海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
友人からの誘いを前に、心の中で「行こうか、やめとこうか」と天秤がゆっくり揺れ動くような瞬間が、日常にはよくあります。
そんな決めかねる気持ちにぴったりの「be on the fence」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン12第15話の前半、無重力体験の誘いに理屈っぽく難色を示すシェルドンの一言から、一緒に見ていきましょう。
「be on the fence」の意味とニュアンス
be on the fence
意味:決めかねている、どっちつかずでいる
be on the fenceは、柵(fence)の上にまたがって座り、どちらの側に降りるかまだ決めていない様子を比喩にした表現です。賛成か反対か、参加するかしないかなど、態度を決めかねている状態を広く言い表すことができます。
物理的に「柵の上にいる」という具体的な情景から、精神的にどちらの立場にも完全には属していない、宙ぶらりんの状態を表す意味へと転じている点が特徴です。本編のシェルドンのセリフのように、実際にはすでに気持ちが「乗り気ではない」方へ傾いているのに、あえて「決めかねていた」と表現する皮肉めじみた使い方もできる、幅の広い表現です。
【ここがポイント!】
- 「be on the fence」の核は、柵の上で降りる側を決めかねている姿のイメージ
- 賛成・反対どちらとも言い切っていない、宙ぶらりんな態度を表す表現
- 実際は気持ちが傾いている場合でも使える、軽い皮肉としての用法もある
『ビッグバン★セオリー』S12E15のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ハワードが無重力体験機「ヴォミット・コメット」の席を確保したと得意げに報告する場面です。単語を一つずつ拾い上げてはうんざりした様子を見せるシェルドンの理屈っぽい反応に注目です。
Howard: Hey, who wants to hear some exciting news?
(なあ、ワクワクするニュースを聞きたいやつは?)Leonard: Oh, what’s up?
(お、なんだよ?)Howard: This weekend, I got us four seats on the Vomit Comet.
(今週末、無重力体験機「ヴォミット・コメット」の席を4つ取ったんだ。)Sheldon: Oh, you lost me at “vomit,” you lost me again at “comet,” and to be honest, I was on the fence at “us.
(ああ、「嘔吐」のところでもうついていけなくなったし、「彗星」でまた置いていかれたし、正直言うと「僕たち」の時点ですでに迷っていたんだ。)Leonard: Yeah, I can’t go either.
(ああ、僕も行けないんだ。)The Big Bang Theory Season12 Episode15 (The Donation Oscillation)
シーン解説と心理考察
ハワードが「なあ、ワクワクするニュースを聞きたいやつは?」と切り出し、無重力体験機の席を確保したと胸を張って報告します。しかしシェルドンの反応は素っ気なく、「嘔吐」「彗星」という単語だけで既にうんざりし、「正直言うと『僕たち』の時点ですでに迷っていたんだ」と皮肉たっぷりに断りを入れる様子が描かれます。
セリフを単語ごとに区切って一つずつ茶化していく言い回しは、理屈っぽさが際立つシェルドンらしい反応の表れです。レナードも「僕も行けないんだ」とあっさり同調しており、ハワードの提案が仲間内で早々にしぼんでいく様子が、テンポよく描かれています。誘う側と誘われる側の温度差が、短いやり取りの中にくっきりと浮かび上がっている場面です。
ハワードが胸を張って報告した直後にたたみかけるように断りが続くこの構成は、期待が高まった分だけ落差が際立つ作りになっています。せっかくの誘いがことごとく空振りに終わる様子は、このグループならではのやり取りの流れとしても楽しめる場面です。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
柵にまたがって座り、右に降りるか左に降りるかを決めかねている人の姿を思い浮かべてみましょう。どちらの側にも足をつけないまま宙ぶらりんでいる格好が、そのまま「決めかねている」という意味につながります。
シェルドンが「嘔吐」「彗星」で次々についていけなくなり、最後に「僕たち」という一語だけで初めて「迷っていた」と口にした様子も、まさに柵の上で身動きが取れなくなっている状態そのものです。柵の両側を見比べながら迷っている自分をイメージしておくと、態度を決めかねる場面でこの表現がすっと出てくるようになります。
例文で覚える「be on the fence」
賛否を決めかねる場面で幅広く使えるbe on the fenceを、3つの例文で確認していきましょう。
I’m still on the fence about whether to take the new job.
(新しい仕事を受けるかどうか、まだ決めかねている。)
転職の決断に迷う場面です。still onと現在進行中であることを添えることで、迷いの継続感が伝わります。
Many voters remain on the fence just days before the election.
(選挙のわずか数日前になっても、多くの有権者はまだ態度を決めかねている。)
選挙報道でよく見かける表現です。remain onという語で、態度が長く定まらない様子を強調しています。
A: Are you coming to the party tonight?
B: I’m on the fence. I might be too tired.
(A:今夜のパーティーに来る?)
(B:迷ってるんだ。疲れすぎてるかもしれない。)
誘いへの返事に迷う友人同士の会話です。理由を一言添えるだけで、迷いの背景が自然に伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
sit on the fence
(態度をはっきりさせない、日和見をする)
be on the fenceが「決めかねている状態」そのものを指すのに対し、sit on the fenceは意見表明を避け続けるという行動・態度に重点を置いた表現です。
can’t make up one’s mind
(決心がつかない)
be on the fenceが柔らかい比喩表現であるのに対し、can’t make up one’s mindはより直接的に「決められない」ことを述べる言い方です。
torn between two options
(2つの選択肢の間で引き裂かれている)
be on the fenceが単に迷っている状態を表すのに対し、torn betweenはどちらも捨てがたく苦しんでいる、より強い葛藤のニュアンスを含みます。
Note|柵にまたがる人の姿から生まれた、be on the fenceの成り立ち
be on the fenceという表現は、19世紀のアメリカで政治的な立場を表す言葉として広まったとされています。
当時のアメリカでは、選挙や政策をめぐる議論の中で、どちらの陣営にもはっきり与しない人々を指して「柵の上に座っている」と表現する言い回しが使われるようになりました。柵は土地の境界を分けるものであり、その上に座るということは、どちらの土地にも足を踏み入れていない中立の立場を意味します。この視覚的にわかりやすいイメージが定着し、政治の場面に限らず、日常のあらゆる決断の場面で使われる慣用句へと広がっていきました。現在のアメリカのニュース報道でも、選挙戦の終盤になるとon the fenceという言葉が頻繁に登場し、態度を決めかねている有権者層を指す定番の表現として使われ続けています。
本編のシェルドンが使った場面は政治的な文脈ではありませんが、態度をはっきり決めかねているというニュアンスは、19世紀から変わらず受け継がれてきたものです。柵の比喩がここまで長く生き続けている背景には、誰にとってもわかりやすい情景の強さがあると言えます。土地の境界という具体的なものを比喩の土台にしているからこそ、時代が変わっても意味がぶれずに使われ続けているのかもしれません。
政治的な立場を表す表現がそのまま日常の細々とした決めかねる場面にも転用されていったという広がり方も興味深いところです。誘いに応じるかどうかという小さな迷いから、選挙の投票先を決めかねる大きな決断まで、同じ比喩でひとまとめに語れてしまう懐の深さが、この表現の息の長さを支えていると言えます。規模の大小を問わず使える柔軟さこそが、この表現が長く生き延びてきた理由なのかもしれません。小さな迷いにも大きな決断にも、同じ言葉で寄り添えるという点は、覚えておく価値のある特徴です。
まとめ|柵の上で揺れる気持ちを一言で
be on the fenceは、賛成でも反対でもない、決めかねている状態を柵の比喩で表す表現です。
物理的に柵の上にまたがっている姿を思い浮かべておくと、態度を決めかねる自分自身の気持ちも言葉にしやすくなります。
即答できないことを悪いことだと思う必要はありません。誘いに対する返事に迷ったときや、意見を求められて即答できないときに、この表現を会話のレパートリーに加えてみてください。
急いで白黒つけなくても、正直に「まだ決めかねている」と伝えられる、そんな一言です。


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