ほかの場所では居心地が悪いんだよ、わかるか? だがおまえはどこにでもなじめる。世界中がおまえのクラブだ! だが俺にはここしかないんだ! わかるだろ?)Modern Family Season8 Episode6 (Grab It)
シーン解説と心理考察
ジェイは this is the only place I have left と、残された唯一の場所だと言います。続く that I don’t have to share with my family は、家族と分け合わなくていい、という条件です。自分の居場所への思いを、フィルに語っている台詞です。
そこへフィルが、I don’t want to be that guy, but と前置きを置きます。この前置きは、本題が相手の話の流れとは別の用件であることを、あらかじめ予告する働きをしています。did you send that text yet? で、メッセージを送ったかどうかを尋ねます。yet は「もう」という意味で、疑問文では、すでに済んだかどうかを確かめる語です。
ジェイは、この問いには触れません。The one place I feel special と、同じ話題に戻り、「エース」「ジェイ坊や」「プリッチ」という呼び名を挙げます。I’m not comfortable other places, okay? の okay? は、相手に理解を求める確認の言い方です。
さらに、you fit in everywhere と、フィルはどこにでもなじめると言い、The whole world is your club! と続けます。そのうえで But I have this place! と、自分の場所はここしかないと念を押し、You get that, right? で締めます。ジェイの長い語りに対して、フィルの問いは短く、二人の関心の向きの違いが表れています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
道の真ん中に、小さな「一旦停止」の標識が立っているとします。前置きは、本題に進む前の、一旦停止です。「これから言いにくいことを言うよ」と、先に止まって知らせてから進みます。
フィルの前置きを、この標識に見立てると読みやすくなります。ジェイが語る話の流れの中に、標識を1本立ててから、メッセージの話に進んでいます。標識があるかないかで、相手が受ける衝撃が変わります。同じ質問でも、前置きを添えれば、聞かれる側が身構える時間を作れます。前置きの長さは短くても、働きは十分に果たせます。
言いにくいことを言う前に、先に標識を1本。I don’t want to be that guy, but を、一旦停止の標識として頭に置いておけば、使いどころを迷いません。
例文で覚える「I don’t want to be that guy, but」
耳が痛いかもしれない一言の前に置く、控えめな前置きとして働く場面を、3つの例文で見てみます。
I don’t want to be that guy, but could you turn the music down a little?
(うるさいことを言いたくないんだけど、音楽を少し小さくしてもらえる?)
隣人や同僚に頼みごとをする日常の場面です。but のあとに could you …? の依頼を置くと、柔らかい頼み方になります。
I don’t want to be that guy, but we’re already ten minutes over.
(水を差すようで悪いけど、もう10分超過してるよ。)
会議の時間を指摘するビジネスの場面です。but のあとに事実を置くだけで、指摘が角の立たない形になります。
A: I don’t want to be that guy, but I think this is my seat.
B: Oh, sorry! I didn’t see the ticket.
(A:言いにくいんだけど、ここは私の席だと思うんだ。)
(B:あ、ごめん! チケットを見てなかった。)
席を確認し合う、見知らぬ人同士の往復の会話です。I think を添えると、決めつけない言い方になります。
あわせて覚えたい関連表現
I hate to bother you, but
(お手数をかけて悪いけど)
I hate to bother you は、相手に手間をかけることへの遠慮を表します。I don’t want to be that guy は、うるさい人だと思われることへの遠慮を表す前置きです。
I don’t mean to be rude, but
(失礼なことを言うつもりはないけど)
I don’t mean to be rude は、きつい言い方になることへの前置きです。that guy を使う形は、具体的な人物像を挙げて、嫌われ役を引き受けたくないと言う点が違います。
Sorry to be a pain, but
(面倒をかけてごめんだけど)
Sorry to be a pain は、気軽な依頼や催促に向く言い方です。I don’t want to be that guy は、注意や指摘の色合いが濃い前置きです。
Note|「that guy」を「あの男」と訳さない、前置きの組み立て
I don’t want to be that guy, but を日本語にするとき、つまずきやすいのが that guy の訳です。今回のフィルの台詞を出発点に、that guy の読み方と、前置きの組み立てを整理します。
that guy を「あの男」と訳すと、特定の誰かを指す文になってしまいます。実際には、that は「あの」と指す役目ではなく、話し手と聞き手の頭に浮かぶ「ああいう手の人」を示す役目をしています。guy は、ここでは特定の個人ではなく、人物の類型を表す語です。「嫌なやつ」「うるさい人」「空気を読まない人」と、場面に合わせて言い換えると、意味が通ります。
形の面では、I don’t want to be that guy, but の but の前にコンマを置いて、間を示すのが文字での書き方です。会話では、このコンマの位置で、一拍置く形になります。別の言い方として、I hate to be that guy, but のように、don’t want の部分を hate to に替えた形も作れます。
but のあとには、依頼や指摘、催促、確認の問いかけなどが入ります。今回のフィルの台詞では、did you send that text yet? の問いかけが入っていて、メッセージを送ったかどうかを確かめる内容でした。前置きと本題の組み合わせとして、この形を押さえておくと、この前置きの形を使いこなせます。
まとめ|言いにくい一言の前に立てる標識
I don’t want to be that guy, but は、言いにくいことを切り出す前の前置きです。that guy は特定の人ではなく、避けたい人物像を指し、その人にはなりたくないと先に断ります。
but のあとに、依頼、指摘、催促を置けば、角の立ちにくい言い方になります。音量や時間、席の確認のように、相手に耳の痛い内容を伝える場面で働く一言です。
ジェイが自分の居場所を語る流れに、フィルが短い前置きとともに別の用件を挟んでいました。長い語りと短い問いの対比に、この前置きの役目がはっきり表れていました。


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