海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
「クビだ」とは言いにくい。それでも、辞めてもらわなければならない。そんな重い知らせを、少しでも柔らかく伝えたいと思ったことはありませんか。
そんなときにぴったりの「let someone go」を、『フレンズ』シーズン2第23話の後半、チャンドラーが、暴走したジョーイに解雇を告げるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「let someone go」の意味とニュアンス
let someone go
意味:(婉曲的に)解雇する、辞めてもらう
直訳すると「誰かを行かせる」です。握っていた手を開いて相手を送り出すイメージから、解雇を柔らかく伝える婉曲表現として使われます。fire が直接的で強い「クビ」なのに対し、let go は角の取れた言い方になります。
企業が正式に人員整理を伝える際の定番でもあります。We’re going to have to let you go. という形は、解雇通告の決まり文句として広く使われます。相手の落ち度を責めるより、やむを得ず送り出すという響きを持たせられるのが特徴です。
なお、文字どおり「手を放す、行かせる」という意味もあります。let go of my hand(手を放して)のように使う場合です。解雇の意味になるか、物理的に放す意味になるかは、文脈で判断します。
【ここがポイント!】
- 核は「握った手を開いて送り出す」という婉曲のイメージ
- fire の直接的な「クビ」に対し、角を取った柔らかい言い方
- 解雇通告の定番、文字どおり「手を放す」意味もあるのがコツ
『フレンズ』S02E23のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ジョーイが演じる架空の同僚ジョセフが、チャンドラーの職場をさんざん引っ掻き回した末、チャンドラーがついに解雇を宣告します。架空の人物だけをクビにはできず、やむなくジョーイごと切るしかない。その不条理な状況で、この一言が発せられます。
Chandler: If I could just fire Joseph, I would. But unfortunately that’s not possible. So I’m gonna have to let both of you go.
(ジョセフだけクビにできるなら、そうするさ。でも残念ながらそれは無理だ。だから、お前ら二人まとめて辞めてもらうしかない)Joey: What are you talking about? Everybody loves Joseph.
(何言ってんだよ。みんなジョセフが大好きなんだぞ)Chandler: I don’t. I hate Joseph.
(俺は違う。俺はジョセフが大嫌いだ)Friends Season2 Episode23(The One With the Chicken Pox)
シーン解説と心理考察
この台詞の見どころは、fire と let go が同じ場面に並んでいる点です。チャンドラーは「ジョセフだけ fire できるなら」と直接的な語を使い、続けて二人を let go すると婉曲的な語に切り替えます。強い「クビ」と柔らかい「辞めてもらう」の温度差が、一つの台詞の中で対比されています。
さらに可笑しいのは、チャンドラーが架空の人物ジョセフに本気で憎悪を燃やしている点です。実在しない同僚をクビにしたいのに、それができない。やむを得ず友人ジョーイごと切るという、堂々巡りの不条理がここにあります。
let go の持つ「穏当に送り出す」という柔らかい響きが、この茶番じみた状況の中で、かえって滑稽に響いてきます。丁寧な言い回しと、その裏にある本気の苛立ち。そのギャップが伝わってくる場面です。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
let someone go は、握っていた手を開いて、相手を行かせる動作を思い浮かべると覚えやすくなります。let が「〜させる」、go が「行く」。握った手をそっと開いて、相手を送り出す。この「手を放す」動作が、すべての用法の核にあります。
fire が「バンと撃つ」ような強い言葉だとすれば、let go は「握った手を静かに開く」柔らかい言葉です。チャンドラーは、友人ジョーイの手を、まとめて開かざるを得ませんでした。その不本意な手放しの場面を思い出せば、let go が持つ婉曲の温度が身につきます。
例文で覚える「let someone go」
let someone go は、解雇を柔らかく伝える場面で活躍します。フォーマル度の異なる3つの使い方を見ていきましょう。
I’m afraid we’re going to have to let you go.
(残念ですが、あなたには辞めていただくことになります)
解雇を正式に通告する場面です。I’m afraid を添えることで、言いにくさへの配慮がにじむ、決まり文句になります。
They had to let several workers go after the merger.
(合併後、彼らは数人の従業員を解雇せざるを得なかった)
やむを得ない人員整理を語る場面です。have to と結ぶと、望んでの決定ではないという含みが伝わります。
A: Did you hear Mark got let go?
B: No way, he’d been there for years.
(A:マークがクビになったって聞いた?)
(B:まさか、何年もいたのに)
同僚の解雇を噂する会話です。get let go とすると、受け身で「辞めさせられた」状態を口語的に表せます。
あわせて覚えたい関連表現
fire
(解雇する)
率直で強い「クビ」を表す語です。相手の落ち度を含意しやすく、let go が中立的で婉曲なのに対し、fire は直接的な響きを持ちます。劇中でチャンドラーが両方を使い分けている点が参考になります。
lay off
(一時解雇する、人員整理する)
本人の落ち度ではなく、経営上の理由による整理を指します。let go がより広く婉曲な解雇全般を指すのに対し、lay off は業績や再編に伴う解雇に限定されます。
dismiss
(解雇する、免職する)
フォーマルで、やや法的な響きを持つ語です。日常会話ではかたく感じられ、let go のほうが口当たりのよい言い方として好まれます。
Note|解雇を直接言わない、婉曲表現が育つ背景
チャンドラーが選んだ let go は、解雇を和らげる言い方の一つにすぎません。英語には、解雇を直接言わない表現が、層をなすほど積み重なっています。なぜこれほど多くの言い換えが育ってきたのでしょうか。
let go や lay off にとどまらず、企業の発表では downsize(規模を縮小する)、restructure(再編する)といった語も使われます。解雇という出来事を、個人への宣告から組織全体の話へと言い換えていく方向性が、そこには一貫して見て取れます。この層の厚さの背景としてよく語られるのが、雇用をめぐる訴訟リスクへの配慮、相手の面子を保とうとするコミュニケーション文化、そして企業が対外的な印象を和らげたい事情です。直接的な言葉が招きかねない摩擦を、言い換えの積み重ねが吸収してきたと言えます。さらに興味深いのは、婉曲表現が使われ続けるうちに元の意味が透けてしまい、また新しい言い換えが生まれるという循環です。言語学ではこうした現象を指す考え方もあり、let go 自体、もともとは fire の角を取る言い換えとして広まった言い方ですが、いまでは let go と聞けば多くの人が解雇を思い浮かべます。柔らかさは、使われるほどにすり減っていくのです。
チャンドラーの台詞で fire と let go が並んでいたのは、この層の存在があるからこそです。直接的な語と婉曲的な語のどちらを取り出すかを、話し手は場面と相手によって選び分けています。架空の同僚には fire を、友人には let go を。無意識の選択に、相手への距離感がにじんでいました。
言いにくいことほど、言葉は増えていくのかもしれません。
まとめ|手放すしかなかった一言
let someone go は、解雇を柔らかく伝える婉曲表現です。握った手を開いて送り出すイメージが核にあり、fire の直接的な「クビ」に対して、角を取った言い方になります。解雇通告の定番であると同時に、文字どおり「手を放す」意味も持ちます。
正式な通告から、やむを得ない人員整理、同僚の噂話まで、解雇にまつわる場面で幅広く使えます。チャンドラーのように、本当は手放したくない相手を、事情ゆえに送り出さなければならないこともあります。
握っていたものを、そっと放さなければならないとき。let someone go を思い出してみてください。表現の引き出しに加えてみてください。


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