海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
自分なりのやり方でどうにか困難な時期を乗り切った経験を、つい誇らしげに語ってしまうことはありませんか。
『モダンファミリー』シーズン1第22話の中盤に、そんな場面を体現する一言があります。フィルが誇らしげに口にする「made his way through college」(大学を乗り切った)という一言から、一緒に見ていきましょう。
「make one’s way through」の意味とニュアンス
make one’s way through
意味:苦労しながら〜を進み切る、〜をやり遂げる
make one’s way throughは、物理的な場所を進み抜けることに加えて、困難な期間や課程を苦労しながら乗り切るという意味でも使われる口語表現です。through以下には、進み抜ける対象となる場所や期間が置かれます。one’sの部分には所有格が入り、誰が進んでいるのかを明確に示す形になっているのも特徴の一つです。
大学生活、仕事上の困難な時期、あるいは混雑した場所を実際に進んでいく場面など、幅広い状況で使われます。「ただ乗り切った」というより、途中に何かしらの苦労や工夫があったことをにおわせる言い方で、そこに至るまでの過程そのものに焦点が当たっている点が特徴です。過去形で使われることが多いのも特徴で、乗り越えた後にその道のりを振り返って語るときに自然と選ばれる表現です。似た形の表現work one’s way throughとの違いは、この後の関連表現セクションで確認していきます。
【ここがポイント!】
- 「make one’s way through」の核は、障害物をかき分けながら少しずつ前へ進むイメージ
- 物理的な場所にも、困難な期間や課程にも使える幅広い口語表現
- through以下に進み抜ける対象を置く語順を意識するのがコツ
『モダンファミリー』S01E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
走行中の車の中、経路について不安がるミッチェルに、運転席のフィルが自信たっぷりに応じます。学生時代の苦労話を持ち出しながら、道を知っていることの大切さを説く一幕です。
Mitchell: I-Is this the best way to go? What about the freeway?
(こ、これが一番いい道なの?フリーウェイはどうなんだよ?)Phil: Relax, punkin. I got this. It’s all about knowing the route. You’re talking to a guy who made his way through college by driving a pedicab. You know what one of those is?
(落ち着けよ、坊や。俺に任せとけ。大事なのは道を知ってることなんだ。俺は輪タクを運転しながら大学を乗り切った男だぞ。輪タクが何か知ってるか?)Mitchell: Yes. Yes.
(知ってるよ。知ってるって。)Phil: Quick- Who sang “Evil Woman”?
(じゃあ早く言え、「Evil Woman」を歌ったのは誰だ?)Modern Family Season1 Episode22 (Airport 2010)
シーン解説と心理考察
フリーウェイを提案するミッチェルに対し、フィルは「落ち着けよ、俺に任せとけ、大事なのは道を知ってることなんだ」と自信たっぷりに語り出します。極めつけは「輪タクを運転しながら大学を乗り切った男だぞ」という一言で、地に足のついた苦労話をさりげなく織り交ぜながら自分の運転の腕前を誇示しようとする姿が、この一言に重なっています。
ミッチェルが「知ってるよ、知ってるって」とややうんざり気味に相槌を打つ様子には、フィルの自慢話に付き合わされる家族としての諦めのようなものがにじみます。少し後でフィルが唐突に『Evil Womanを歌ったのは誰だ?』とクイズを繰り出すのも、話題が次々と移り変わっていく落ち着きのなさをよく表しています。運転席で自分の武勇伝を語るこの人物らしいマイペースさが、会話全体の温度を作り出しています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
「make one’s way(自分の道を切り開いて進む)」と「through(〜を通り抜けて)」を組み合わせて、障害物を一つずつかき分けながら前へ進んでいくイメージを思い浮かべてみましょう。
フィルが語った輪タク運転の苦労話も、まさにこの「かき分けながら進む」イメージそのものでした。困難な時期を一気に飛び越えるのではなく、一歩ずつ乗り越えていく過程をイメージすると、フレーズの持つ手応えが伝わりやすくなります。ペダルを漕ぎながら少しずつ距離を稼いでいくような、地道な前進のイメージを重ねてみるのもよいかもしれません。
例文で覚える「make one’s way through」
学業からキャリアまで幅広く使えるmake one’s way throughを、3つの例文で確認していきましょう。
She made her way through law school while working two jobs.
(彼女は2つの仕事を掛け持ちしながら、ロースクールをやり遂げた。)
苦労して学業を終えた経験を語る場面です。while以下に具体的な状況を添えると、乗り切るまでの過程がより伝わりやすくなります。
We had to make our way through the crowded market to find the stall.
(混雑した市場を通り抜けて、その屋台を探さなければならなかった。)
人混みを進む状況を説明する旅行の場面です。crowdedのような形容詞を添えると、進みにくさの度合いが具体的に伝わります。
A: How did you finish the project on time?
B: I just made my way through it step by step.
(A:どうやって期限内にプロジェクトを終わらせたの?)
(B:一つずつ着実に進めていっただけだよ。)
仕事の進め方を説明する会話です。step by stepを添えることで、一気にではなく着実に進めた過程が強調されています。
あわせて覚えたい関連表現
work one’s way through
(苦労しながら〜を進める、働きながら〜をやり遂げる)
work one’s way through collegeのように、労働という手段を伴うニュアンスが強い表現です。make one’s way throughは手段を問わず「進み切る」ことに焦点があり、そこが今回のフレーズとの違いになります。
go through with
(計画などを最後までやり遂げる)
make one’s way throughが「進む過程」に焦点を当てるのに対し、go through withは「計画の実行」そのものに焦点がある点で性質が異なります。
get through
(〜を乗り切る、切り抜ける)
困難な状況全般を乗り切ることを表す一般的な表現で、make one’s way throughに比べると「進む」というニュアンスは弱めです。3つとも似た場面で使えますが、進む過程を丁寧に描きたいときはmake one’s way throughが最も情景の浮かびやすい選択肢になります。
Note|学費を自分で稼ぎながら大学に通う、アメリカの学生アルバイト文化
フィルが語った「輪タクを運転しながら大学を乗り切った」という一言は、アメリカの学生生活によく見られる、学費や生活費を自分で工面しながら学ぶという文化を思い起こさせます。
アメリカの大学では、学費が高額になりやすいこともあり、キャンパス内の食堂や図書館でのアルバイト、家庭教師、あるいはフィルのように配達や運転といった仕事をしながら学業を続ける学生が珍しくありません。奨学金やローンを利用する学生も多い一方で、在学中に何らかの形で働くことは、アメリカの大学生活における一般的な選択肢の一つとして広く知られています。こうした「働きながら学ぶ」という経験は、卒業後に自分の苦労話として語られることも多く、フィルのようにやや誇張気味に武勇伝として持ち出されるのも、その一例と言えます。
make one’s way through collegeという表現が、単に「卒業した」ではなく「苦労を乗り越えて卒業した」というニュアンスを含むのは、こうした背景があるからこそでしょう。働きながら学ぶ経験そのものが、この一言に厚みを与えています。
アルバイトの内容や制度の仕組みは国によって異なっても、働きながら学ぶ日々を後から誇らしげに振り返る学生時代の苦労話には、案外どの国にも共通する響きがあるのかもしれません。
まとめ|困難な過程を一歩ずつ乗り越える表現
make one’s way throughは、物理的な場所であれ困難な期間であれ、苦労しながら進み切ることを表す口語表現です。
through以下に対象を置く形で、大学生活や仕事上の困難な時期など、幅広い場面での「乗り越えた経験」を語るときに活躍します。
輪タクを運転しながら大学を乗り切ったというフィルの自慢話には、地に足のついた苦労と、それを誇らしげに語る人柄の両方が表れていました。誰かの「あの時期を乗り越えた」という話に耳を傾けるとき、このフレーズを思い出す場面があるかもしれません。


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