海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
相手が事情をちゃんと分かっていたはずなのに、まるで知らなかったかのように振る舞われて、「分かってたでしょう?」と言いたくなったことはありませんか。
そんなときに使える「full well」は、know と結びついて「十分に分かっていて」という意味になる表現です。『ビッグバン★セオリー』シーズン6第12話のカフェテリアで、ラージがレナードを責める場面に登場します。どんなニュアンスを持つのか、一緒に見ていきましょう。
「full well」の意味とニュアンス
full well
意味:十分に分かっていて、百も承知で
full well は、ほとんどの場合 know とセットで使われ、「完全に・十分に分かっている」ことを強調する言い回しです。You knew full well(あなたは百も承知だった)のように、know の直後や前に置かれて、「知らなかったとは言わせない」という強い断定を加えます。
特徴的なのは、この表現が単なる強調にとどまらず、多くの場面で非難や皮肉の色を帯びる点です。「分かっていながら、あえてそうした」という含みで使われることが多く、相手の確信犯ぶりを責めるトーンになりやすい表現と言えます。
一方で、I know full well how hard you worked(あなたがどれだけ頑張ったか、重々承知しています)のように、相手を認める文脈でも使えます。know を強めるという機能は同じで、前後の内容で響きが変わります。
【ここがポイント!】
- full(満タン)+ well(よく)で「完全に分かっている」を表す強調の一言
- know とセットで使い、「知らなかったとは言わせない」という断定を加える表現
- 多くは「分かっていながら」という非難・皮肉の色を帯びるので、トーンの読み取りがコツ
『ビッグバン★セオリー』S06E12のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
シェルドンのアシスタントであるアレックスに、レナードが食事に誘われた——その話を聞いたラージが、かねてアレックスに気があっただけに、横取りされたと大げさに憤慨します。カフェテリアでレナードに食ってかかる、その第一声に full well が出てきます。
Raj: Leonard stole my woman, and he knew full well I was only six to eight months away from making my move.
(レナードが僕の女を盗んだんだ。僕があと半年ちょっとで勝負に出るって、彼は百も承知だったのに)Leonard: I didn’t steal anyone.
(誰も盗んでなんかいないよ)The Big Bang Theory Season6 Episode12(The Egg Salad Equivalency)
シーン解説と心理考察
ラージの「he knew full well」には、自分の片思いを周囲が当然把握しているべきだ、という一方的な思い込みがにじむ場面です。実際にはレナードはラージの「計画」など知る由もないのですが、ラージの中では「あと半年ちょっとで勝負」という妄想じみたスケジュールが既成事実になっています。
full well がここで効いているのは、ラージが自分を一方的に「裏切られた被害者」に仕立てている点です。「知っていたはずだ」と決めつけることで、レナードを確信犯に仕立て上げ、非難の正当性を作り出そうとする計算が表れています。
実際には誰も盗んでいない、というレナードの淡々とした否定との温度差が、ラージの空回りを際立たせています。full well の持つ「分かっていながら」という断定が、事実と食い違ったまま強い調子で響くことで、この場面のおかしさが生まれています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
グラスに水が並々と注がれて、もう一滴も入らないほど満タンになっている様子を思い浮かべてみてください。full well の full は、その「これ以上ないほど満ちている」イメージです。知識や理解が頭の中に満タンに入っている=「完全に分かっている」とつながります。
ラージが「あと半年で勝負だったのに、知ってたくせに!」と被害者ぶって訴えるシーンを重ねると、full well が持つ「分かっていながら(ひどい)」という非難の温度感まで、まとめて記憶に残ります。満タンの理解と責めるトーン、この二つをセットで覚えるのがコツです。
例文で覚える「full well」
full well は know と一緒に使うのが基本です。非難の文脈にも、相手を認める文脈にも使える幅を、3つの例文で見ていきましょう。
You knew full well I was saving that last slice of cake.
(私がその最後のケーキを取っておいてたの、あなた百も承知だったでしょう。)
家族や同居人に向けた、軽い非難の場面です。「分かっていながらやったよね」という確信犯への突っ込みが full well に乗っています。
She was full well aware of the risks before signing the contract.
(彼女は契約書にサインする前に、リスクを十分承知していた。)
ビジネスや契約の場面で、責任の所在を説明する一文です。aware と組み合わせて「十分に承知のうえで」という意味を作ります。
A: I can’t believe he showed up late again.
B: He knew full well the meeting started at nine.
(A:彼がまた遅刻してきたなんて信じられない。)
(B:会議が9時開始だって、彼は百も承知だったのにね。)
同僚同士の会話で、相手の確信犯ぶりに呆れる場面です。full well が「分かっていたはず」という非難をさりげなく強めています。
あわせて覚えたい関連表現
perfectly well
(完全に、よくよく)
You know perfectly well のように、こちらも know と結びついて強調する表現です。full well よりやや会話的で、皮肉にも使いやすい響きがあります。
all too well
(嫌というほどよく)
「(つらいほど)よく分かっている」という、苦い実感を伴う表現です。full well の「承知のうえで」と違い、知っていること自体が痛みを伴うニュアンスになります。
knowingly
(承知のうえで、故意に)
1語で「分かっていながら」を表す副詞です。full well knew が会話的なのに対し、knowingly は法律・契約など硬い文脈で「故意に」という意味で使われます。
Note|full well に残る、古い英語の名残
full well という言い方に出会うと、「なぜ fully well と言わないんだろう」と引っかかる人もいるかもしれません。実はこの full には、現代英語とは違う古い使い方が隠れています。
現代英語では full は主に形容詞(a full glass)や名詞として使われ、副詞なら fully が普通です。ところが古英語から中英語にかけては、full が「とても・十分に」を意味する副詞としても広く使われていたとされます。シェイクスピアの時代の英語にも full well や full many といった言い回しが見られ、当時は full を副詞的に使うのがごく自然な表現だったと考えられています。その副詞用法の多くは fully に置き換わって消えていきましたが、full well のような一部の定型句だけが、化石のように現代まで残ったとされます。
つまり full well は、文法的に「正しい/間違い」を問うべき表現ではなく、古い英語の名残をそのまま受け継いだ定型句なのです。だからこそ fully well と直そうとすると、かえって不自然になります。
ひとかたまりの古い言い回しとして、まるごと覚えてしまうのがいちばんです。
まとめ|ラージの空回りに学ぶ「百も承知」
full well は、know と結びついて「十分に分かっていて」を表す、強調の定型句です。多くの場合「分かっていながら」という非難や皮肉の色を伴い、相手の確信犯ぶりを責めるトーンになります。
この一言を知っておくと、「知らなかったとは言わせない」という気持ちを、英語でぐっと引き締めて伝えられるようになります。ラージのように事実とズレた使い方をすると空回りしますが、ここぞという場面で使えば、言葉に確かな重みが加わります。
事情を分かっていたはずの相手に、静かに念を押したいとき。そんな場面で使える表現として、会話のレパートリーに加えてみてくださいね。


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