海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
相手の善意や大義名分を持ち出されて、なんとなく断りづらい空気に持っていかれてしまったことはありませんか。
そんな空気にぴったりの「a guilt trip」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン12第18話の後半、絵本の内容をめぐって語り合うバーナデットとハワードの夫婦の会話から、一緒に見ていきましょう。
「a guilt trip」の意味とニュアンス
a guilt trip
意味:相手に罪悪感を抱かせる働きかけ
a guilt tripは、相手に「悪いことをしている」と感じさせることで、行動を促そうとする言動や態度を指す口語表現です。guilt(罪悪感)へのtrip(旅)というイメージから、相手をわざと罪悪感の中に連れ出すような比喩として使われています。
名詞としてa guilt tripのように使うほか、guilt-trip someoneのように動詞としても使われ、批判的・皮肉なニュアンスを伴うことが多い表現です。家族や友人、同僚が「悪いと思わないの?」という形で暗に何かを促そうとする場面や、それに気づいた側が「それは罪悪感の押しつけだ」と指摘する場面でよく登場します。相手を責めているようで直接的な批判は避けている、というやや遠回しな説得の仕方を評する時にも便利な表現です。
【ここがポイント!】
- guilt(罪悪感)へのtrip(旅)という比喩がそのままイメージになっている
- 名詞にも動詞(guilt-trip someone)にもなる、使い勝手の良い表現
- 相手の善意や大義名分を利用した、遠回しな説得を指摘する時に使える
『ビッグバン★セオリー』S12E18のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
バーナデットとハワードが、バーナデットとスチュアートが作った絵本の内容について語り合う場面です。宇宙で他の飛行士たちに笑われたというハワード自身の体験がもとになった話をめぐり、バーナデットが絵本を世に出す意義を語りかけ、それに対するハワードの反応に注目です。
Bernadette: But the real story was so sweet. The little astronaut was afraid, but he still went to space, and that’s what made him brave.
(でも、本当の話はすごく優しい話だったのよ。小さな宇宙飛行士は怖かったけど、それでも宇宙に行った。それが彼を勇敢にしたのよ。)Howard: But in space, the other astronauts made fun of him, and that’s a thing he doesn’t want to relive.
(でも宇宙では、他の宇宙飛行士たちに笑いものにされたんだ。それは彼が二度と味わいたくないことなんだよ。)Bernadette: I get that. I guess it would just take a really brave man to put an embarrassing story like that out into the world, just so it might help some frightened children not feel so alone.
(それは分かる。でも、そんな恥ずかしい話を世に出すには、本当に勇敢な男の人が必要なんだと思う。怖がっている子供たちが独りじゃないって感じられるように、っていう理由でね。)Howard: Wow. That is quite the guilt trip.
(うわあ。それはなかなかの罪悪感の押しつけだな。)The Big Bang Theory Season12 Episode18 (The Laureate Accumulation)
シーン解説と心理考察
バーナデットが「本当の話はすごく優しい話だった。怖かったけど、それでも宇宙に行った小さな宇宙飛行士が勇敢だった」と絵本の意義を語ると、ハワードは「でも宇宙では他の宇宙飛行士に笑いものにされた。それは二度と味わいたくないことなんだ」と、自分自身の体験でもあるその出来事に触れられたくない本音を明かします。
それでもバーナデットは「そんな恥ずかしい話を世に出すには、本当に勇敢な男の人が必要なんだと思う。怖がっている子供たちが独りじゃないって感じられるように」と、あえてハワードの勇気に訴えかけます。すると、ハワードは「うわあ。それはなかなかの罪悪感の押しつけだな」と軽口で返します。相手の善意や大義名分を持ち出しながら本音では説得しようとするバーナデットの巧みさと、それを見抜きながらも軽口で受け止めるハワードの夫婦らしい掛け合いが表れた場面です。指摘されてもなお本気で怒っている様子がないところに、二人の間にある信頼関係の厚みが感じられます。
自分の恥ずかしい体験を世に出すことへの抵抗感と、それが誰かの助けになるかもしれないという説得の間で揺れ動くハワードの様子には、照れくささを隠しきれない一面がのぞきます。指摘の言葉を発しながらも結局は言いくるめられている雰囲気には、二人の間の力関係の面白さも表れています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
guilt(罪悪感)へのtrip(旅)というイメージから、相手をわざと「罪悪感を感じる旅」に連れ出して、行動を促そうとする様子を思い浮かべてみましょう。実際に移動するわけではなく、心理的に罪悪感の中を「旅させる」比喩表現です。
ハワードが「それはなかなかの罪悪感の押しつけだな」と返したのも、バーナデットの言葉によって自分が知らぬ間にその「旅」へ連れ出されかけていたことに気づいた瞬間でした。相手の言葉に乗せられて罪悪感の中を歩かされている感覚を覚えておくと、似たようなやり取りに出会った時にすっとこのフレーズが浮かんでくるはずです。
例文で覚える「a guilt trip」
相手に罪悪感を抱かせて行動を促す働きかけを表すa guilt tripを、3つの例文で確認していきましょう。
My mom always tries to guilt-trip me into visiting more often.
(母はいつも、もっと頻繁に訪ねてくるようにと罪悪感を利用して私を誘導しようとする。)
家族との関係を語る日常会話です。guilt-tripを動詞として使うことで、相手の行動そのものを指摘するニュアンスになります。
The charity’s ad seemed designed to send viewers on a guilt trip.
(その慈善団体の広告は、視聴者に罪悪感を抱かせるよう作られているようだった。)
広告の手法について語るシーンです。send someone on a guilt tripという形で、trip(旅)のイメージがそのまま生きています。
A: She said I never call her anymore.
B: That sounds like a guilt trip to me.
(A:彼女は、私が最近全然電話しないって言うんだ。)
(B:それって罪悪感を抱かせようとしているように聞こえるね。)
友人関係の悩みを相談する会話です。sounds like a guilt tripという形で、第三者として指摘する時にも使えます。
あわせて覚えたい関連表現
play on someone’s emotions
(相手の感情につけ込む)
a guilt tripが「罪悪感」に限定されるのに対し、play on someone’s emotionsは同情・恐怖など、より広い感情を利用する場合に使われます。
lay it on thick
(大げさに訴える、これ見よがしに強調する)
a guilt tripが罪悪感という特定の感情を利用するのに対し、lay it on thickは訴え方の「大げささ」そのものに焦点がある表現です。
pull at someone’s heartstrings
(相手の心の琴線に触れる、感傷に訴える)
a guilt tripが批判的なニュアンスを伴うことが多いのに対し、pull at someone’s heartstringsは必ずしも否定的ではなく、素直な感動を誘う場合にも使われます。
Note|power trip・ego tripにも通じる、アメリカ英語の「心理状態としてのtrip」
英語には、実際に旅をするわけではないのに、心理状態や感覚の変化を「trip」という言葉で表す表現がいくつも存在します。
権力を握って高圧的にふるまう様子を指すpower trip、自尊心を満たすためだけの行動を指すego tripなどはその代表例で、いずれも「移動」ではなく「心があるモードに入り込んでいる状態」を旅にたとえています。この発想の背景には、1960年代のカウンターカルチャーで広まった「トリップ(意識が変性した状態)」という感覚的な言い回しが、日常語として定着していった流れがあると考えられています。特定の感情や態度に浸りきってしまう様子を、外から眺めて軽く茶化すニュアンスが共通しているのが特徴です。a guilt tripもこの仲間の一つで、罪悪感という感情の中に相手を連れ込む、という発想が根底にあります。
劇中でハワードが「それはなかなかの罪悪感の押しつけだな」と返したのも、バーナデットの言葉によって自分が罪悪感というトリップに誘われかけていることを、軽い皮肉とともに言い当てた瞬間でした。
心理状態を旅にたとえるこの発想を知っておくと、似たようなtrip表現に出会った時の理解がぐっと深まります。
まとめ|善意に見えて、実は罪悪感の誘導かもしれない
a guilt tripは、相手に罪悪感を抱かせることで行動を促そうとする働きかけを表す口語表現です。
家族との会話から広告の手法まで、遠回しな説得のあり方を指摘する場面に幅広く使える一言です。
絵本の意義を語りながらハワードの勇気に訴えかけたバーナデットと、それを見抜きつつも軽口で受け止めたハワードの掛け合いには、指摘し合いながらも互いを信頼している夫婦ならではの余裕がにじんでいました。


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