海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
何度伝えても状況が変わらず、ついに「もうたくさん」と口にしたくなる瞬間があります。
そんな線引きの一言「enough is enough」を、『モダンファミリー』シーズン6第15話の前半、グロリアが、マニーが料理教室に行きたがらない理由をジェイに話し、戦い方を教えるよう求める場面から、一緒に見ていきましょう。
「enough is enough」の意味とニュアンス
enough is enough
意味:もうたくさんだ、これ以上は我慢できない、いい加減にして
enough is enough は、状況や相手の行動がこれ以上は許せないと告げる定型表現です。直訳は「十分は十分だ」で、enough(必要なだけの量)を同じ形で繰り返すことで、「十分な量にもう達している。これ以上は要らない」と線を引く響きになります。
主語は enough、動詞は is、補語も enough という形で、文としてこれだけで完結します。言い切りの型になっているため、前後にほかの文を続けなくても、一言で「ここまでにしよう」という意思が伝わります。Enough! と1語だけで言う短い形もあり、enough is enough は、その内容をより言い切りの調子にした形と言えます。
使われる場面は、繰り返される迷惑な行動、長引いている争い、我慢を重ねてきた状況など、「これまで続いてきたこと」に区切りをつけたいときです。相手に向けて「やめてほしい」と伝える場合にも、周りに向けて「もう限界だ」と宣言する場合にも使えます。怒りや苛立ちがこもることが多く、口調は強めです。
【ここがポイント!】
- 「enough is enough」の核は、量がもう十分に達していて、それ以上は入らないというイメージ
- 同じ語を重ねた言い切りの型なので、一言で「ここまで」と線を引ける表現
- 場面によって「もうたくさんだ」「いい加減にして」「もう限界だ」と訳が変わるのがコツ
『モダンファミリー』S06E15のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
グロリアが、マニーが料理教室に行きたがらない理由をジェイに伝える場面です。ジェイが料理教室のことに触れると、グロリアは enough is enough と言い切って、ジェイに頼み事をします。グロリアの言葉が「わかってるわ」から enough is enough へ、そして頼み事へと進む流れに注目です。
Gloria: He doesn’t want to go because a boy there is picking on him.
(あの子、そこにいる男の子にいじめられてるから行きたくないのよ。)Jay: Cooking class? We’re running out of places to send him where he can be cool.
(料理教室か? あいつがカッコよくいられる場所に行かせようにも、もう行き先が尽きてきたな。)Gloria: I know. Enough is enough. You have to teach him how to fight.
(わかってるわ。もうたくさんよ。あの子に戦い方を教えなさいよ。)Jay: Yeah. That’ll work.
(ああ。そりゃうまくいくだろうよ。)Modern Family Season6 Episode15 (Fight or Flight)
シーン解説と心理考察
グロリアの最初の発言は、He doesn’t want to go because… と、理由を述べる形になっています。「行きたくない」という事実の後ろに、because で原因の「男の子にいじめられている」が続き、事情が一文で説明されています。a boy there is picking on him の pick on は、特定の相手を目の敵にしてからむ、いじめるという意味の表現です。
これに対してジェイは、「料理教室か?」と場所を問い返し、we’re running out of places to send him where he can be cool と続けます。run out of は「〜が尽きる」という意味で、行かせられる場所が減ってきたという状況を述べています。
グロリアの三つ目の発言は、三つの文が並びます。I know で相手の言い分を一度受け止め、Enough is enough で線を引き、You have to teach him how to fight で具体的な頼み事に進みます。受け止める、宣言する、頼むという順に並んでいて、一つの発言のなかで話が段階を踏んで進みます。You have to は「〜しなければならない」という強い言い方で、頼み事の調子が言い切りになっています。
最後にジェイが Yeah. That’ll work. と短く応じて、このやり取りは区切られます。グロリアの頼み事に対して、ジェイの返事が2つの短い文で返る形です。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
コップに水を注いでいく様子を思い浮かべてみましょう。水が縁までいっぱいになったら、それ以上は注げません。無理に注ぎ足せば、あふれてしまいます。enough は、この「必要な量に達した」状態を表す語です。
enough is enough は、その「達した」という状態を、同じ言葉で二度言うことで強調した形です。「十分は十分」という重ね方が、「もうこれ以上は入らない」という限界の感覚を作ります。
グロリアが I know に続けて Enough is enough と言い切る場面を、あふれる寸前のコップの絵と一緒に思い出すと、意味が定着しやすくなります。注ぎ足すのをやめる合図が、この一言です。
例文で覚える「enough is enough」
限界を伝える enough is enough を、3つの場面で確認していきましょう。
You’ve been late three times this week. Enough is enough.
(今週は3回も遅刻しているね。もうたくさんだ。)
繰り返される遅刻に注意する、仕事の場面です。three times this week のように回数を添えると、限界に達した理由がはっきりします。
A: He keeps borrowing my car without asking.
B: Then tell him enough is enough.
(A:彼、聞きもせず僕の車を借り続けるんだ。)
(B:だったら、もうたくさんだと言ってやりなよ。)
友人に悩みを打ち明けられて、背中を押す会話です。tell him enough is enough と、伝える内容として文に組み込む形になっています。
After years of noise from the construction site, the residents said enough is enough.
(建設現場の騒音が何年も続き、住民たちはもう限界だと声を上げた。)
ニュースの文章を思わせる場面です。after years of のように期間の長さを示す表現と組み合わせると、我慢を重ねてきた背景が伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
that’s the last straw
(もう我慢の限界だ、最後の一押しだ)
that’s the last straw は、限界を超えさせた最後の出来事を指す表現です。enough is enough が「ここまでにしよう」と宣言する言い方であるのに対し、こちらは引き金になった出来事に目を向けます。
I’ve had enough
(もううんざりだ)
I’ve had enough は、自分の気持ちを述べる言い方です。enough is enough は、自分の気持ちだけでなく、状況全体に線を引く決まり文句という違いがあります。
that’s it
(もうおしまいだ)
that’s it は、決断や終了を告げる軽い言い方です。怒りの度合いは文脈次第で、enough is enough のように限界に達した苛立ちが前提になるとは限りません。
Note|「もうたくさん」だけでは足りない、enough is enough の訳し分け
enough is enough は、辞書では「もうたくさんだ」「我慢の限界だ」と訳される表現です。ただ、実際の場面に当てはめると、日本語の訳は一つに決まりません。
訳が変わる一つ目の理由は、誰に向けた言葉かです。子どもや部下に向けて、やめさせたい気持ちで言うなら、「いい加減にしなさい」「やめなさい」のように、相手の行動を止める訳が合います。友人に自分の状況を語るなら、「もう限界だ」「もうたくさんだ」のように、自分の気持ちの訳になります。二つ目の理由は、言う側の立場です。強い立場から命令する場面と、我慢を重ねた側が宣言する場面では、言葉の重さが違います。三つ目は、繰り返されてきた期間の長さで、長く続いた状況ほど、「もうたくさんだ」という訳の実感が強くなります。
グロリアの Enough is enough を、この記事では「もうたくさんよ」と訳しましたが、「いい加減にして」と訳しても原文の形は変わりません。直訳の「十分は十分だ」のままでは日本語として意味が通りにくいため、場面に合わせて言葉を選びます。
英文が一つでも、日本語では訳が何通りにもなります。訳を選ぶときは、誰が誰に向けて言ったのかを確かめると、しっくりくる言葉が見つかります。
まとめ|同じ言葉を重ねて引く、限界の線
enough is enough は、状況や相手の行動がこれ以上は許せないと告げる表現です。enough を二度重ねた言い切りの型が、量がもう十分に達している、という感覚を作っています。
一言で線を引ける短さがあり、繰り返される迷惑な行動にも、長引く争いにも使えます。場面によって「もうたくさんだ」「いい加減にして」「もう限界だ」と訳が変わる点も、押さえておきたいところです。
グロリアが、ジェイの言葉に「わかってるわ」と応じたあと、Enough is enough と言い切って頼み事を切り出した流れは、この表現の使いどころをはっきり示していました。限界を伝える言葉として、会話のレパートリーに加えてみてください。


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