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自分では手を汚さず、面倒で気の進まない仕事を誰かにやらせる――そんな立ち回りをする人を、身の回りで見かけたことはありませんか。あるいは、いつも嫌な役回りばかり押し付けられている、と感じたことも。
そんな状況を言い表す「do one’s dirty work」(汚れ仕事を肩代わりさせる)を、『ビッグバン★セオリー』シーズン9第21話の後半、その夜の騒動を『ゲーム・オブ・スローンズ』になぞらえるラージのシーンから、一緒に見ていきましょう。
「do one’s dirty work」の意味とニュアンス
do one’s dirty work
意味:〜の汚れ仕事をする/(make someone do one’s dirty work で)自分は手を汚さず他人に嫌な仕事をやらせる
do one’s dirty work は、本人がやりたくない、後ろめたい、面倒な仕事を表します。ここでの dirty は物理的な泥汚れではなく、「気が引ける」「後ろめたい」という意味合いです。
このフレーズには、しばしば主従の構図が含まれます。do someone’s dirty work なら「誰かの嫌な役を肩代わりさせられる」側、make someone do one’s dirty work なら「他人に汚れ仕事を押し付ける」側、という具合です。解雇通告を部下にやらせる上司、自分は表に出ずに厄介事を人に回す人物など、「手を汚す人」と「汚さない人」の関係が背景にあります。日本語の「汚れ役」「面倒な役回り」に近い、含みのある表現です。
【ここがポイント!】
- 自分は手を汚さず、嫌な仕事を誰かにやらせる、という主従の構図が核
- dirty は泥汚れではなく「後ろめたい・気が引ける」という意味
- 「やらせる側」も「やらされる側」も表せる、使い分けの幅がある一言
『ビッグバン★セオリー』S09E21のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。病院での騒動が一段落したあと、ラージはその夜のいざこざを『ゲーム・オブ・スローンズ』の権力闘争になぞらえます。ペニーがシェルドンを使ってレナードを動かしていた件を、女王サーセイの策略にたとえます。
Raj: But you using Sheldon to do your dirty work is like when Cersei used the King’s Guard to do her bidding.
(でも、君がシェルドンを使って汚れ仕事をさせるのは、サーセイが王の盾を意のままに動かしたのと同じだよ)Sheldon: Cersei uses her body to manipulate men. Penny just takes me to The LEGO Store.
(サーセイは体を使って男を操る。ペニーはただ僕をレゴストアに連れて行くだけだ)Penny: There you go.
(ほらね)The Big Bang Theory Season9 Episode21(The Viewing Party Combustion)
シーン解説と心理考察
ラージの using Sheldon to do your dirty work という見立てには、ペニーが「自分の手は汚さず、シェルドンという手駒を動かしてレナードを操っていた」という構図が重なっています。do one’s dirty work が「他人に嫌な役をやらせる」という含みを持つからこそ、ペニーが裏で糸を引く策略家のように映り、笑いが生まれています。
ところがシェルドンが即座に「サーセイは体を使う、ペニーはレゴストアに連れて行くだけだ」と否定し、重い権力闘争のたとえを一気に日常の高さまで引き下ろします。壮大な比喩と、レゴストアという脱力する現実との落差が、この場面のオチとして響きます。深刻になりすぎない、TBBT らしい着地です。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
泥まみれになる嫌な作業を、自分は白い手袋のまま、別の誰かに手袋を外させて代わりにやらせる――そんな主従の絵を思い浮かべてみてください。do one’s dirty work は、「汚れる役を引き受ける、あるいは押し付ける」という、手を汚す人と汚さない人の構図が核になっています。
このシーンでは、ペニーが自分の手は汚さず、シェルドンという手駒を動かしてレナードを操った、という見立てが語られます。「女王が手駒に汚れ仕事をさせる」というラージのたとえと一緒に、白い手袋の女王と泥まみれの手駒の絵を思い描くと、do one’s dirty work の「やらせる」という構図が記憶に残りやすくなります。
例文で覚える「do one’s dirty work」
主従の構図が見える do one’s dirty work を、描写・拒否・会話の3つの角度から見てみましょう。
He always gets someone else to do his dirty work.
(彼はいつも、汚れ仕事は誰かにやらせる)
自分では手を汚さない人物を、批判的に描写する場面です。get someone to do の形で「人にやらせる」という構図がはっきり出ます。
The manager had his assistant do the dirty work of firing the team.
(マネージャーは、チームの解雇という嫌な役を部下に押し付けた)
責任者が、誰もやりたがらない仕事を部下に回す場面です。had someone do(使役)と組み合わせると、押し付けの構図がより明確になります。
A: Why do I always end up doing the dirty work around here?
B: Because you’re the only one who never says no.
(A:なんでいつも私がここの汚れ仕事をやる羽目になるの?)
(B:あなたが唯一、断らない人だからだよ。)
不公平な役回りに不満をこぼす会話です。end up doing(結局やることになる)とセットで、「やらされる側」の視点がよく伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
do one’s bidding
(〜の言いなりになって動く、命令に従う)
劇中で do one’s dirty work と並んで使われた、対になる表現です。do one’s bidding が「命令どおりに動く」という服従の側に焦点を当てるのに対し、do one’s dirty work は「嫌な・後ろめたい仕事」という、仕事の性質のほうに焦点があります。
pull the strings
(陰で糸を引く、裏で操る)
操る側、つまり黒幕の視点に立った表現です。do one’s dirty work が「やらせる側」と「やらされる側」の両面を表せるのに対し、こちらは操る側に限定されます。
take the fall
(〜の罪をかぶる、責めを引き受ける)
他人の代わりに結果責任を引き受けるニュアンスです。do one’s dirty work は作業そのものの代行で、必ずしも罪や責任とは限らない点が違います。
Note|dirty work の「汚れ」は道徳的な汚れ
do one’s dirty work の dirty を、文字どおり「泥で汚れた」と捉えてしまうと、このフレーズの本質を少し外してしまいます。鍵になるのは、ここでの「汚れ」が何を指すかです。
dirty work の dirty は、物理的な泥汚れではなく、「後ろめたい」「道徳的に気が引ける」という意味での汚れを指します。たとえば、誰かを解雇する、悪い知らせを伝える、裏で根回しをするといった仕事は、手が泥で汚れるわけではありませんが、引き受けるには気が重く、できれば避けたいものです。こうした「心理的に汚れる」役回りこそが dirty work です。だからこそ、do one’s dirty work は「自分はその後ろめたさを引き受けず、他人に押し付ける」という構図とセットで使われます。劇中でラージがペニーをサーセイにたとえたのも、ペニーが「シェルドンを動かしてレナードを操る」という、自分の手は汚さない立ち回りをした、と見立てたからです。物理的な汚れではなく道徳的な汚れだと分かると、なぜ解雇や根回しのような場面でこの表現が使われるのかが見えてきます。
dirty を「後ろめたさ」と読み替えるだけで、do one’s dirty work の使いどころが一気にはっきりします。
言葉の「汚れ」の正体が分かると、表現はぐっと使いやすくなります。
まとめ|手を汚さない女王と、泥まみれの手駒
do one’s dirty work は、後ろめたい、面倒な仕事を表し、しばしば「自分は手を汚さず他人にやらせる」という主従の構図を伴う表現です。dirty が指すのは泥汚れではなく、道徳的な後ろめたさです。
このフレーズが使えるようになると、誰かが裏で人を動かして嫌な役を押し付けている状況を、的確に言い表せるようになります。やらせる側にも、やらされる側にも使える幅広さが、この表現の便利なところです。
権力闘争の壮大なたとえが、レゴストアの一言で日常へ引き戻されるこの場面は、do one’s dirty work の含みを軽やかに見せてくれます。手を汚す人と汚さない人の構図を言葉にしたいとき、会話のレパートリーに加えてみてください。


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