海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
相手のちょっと失礼なひと言に、「まあ、今回は流しておくか」とぐっと飲み込んだ経験はありませんか。
そんな心の動きにぴったりなのが「let it slide」、大目に見る・聞き流すという表現です。『ビッグバン★セオリー』シーズン6第5話、アパートでシェルドンとエイミーがハロウィンのカップル衣装を決めようとして、なかなか折り合えないシーンから、一緒に見ていきましょう。
「let it slide」の意味とニュアンス
let it slide
意味:大目に見る、聞き流す、とがめずにおく
let it slide は、文字どおりには「それを滑らせる(ままにする)」という意味です。本来なら指摘したり反論したりすべきことを、あえて引っかけず「滑り抜けさせる」=問題にしない、という比喩から「大目に見る」「聞き流す」の意味になりました。
ポイントは、心から快く許すというより、「本当は気に入らないけれど、今回は流しておく」という、軽い苛立ちを飲み込むニュアンスを伴うことが多い点です。it の部分は that やほかの語に置き換えられ、let that slide、let one slide のように使われます。相手の無礼な発言や小さなミスを、あえて大ごとにせずに済ませる場面で活躍します。
【ここがポイント!】
- 「let it slide」の核は、引っかけず滑らせて通すイメージ
- 「快く許す」より「本当は不満だけど今回は流す」という飲み込みの一言
- it を that などに替えて let that slide のようにも使えるのがコツ
『ビッグバン★セオリー』S06E05のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
シェルドンが大好きなスター・ウォーズのロボット衣装を提案すると、エイミーは「好きでもないくだらない映画」とばっさり。スター・ウォーズへの侮辱は、シェルドンにとって本来なら見過ごせない重大事です。それでも彼は、ある理由をつけて「今回は見逃す」と告げます。
Amy: Sheldon, when I said couples costume, I meant like Romeo and Juliet or Cinderella and Prince Charming, not two robots from some silly movie I don’t even like.
(シェルドン、カップル衣装って言ったのは、ロミオとジュリエットとか、シンデレラと王子様みたいなののことよ。私が好きでもないくだらない映画のロボット2体じゃなくて)Sheldon: Okay, I’m gonna let that slide because I know you’re hopped up on tea bags.
(いいだろう、今のは大目に見てやろう。君がティーバッグでハイになっているのは分かっているからね)Amy: I make compromises for you all the time. Just this once, can’t we find something that we’re both happy with?
(私はいつもあなたに合わせているのよ。今回だけ、お互い納得できるものを見つけられない?)The Big Bang Theory Season6 Episode5(The Holographic Excitation)
シーン解説と心理考察
“I’m gonna let that slide” には、シェルドンらしい上から目線がにじむ場面です。彼にとってスター・ウォーズへの侮辱は本来とがめるべき違反ですが、ここでは「君がお茶でハイになっているから(=正常な判断ができていないから)許す」という、相手を見下した理由づけとセットになっています。
とはいえ、この「大目に見る」は、エイミーとの関係を壊さないための、シェルドンなりの譲歩でもあります。普段なら長々と訂正を始めるはずの彼が、ぐっと飲み込んで一言で済ませているところに、交際を通じた小さな変化が表れています。許すと言いながらどこか恩着せがましい、その絶妙なバランスが見どころと言えます。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
let it slide は、水たまりの上を何かがスーッと滑り過ぎていく様子を思い浮かべると覚えやすい表現です。引っかけて止めれば「とがめる」、滑らせて通せば「見逃す」——この対比が、そのまま意味になります。
シェルドンにとって「スター・ウォーズへの侮辱」は、普段なら絶対に引っかけて止める案件。それをエイミーのために(渋々)滑らせて通す姿を、あの恩着せがましい表情と一緒に覚えておくと、let it slide の手触りがしっかり残ります。
例文で覚える「let it slide」
本当は気になるけれど、あえて流す——そんな場面で活きる let it slide を、3つの例文で見ていきましょう。
He was rude, but I decided to let it slide this time.
(彼は失礼だったけど、今回は大目に見ることにした)
相手の無礼を許すかどうか迷ったうえで、あえて流すことにした場面です。劇中のシェルドンの使い方に最も近い、基本の形です。
Don’t let small mistakes slide, or they’ll become habits.
(小さなミスを見逃しちゃだめだ。癖になるから)
指導や教育の場面で、「見逃すと良くない」と戒めるときの使い方です。let ~ slide と目的語を挟む形になっています。
A: Aren’t you going to say something? He totally ignored your idea.
B: Nah, I’ll let it slide. It’s not worth the argument.
(A:何か言わないの? 彼、あなたの案を完全に無視したよ)
(B:いや、流しておくよ。言い争うほどのことじゃない)
対立を避けてやり過ごす判断を示す会話です。「今回は黙っておく」という飲み込みのニュアンスがよく出ています。
あわせて覚えたい関連表現
overlook
(見落とす、大目に見る)
overlook は「気づかず見落とす」と「あえて見逃す」の両方を含むやや硬めの語です。let it slide は意図的に流すニュアンスが明確で、より口語的です。
turn a blind eye
(見て見ぬふりをする)
不正や問題に気づきながら、意図的に無視するというややネガティブな含みがあります。let it slide は軽い無礼や小さなミスにも使える点で、もっと幅広く使えます。
let it go
(水に流す、こだわるのをやめる)
let it go は「感情的に手放す・忘れる」ことに焦点があります。let it slide は「今回はとがめない」と、その場の対応に重きがある点が違います。
Note|let it slide / let it go / turn a blind eye の違い
「とがめない」と訳せる表現はいくつもありますが、その温度は少しずつ違います。
let it slide、let it go、turn a blind eye は、どれも日本語にすると「見逃す」「水に流す」あたりに重なりますが、向いている方向が異なります。let it slide は、目の前の無礼やミスを「今回は問題にせず流す」という、その場の対応に焦点があります。let it go は、過去の出来事や感情を「もうこだわらない、手放す」という内面の処理に重きがあり、ディズニー映画の主題歌でも知られる通り、感情を解き放つイメージです。一方 turn a blind eye は、不正や問題に気づいていながら「あえて見ないふりをする」という、やや後ろ暗い黙認のニュアンスを帯びます。
シェルドンが使った let that slide は、まさに「目の前の侮辱を、今回は流す」という第一のタイプ。感情を手放したわけでも、不正を黙認したわけでもなく、その場で一度だけ引っかけずに通した、という距離感がぴったりです。
同じ「見逃す」でも、どこを見逃すのかで言葉が変わるのが面白いところです。
まとめ|「今回は流す」をひと言で
let it slide は、本来なら指摘すべきことを、あえて引っかけず滑らせて通す——そんな飲み込みの一言です。心から許すというより、「今回は流しておく」という軽い我慢がにじむのが、この表現らしさです。
これを知っていると、相手のちょっとした無礼や小さなミスに、いちいち反応せず大人の対応ができる場面が増えます。it を that に替えるだけで応用も利き、会話の中でさっと使える表現です。
引っかけて止めるか、滑らせて通すか——その小さな選択を言葉にできる表現として、会話のレパートリーに加えてみてください。


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