海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
相手の勢いに押されて、言いたいことも言えないまま従ってしまった経験はありませんか。
そんな状況を言い表す「push someone around」を、『モダンファミリー』シーズン6第15話の後半、ジェイがマニーに声をかける場面から、一緒に見ていきましょう。
「push someone around」の意味とニュアンス
push someone around
意味:人に威張り散らす、いいように扱う、こき使う
push someone around は、立場や力の強い人が、相手に指図をしたり威圧したりして、自分の思いどおりに動かす様子を表す表現です。push は「押す」、around は「あちこちへ」という意味で、直訳すると「人をあちこちへ押し動かす」になります。相手の意思とは関係なく、押されるままに動かされる側の立場が、意味の土台にあります。
someone の部分には、押される側の人が入ります。代名詞のときは push you around、push him around のように、push と around の間に入ります。今回のシーンのように、let this kid keep pushing you around と、let のあとで keep pushing の形にすると、「そうされ続けるのを許す」という意味になります。
受け身にして be pushed around と言えば、「いいように扱われる」という意味になります。I’m tired of being pushed around のように、扱われる側から不満を語る場面で使われます。使われる場面は、いじめや職場での威圧的な態度、きょうだいの力関係、押しの強い相手に対して「言いなりになるな」と伝えたいときなどです。
push だけなら、物を押す動作や、人の背中を軽く押す動作にも使えますが、around が付くと、力の差を利用して人を動かす意味に絞られます。そのため、押される側の気持ちが置き去りになっている、というニュアンスが表に出ます。同じ「押す」でも、後ろに何が付くかで、意味の向きが変わる点が特徴です。
【ここがポイント!】
- 「push someone around」の核は、力の強い側が、人を押して思いどおりに動かすイメージ
- 代名詞は push と around の間に入る形で、受け身の be pushed around も使える表現
- let のあとに置くと「いいようにされ続けるのを許す」という意味になるのがコツ
『モダンファミリー』S06E15のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ジェイが、6時に迎えに来ると言い、マニーに自分が何を教えたかを尋ねる場面です。マニーが答えると、ジェイはそれを言い直し、続けて pushing you around という言葉で、マニーに向けて話を進めます。ジェイの長めの一言のなかで、この表現がどんな形で出てくるかに注目です。
Jay: I’ll be back. Pick you up at 6:00. Now remember, what did I teach you?
(戻ってくる。6時に迎えに来る。さあ、俺が何を教えたか覚えてるか?)Manny: Violence solves everything, and don’t wind my fist up like Popeye.
(暴力ですべて解決。それと、ポパイみたいに拳を振りかぶらないこと。)Jay: It’s not violence. It’s self-defense. You cannot let this kid keep pushing you around. Now you walk in there like a badass and you make the best damn lasagna anybody’s ever seen.
(暴力じゃない。自己防衛だ。あのガキにこれ以上いいようにされちゃだめだ。さあ、タフな奴みたいに堂々と乗り込んで、誰も見たことがない最高のラザニアを作ってこい。)Manny: I appreciate the speech, Jay, but I’ll handle things my way.
(スピーチはありがたいけど、ジェイ、僕は僕のやり方でやるよ。)Modern Family Season6 Episode15 (Fight or Flight)
シーン解説と心理考察
ジェイは、I’ll be back. と Pick you up at 6:00. で、送り出す前の段取りを手短に告げます。そのうえで、what did I teach you? と、マニーに教えを確かめる問いかけを置きます。Pick you up は、I’ll が省かれた形です。
マニーの答えは、暴力がすべてを解決すると言ったうえで、拳の構え方の注意を言い添えています。
ジェイの長い発言では、まず It’s not violence. It’s self-defense. と、マニーの言葉を言い直します。そのあとに、You cannot let this kid keep pushing you around. が続きます。cannot let は「許してはいけない」、keep pushing は「押し続ける」で、相手がこれからも同じことを続けるのを許すな、という組み立てです。this kid という言葉で、話題の相手を指しています。
発言の最後は、Now という切り替えの言葉で始まり、you make the best damn lasagna anybody’s ever seen と、具体的な行動の指示で締めくくられます。励ましの言葉の後ろに、やるべきことが続く形です。
これに対するマニーの返答は、I appreciate the speech, Jay, but… と、感謝の言葉から入り、but で切り替えて I’ll handle things my way と続きます。ジェイの発破と、マニーが自分のやり方を口にする流れが、この場面の見どころです。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
荷物を載せた台車を押して動かす様子を思い浮かべてみましょう。押す人が力を込めれば、台車は押された向きに動きます。台車には、自分の意思で進む向きを決める力がありません。
push someone around は、この「押して動かす」動作を、人に向けたものです。押される側は、自分の意思とは関係なく、押された向きに動かされます。around が付くことで、一方向ではなく、あちこちへ動かされる様子も含まれます。
ジェイが言った you cannot let this kid keep pushing you around は、押され続ける台車の役を、これ以上は引き受けるな、という一言でした。「押す側」と「押される側」の二つの立場を、台車の絵と一緒に思い浮かべると、let のあとに来る形も覚えやすくなります。
台車が人に変わったとき、押す力は「言いなりにさせる力」に置き換わります。物を動かす動作と、人を動かす動作が同じ言葉でつながっている点が、この表現のイメージの出発点です。
例文で覚える「push someone around」
人を思いどおりに動かす push someone around を、3つの場面で確認していきましょう。
Don’t let him push you around. Stand up for yourself.
(彼にいいように扱われちゃだめだよ。自分の意見を主張して。)
押しの強い相手に悩む友人を励ます場面です。let のあとに置く形は、シーンの you cannot let this kid keep pushing you around と同じ組み立てです。
A: Why did you finally say no to the manager?
B: I’m just tired of being pushed around.
(A:どうしてとうとう部長に反対したの?)
(B:いいように扱われるのはもううんざりなんだ。)
職場での立場に悩む場面の会話です。受け身の being pushed around の形で、扱われる側の実感を語っています。
My older brother used to push me around when we were kids.
(子どもの頃、兄によくこき使われました。)
きょうだいの昔話をする場面です。used to を添えると、過去に繰り返されていた習慣として振り返る言い方になります。
あわせて覚えたい関連表現
boss someone around
(人に偉そうに指図する)
boss someone around は、「指図する」ことに焦点があります。push someone around は、指図に加えて、威圧や力の差を使って言いなりにするという含みがあります。
walk all over someone
(人を踏みつけにする、ないがしろにする)
walk all over someone は、相手を軽んじて好き放題に扱う意味です。push someone around は、威圧して動かす動作が中心になります。
bully
(いじめる)
bully は動詞と名詞の1語で、いじめ全般を指します。push someone around はやや口語的で、「いいように扱う」という広い意味で使えます。
Note|push you around の形、代名詞の位置・受け身・let のあとの動詞
push someone around は、3語で一つの意味を作る動詞句です。今回のシーンの pushing you around を手がかりに、形の面から整理します。
一つ目は、目的語の位置です。この種の動詞句では、代名詞の目的語は動詞と副詞の間に入り、push you around、push her around のようになります。push around you のように、あとに置く形は使いません。一方、名詞が目的語のときは、push the kids around のように間に入れるほかに、push around the kids と後ろに置く形も文法上は可能です。
二つ目は、受け身です。目的語を主語にして、He was pushed around. のように言うと、「いいように扱われた」という意味になります。I’m tired of being pushed around のように、-ing の形と組み合わせる言い方もあります。
三つ目は、let のあとの形です。let A do は「A に〜させる」という意味で、ジェイの You cannot let this kid keep pushing you around では、let のあとの A が this kid、動詞にあたる部分が keep pushing you around です。cannot が付くことで、「そうさせておいてはいけない」という否定の形になっています。keep -ing は「〜し続ける」で、相手が押し続けるという継続の意味が加わります。
代名詞の位置、受け身、let の後ろ。三つの形を押さえておくと、この表現が出てきたときに、誰が誰を押しているのかが読み取りやすくなります。
まとめ|押される側の立場から見る、いいように扱う一言
push someone around は、立場や力の強い人が、相手を思いどおりに動かす様子を表す表現です。「あちこちへ押し動かす」という直訳が、そのまま意味の土台になっています。
代名詞は push と around の間に入り、受け身の be pushed around や、let のあとの keep pushing の形にも広げられます。誰が押す側で、誰が押される側かを意識すると、文の組み立てが見えやすくなります。
ジェイがマニーに向けて、この表現を含む長めの一言を伝えた場面は、形の使い方がよく表れていました。人の関係を語る言葉として、表現の幅を広げてみてください。


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