海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
昨日は前向きだったのに、今日はそっけない。相手の温度が上がったり下がったりして、自分の立ち位置が分からなくなってしまう。そんな関係に振り回された経験はありませんか。
そんなときにぴったりの「blow hot and cold」を、『メンタリスト』シーズン2第13話の後半、交際を申告した直後のリグスビーとヴァン・ペルトが、仲直りのつもりで始めた会話をこじらせてしまうシーンから、一緒に見ていきましょう。
「blow hot and cold」の意味とニュアンス
blow hot and cold
意味:態度がころころ変わる
同じ口から熱い息と冷たい息を吹く、という動作をそのまま比喩にした表現です。同じ相手や同じ話題に対して、乗り気になったり冷めたり、賛成したり反対したりを繰り返す状態を表します。
大事なのは、両極を行き来しているという点です。ずっと曖昧なだけの人には使いません。はっきり温かいときと、はっきり冷たいときの両方があるからこそ、受け取る側は振り回されます。そのためこの表現には、相手の一貫性のなさを責める響きが伴います。
使うときは on を続けて「誰に対して」を示す形と、about を続けて「何について」を示す形があります。You blow hot and cold on me. なら相手との関係そのものが対象になり、He’s blowing hot and cold about the offer. なら特定の案件についての態度を指します。主語は人だけでなく、企業や組織にも置けます。
【ここがポイント!】
- 同じ口から熱い息と冷たい息を吹く、という矛盾した動作が核
- 両極を行き来するのが条件。ずっと曖昧なだけの相手には使わない
- on で「誰に対して」、about で「何について」を示し分けるのがコツ
『メンタリスト』S02E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
交際を上司に申告したリグスビーとヴァン・ペルトは、どちらかが異動になる可能性を抱えています。先に交わした会話でぎくしゃくした二人は、仲直りのつもりで話し直すのですが、話題は将来のことへ飛び火し、かえって溝が深まっていきます。そのこじれが頂点に達したところで、リグスビーの口から今回のフレーズが出ます。
Rigsby: Do we have to discuss this right now?
(今この話をしなきゃいけないのか?)Van Pelt: Yeah, we probably should have done it before we announced our relationship and I endangered my job.
(ええ。本当なら、交際を申告して私が仕事を危うくする前に話しておくべきだったのよ。)Rigsby: Well, my job’s on the line, too.
(俺の仕事だってかかってる。)Van Pelt: That’s not what you said before. You have seniority, remember?
(さっきと言ってることが違う。あなたのほうが先輩でしょ?)Rigsby: Look, Grace, I know you’re scared, but you can’t keep blowing hot and cold on me like this, not now.
(なあグレース、怖いのは分かる。でも、そんなふうに態度をころころ変えられたら困るんだ。今はなおさらだよ。)The Mentalist Season2 Episode13 (Redline)
シーン解説と心理考察
短いやり取りの中で、二人の立ち位置が何度も入れ替わります。ヴァン・ペルトは将来のことを話したいと言いながら、結婚という具体的な話題からは身を引きます。リグスビーはその矛盾に苛立ち、blowing hot and cold という一語でまとめて指摘します。
ただし、態度が定まらないのは彼女だけではありません。この直前、リグスビーは自分のほうが先輩だから異動するのは彼女だ、という前提で話しておきながら、責められた途端に「自分の仕事も危ない」と言い換えています。相手の一貫性のなさを責める言葉が、そのまま自分にも返ってくる構図になっています。
この場面が印象に残るのは、どちらも相手を傷つけたいわけではないからです。異動という現実的な不安を前に、それぞれが自分の身を守ろうとした結果、言葉だけが噛み合わなくなっていく。駆け引きではなく、追い詰められた二人のすれ違いとして描かれている点が見どころです。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
寒い日に、かじかんだ手へ息を吹きかけて温める。そのすぐ後で、熱すぎるスープに息を吹きかけて冷ます。口はひとつなのに、出てくるものは正反対です。この矛盾した二つの動作を並べて思い浮かべてみましょう。
リグスビーが感じていたのも、この温度差でした。近づいてきたかと思えば距離を取られる、その繰り返しに耐えかねて出てきた一言です。息を吹く口元の絵と on me という言い方をセットで覚えておけば、誰に対して振り回されているのかまで含めて口に出せるようになります。
例文で覚える「blow hot and cold」
責める側から使う表現なので、語気の強さを場面に合わせて調整します。人について話す場面、仕事について話す場面、本人に直接言う場面で見てみましょう。
He’s been blowing hot and cold about the trip all week.
(彼はその旅行の件で、一週間ずっと行く気になったり冷めたりしています。)
共通の友人の様子を、別の友人に伝える場面です。about のあとに話題を置くと、人柄ではなくその件についての態度だと限定できます。
The client keeps blowing hot and cold on the design.
(クライアントがデザインの件で二転三転しているんです。)
進行中の案件について、社内で状況を共有する場面です。keep を添えると、一度きりではなく繰り返されていると伝わります。
A: So are we still on for Saturday or not?
B: I don’t know. You’ve been blowing hot and cold on me all month.
(A:それで、土曜日はまだ予定どおりでいいの?)
(B:分からない。この一か月、ずっと態度がころころ変わってるじゃない。)
関係をはっきりさせたい側が踏み込む会話です。on me を添えると、話題ではなく自分との関係そのものが対象だと示せます。
あわせて覚えたい関連表現
run hot and cold
(気分次第で変わる)
ほぼ同じ意味で使えますが、人の態度だけでなく、機械の調子や出来のばらつきにも使えます。blow のほうが人間関係の文脈に寄っているのが違いです。
be wishy-washy
(煮え切らない、はっきりしない)
一貫して曖昧な状態を指します。両極を行き来する動きが前提の blow hot and cold とは、指している状態そのものが別だと押さえておきましょう。
keep someone guessing
(相手にはっきりさせない)
分からせないこと自体が目的になっている場合に使います。blow hot and cold が無自覚な揺れにも使えるのに対して、こちらは意図が含まれます。
Note|イソップ寓話から生まれた言い回し
同じ口から熱い息と冷たい息を吹く。この妙に具体的な絵は、どこから来たのでしょうか。この表現は、イソップ寓話のひとつ「サテュロスと旅人」に由来するとされています。
物語はこうです。冬の森で道に迷った旅人を、半人半獣のサテュロスが自分の住処に招き入れます。旅人はまず、かじかんだ手を温めようとして自分の手に息を吹きかけます。理由を尋ねられると、冷えた手を温めるためだと答えます。やがて温かいスープが出されると、今度は皿に息を吹きかけます。理由を尋ねられると、熱すぎるから冷ますためだと答えます。これを聞いたサテュロスは、同じ口から熱いものと冷たいものを出す相手は信用できないと言って、旅人を追い出してしまいます。
寓話の教訓がそのまま慣用句の意味になっている、という点でこの表現は珍しい例です。多くの慣用句は、元の場面から意味だけが抜き出されて残ります。ところが blow hot and cold の場合は、「同じ口から」という動作そのものが比喩の中核として保存されました。だからこそ、単なる優柔不断ではなく、正反対の態度を同じ相手に向けているという条件が今も生きています。
リグスビーがヴァン・ペルトに投げたのも、この条件を満たす一言でした。冷たいだけなら別の言葉が選ばれたはずです。温かいときが確かにあったからこそ、その落差が耐えがたくなります。
古い寓話の教訓が、現代の恋人同士の口論にそのまま収まっている表現です。
まとめ|温度差に耐えかねた一言
blow hot and cold は、同じ相手に対して正反対の態度を行き来する状態を、ひとつの口から出る二種類の息にたとえた表現です。曖昧なのではなく、はっきり温かいときとはっきり冷たいときの両方がある。その落差こそが、この言葉の指しているものです。
この言い方を持っていると、相手の態度に感じたもやもやを、責めすぎずに言葉にできます。気まぐれだと決めつけるかわりに、振り回されている自分の側の困りごととして伝えられるからです。関係を壊さずに立ち止まる、そのための一言になります。
リグスビーが口にしたのも、まさにその立ち止まりでした。温度差に戸惑った場面を思い出しながら、表現の引き出しに加えてみてください。


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