海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
疲れが残っていても、あと少しだけ踏ん張らなければならない日があります。
そんな日に自分や相手を奮い立たせる「power through」を、『モダンファミリー』シーズン8第22話の後半、卒業式を終えたマニーに向けて、ジェイが放つ短い励ましの一言から、一緒に見ていきましょう。
「power through」の意味とニュアンス
power through
意味:踏ん張って乗り切る、勢いで押し切る
power through は、疲れや困難があっても、休まずに気力と勢いで最後までやり抜くことを表す表現です。power は名詞の「力」としてよく知られていますが、ここでは動詞として使われていて、「力で進む」という意味になります。through は「通り抜けて」ですから、力で障害の中を通り抜ける、という流れがそのまま表れています。
使い方は二通りあります。一つは、目的語を置かない形です。Power through! や I’ll power through. のように、動詞のあとに through だけを続けます。いま抱えている状況を指して、「何とか踏ん張る」と述べる言い方です。もう一つは、目的語を置く形です。power through the meeting なら「会議を乗り切る」、power through the report なら「報告書を一気に片づける」という意味です。
過去のことを語るときは、powered through の形にします。I powered through the final exam. なら「期末試験を気力で乗り切った」となります。命令形で相手を励ましたり、I’ll を付けて自分の決意として述べたりと、人称を変えて幅広く使えます。
疲れや気の重さがあるのに、予定を最後までこなさなければならないときに、頼りになる表現です。もう動けないと感じる状態の手前で、あと一押し、勢いで進むときに合います。
【ここがポイント!】
- 「power through」の核は、疲れや困難があっても、勢いで最後までやり抜くこと
- 目的語なしの Power through! と、目的語を置く power through the meeting の二つの形がある
- 命令形で励まし、I’ll を付けて自分の決意としても使える
『モダンファミリー』S08E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
卒業式のあと、ジェイがマニーにかける言葉の場面です。ジェイの一言は短く、二つの文だけで成り立っています。前半でマニーを一人前として扱い、後半で励ます、その運びを追ってみます。
Jay: You’re a man now! Power through!
(お前はもう一人前の男なんだ! 踏ん張って乗り切れ!)Modern Family Season8 Episode22 (The Graduates)
シーン解説と心理考察
ジェイの言葉は、You’re a man now! と Power through! の二文です。どちらも感嘆符で終わっていて、勢いよく言い切る形になっています。
前半の You’re a man now! は、「お前はもう一人前の男なんだ」という意味です。now は「いまはもう」という変化を表す語で、これまでとは違う段階に入ったことを示します。卒業式を終えたマニーに向けて、一人前の大人として扱う言葉です。ジェイがマニーを「男」と呼ぶことで、子どもではなく一人前の相手として話しかけていることが伝わります。
後半の Power through! は、命令形です。主語の you が省かれ、動詞の power だけで始まっています。命令形は、相手に向けて直接働きかける言い方で、ここでは励ましとして響きます。目的語は言葉にされていません。何を乗り切るのかは、この一言の中には出てこず、聞き手が自分の状況に当てはめて受け取る形になっています。
二つの文のつながりも見ておきましょう。前半が理由、後半が励ましという関係です。もう一人前なのだから、気力で押し切れ、という運びになっています。優しく慰める言葉ではなく、背中を押して前へ進ませる、力強い励ましです。
ジェイは、ぶっきらぼうで飾らない話し方をする人物です。長い説明を添えず、短い二文で言い切るところが、ジェイらしい励まし方です。ジェイはグロリアの夫で、グロリアの息子であるマニーにとっては継父にあたります。
この場面は、短いからこそ、power through の形がはっきり見えます。命令形で目的語を省く使い方と、前半の理由を添える言い方の組み合わせが、そのまま励ましの型として使えます。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
power は「力」、through は「通り抜けて」です。向かい風の中、体を前に倒して、立ちはだかる壁をぶち抜くように進んでいく人を、頭に描いてみましょう。力で押して通り抜ける姿が、power through の意味そのものです。
ジェイの Power through! は、その人の背中を後ろから押す声のようなものです。押す声は短いほど、勢いがそのまま届きます。You’re a man now! と理由を添えて、押す力を強めています。力と通り抜けるという二つの語を、壁をぶち抜く絵に重ねておくと、命令形の Power through! を聞いたときにも、すぐに意味が浮かびます。
例文で覚える「power through」
疲れた日の一言として、例文で確かめましょう。
I was exhausted, but I powered through the meeting.
(疲れ切っていましたが、会議は何とか乗り切りました。)
大変だった一日を振り返る場面です。but でつなぐと、疲れていたのに最後までやり切った、という対比がはっきりします。
A: Aren’t you tired?
B: A little, but I’ll power through.
(A:疲れてない?)
(B:ちょっとね、でも踏ん張って乗り切るよ。)
疲れた様子の相手に聞かれる会話です。I’ll を付けて目的語を置かないと、自分の決意として短く言い切れます。
She powered through the final exam and finished first in her class.
(彼女は期末試験を気力で乗り切り、クラスで1位になりました。)
同級生の頑張りを語る場面です。power through のあとに the final exam を置くと、何を乗り切ったのかが示されます。
あわせて覚えたい関連表現
push through
(押し切る、やり抜く)
push through は、障害や抵抗を押して前に進むことに重心があります。power through は、疲れや気の重さがあっても、勢いで終わらせることに重心があります。
soldier on
(黙々と頑張り続ける)
soldier on は、不満を言わずに我慢して続けることに重心があります。power through は、勢いよく一気にやり切る感じがあります。
grit one’s teeth
(歯を食いしばって耐える)
grit one’s teeth は、耐える気持ちを表す言い方です。power through は、耐えたうえで最後までやり抜く行動を表します。
Note|「やり抜く」は一つではない。power through と push through と soldier on の焦点
日本語の「やり抜く」「乗り切る」「頑張る」は、場面によって三つの英語に分かれます。power through、push through、soldier on です。どれも「続ける」という方向は同じですが、焦点の当たる場所が違います。
power through は、疲れや気の重さがあっても、勢いで終わらせることに焦点があります。I was exhausted, but I powered through the meeting. なら、疲れていても会議を最後まで勢いで乗り切った、という意味です。終わらせるまでの行動が主役になります。
push through は、障害や抵抗を押しのけて前へ進むことに焦点があります。人混みや反対意見のような、目の前に立ちはだかるものを押して進む場面に向きます。push は「押す」ですから、押しのける相手が思い浮かぶ表現です。
soldier on は、不満を言わずに黙々と続けることに焦点があります。soldier は「兵士」で、持ち場を離れずに黙々と進み続ける兵士の姿が重なります。気持ちの表し方は控えめになります。She soldiered on despite the pain. のように、苦しさをこらえて続ける場面に合います。
ジェイの Power through! は、相手に勢いを求める言い方なので、三つの中では power through が最もその場に合います。黙って耐えろと言うのではなく、勢いで押し切れと背中を押す言葉だからです。
まとめ|背中を押す二文。ジェイの励ましが示した power through の形
power through は、疲れや困難があっても、勢いで最後までやり抜くことを表す表現です。目的語なしの Power through! と、power through the meeting のように目的語を置く形があり、命令形でも自分の決意としても使えます。
ジェイは、卒業式を終えたマニーに向けて、一人前だという理由を先に述べ、そのあとで Power through! と励ましました。理由を添えた命令形という短い二文の中に、力強く背中を押す、ジェイらしい励まし方が表れていました。


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