海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
最初は距離があった相手に、少しずつ心を開いてもらえた。そんな経験はありませんか。
そんな瞬間を一言で言い表せる「win over」を、『モダンファミリー』シーズン4第13話の後半、ジェイに指摘をするクレアの一言から、一緒に見ていきましょう。
「win over」の意味とニュアンス
win over
意味:味方につける、気に入られる
win overは、最初は反対していたり、無関心だったりした人を、説得や好意的な態度で自分の味方にするという意味の表現です。winは「勝ち取る」、overは「向こう側からこちら側へ」という動きを表します。相手を向こう側から、こちら側に勝ち取ってくるイメージです。
単に「勝つ」のではなく、相手の心を動かして自分の側に来てもらう点が中心です。試合や議論に勝つ場合と違い、勝ち負けの決着ではなく、相手の気持ちが変わるという結果に焦点があります。懐疑的な顧客や上司、恋人の家族、反対していた同僚など、まだ味方になっていない相手を、こちらに向けさせる場面を表します。
語順にも特徴があります。win overは、winとoverが離れることもある句動詞で、目的語が代名詞のときは「win him over」のように間に入ります。名詞のときは、「win over the crowd」でも「win the crowd over」でも通じます。本編のクレアの言葉のように、関係詞節の中で目的語が前に出ると、「you can’t win over」のように動詞の後ろが空いた形になります。
否定形にも注目です。「can’t win over」と言うと、何をしても味方にできない、という手詰まりの状態を表します。本編でも「no matter what you do, no matter how hard you try」という言葉が前に置かれ、努力してもうまくいかない状況の強さが際立ちます。
【ここがポイント!】
- 「win over」の核は、説得や好意的な態度によって、相手を自分の味方にするというイメージ
- 目的語が代名詞のときは「win him over」のようにwinとoverの間に入る
- 「can’t win over」の形で、何をしても味方にできない手詰まりの状態も表せる
『モダンファミリー』S04E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ジェイが、面と向かって「嫌いだ」と言われたと語ったあと、クレアが、この状況の何がおかしいのかを切り出す場面です。クレアの問いかけを受けて、ジェイが「まさか」と気づく流れに注目です。
Claire: I am sure you know what I find funny about this situation.
(この状況の何が私にはおかしいか、あなたなら分かると思うけど。)Jay: What?
(何だ?)Claire: You have an in-law who, no matter what you do, no matter how hard you try, you can’t win over.
(あなたには、何をしても、どれだけ頑張っても、どうしても味方につけられない姻戚がいるってこと。)Jay: What about it?
(それがどうした?)Claire: Wait. That doesn’t sound familiar?
(待って。それ、何か覚えがない?)Jay: You’re not saying
(まさか、お前が言いたいのは……)Claire: Mm-hmm. Yeah, I am.
(ええ。そう、そのまさかよ。)Jay: Son of a bitch, I’m Phil.
(くそっ、俺はフィルだってことか。)Modern Family Season4 Episode13 (Fulgencio)
シーン解説と心理考察
クレアは「この状況の何が私にはおかしいか、あなたなら分かると思うけど」と、含みのある言い方で話を始めます。「何だ?」と返したジェイに、何をしても、どれだけ頑張っても味方につけられない義理の親族がいるでしょう、と続けます。
ジェイが「それがどうした?」と返すと、クレアは「待って。それ、何か覚えがない?」と重ねます。答えを直接言わずに、ジェイ自身に気づかせようとする言い方です。ジェイが「まさか」と言いかけたところで、クレアは「ええ。そう、そのまさかよ」と肯定します。
ジェイの「くそっ、俺はフィルだ」という一言は、何をしても味方につけられない相手を持つ自分の立場を、フィルに重ねたものです。フィルはジェイの義理の息子にあたります。ジェイが、認めてもらえない側の立場を、自分事として受け止めた瞬間です。
クレアは、この気づきを責めるでも慰めるでもなく、おかしみをこめて指摘しています。答えを言わずに問いかけを重ね、ジェイ自身に気づかせる話し方が、会話のテンポをつくっています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
「win(勝ち取る)+over(向こう側からこちら側へ)」で、向こう側にいた人を、勝ち取ってこちら側に引っ張ってくる動きを思い浮かべてみましょう。試合に勝つのではなく、相手の気持ちをこちらに向かせるイメージです。
overには、向こう側からこちら側へ移る動きを表す使い方があります。相手の気持ちが向こう側からこちら側へ移ってくる、という動きの中に、相手自身の意志が関わっている点が、この表現のポイントです。
クレアの「you can’t win over」も、このイメージで読むと分かりやすくなります。向こう側にいる相手を、どれだけ頑張っても、こちら側に引き寄せられない。その手詰まりの感覚が、canとnotの組み合わせで表されています。
ジェイが「まさか」と言いかけた場面も、この動きを想像すると理解しやすくなります。向こう側にいる相手を引き寄せられない立場に、自分が置かれていると気づいた場面だからです。
例文で覚える「win over」
win overは、仕事から人間関係まで幅広く使える表現です。3つの例文で確認していきましょう。
It took months, but she finally won over her skeptical boss.
(数カ月かかったが、彼女はついに疑い深い上司を味方につけた。)
職場での努力が実る場面です。It took monthsのように時間をかけたことを添えると、簡単にはいかなかった経緯が伝わります。
A: How did you get the client to agree?
B: I didn’t push. I just listened, and it won them over.
(A:どうやってお客さんに納得してもらったの?)
(B:押さなかったの。ただ話を聞いたら、それで味方についてくれたのよ。)
営業の経験を共有する往復会話です。主語がitになり、話を聞いたことが相手の心を動かした、という使い方も自然にできます。
No matter how kind I was, I couldn’t win him over.
(どれだけ親切にしても、彼を味方につけることはできなかった。)
うまくいかなかった人間関係を振り返る場面です。代名詞のhimがwinとoverの間に入る形を確認できます。
あわせて覚えたい関連表現
talk someone around
(説得して考えを変えさせる)
talk someone aroundは言葉で説得して考えを変えさせる点に重点があります。win overは、説得に限らず、態度や人柄で好意を得る場合も含みます。
warm up to someone
(相手に心を開く、打ち解ける)
warm up toは打ち解ける側が主語になります。win overは、味方につける側が主語になる点が違います。
charm someone
(相手を魅了する)
charmは好感を持たせる手段に重点があります。win overは、結果として味方になってもらうことに重点があります。
Note|win overの目的語はどこに置く?代名詞・名詞・関係詞節で変わる語順
win overは、目的語の置き場所が文によって変わる句動詞です。「win him over」のように代名詞が間に入る形、「win the crowd over」「win over the crowd」のように名詞ならどちらでも通じる形、そして関係詞節の中で目的語が前に出る形の3通りがあります。
代名詞は、ふつう間に入ります。「win over him」とは言わず、「win him over」の形にします。him、her、themといった代名詞は短く、情報として軽いので、動詞の近くに置くのがふつうです。
名詞のときは、間に置いても後ろに置いてもかまいません。ただし、目的語が長くなると、後ろに置くほうが読みやすくなります。「win over the members of the committee who had been against the plan」のように、目的語が長い場合は後ろに置くと、文の流れが途切れません。
本編のクレアの「an in-law who … you can’t win over」は、関係詞のwhoが目的語の役割を果たしているため、win overの後ろが空いた形になっています。目的語が前に出ている文では、動詞の後ろに何もないように見えるため、慣れないうちは戸惑いやすい形です。
英語の句動詞は、目的語の位置に決まりがあるものが多く、win overはその中でも使う機会の多い例です。位置のルールを確認しておくと、文を作るときにも、読むときにも役立ちます。
まとめ|説得や好意で、相手の心を動かす
win overは、説得や好意的な態度で、相手を自分の味方につけるという意味の表現です。
目的語が代名詞のときは間に入り、名詞のときは前後どちらでも置けます。関係詞節の中では目的語が前に出て、動詞の後ろが空いた形になります。この語順を覚えておくと、文を作るときにも読むときにも役立ちます。
何をしても味方につけられない相手という言葉から、自分の立場に気づいたジェイと、それをおかしみをこめて指摘したクレア。親子の距離の近さが伝わる会話でした。人間関係の場面を語るときに、この表現を思い出してみてください。


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