「have it coming」の意味と使い方|『メンタリスト』S02E14で学ぶ英会話

「have it coming」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

誰かの不運を聞いた瞬間に、あの人なら仕方ない、と結論が先に出てしまう。そういう瞬間が、ドラマにも現実にも時々あります。

その断定をそのまま言い表すのが「have it coming」で、自業自得だ、という意味です。『メンタリスト』シーズン2第14話の序盤、被害者の元上司に会いに行こうとするジェーンに、チョウが冷たく言い放つ車内の場面に登場します。どのように使われているのか、一緒に見ていきましょう。

目次

「have it coming」の意味とニュアンス

have it coming
意味:自業自得だ、当然の報いだ

降りかかった不運や罰を、本人の行いが招いた当然の結果として扱う言い方です。it は本人が呼び寄せた結果を指し、coming はそれが今こちらへ向かっている状態を表します。have がその到着を「もう受け取ることが決まっている」と確定させます。

同情を断ち切る響きがあるのが最大の特徴です。だから本人に面と向かって使えば、かなり冷たく届きます。第三者について語る場面で使われることが多く、その場合も話し手が判定を下しているような響きが残ります。

形は He had it coming. のように過去形が基本で、進行の感覚を残したまま It’s coming to him. と言うこともできます。強すぎる言い方を避けたいときは、I’m not saying he had it coming, but … のように前置きを添えて棘を抜くのが定番です。自分に向けて I had it coming. と言えば、自嘲の響きになります。

【ここがポイント!】

  • 核は、自分が投げたものが後から返ってくるという絵
  • 同情を打ち切る強い一言。本人に向けるとかなり冷たく響く
  • I’m not saying … but の前置きで棘を抜くのが実用上のコツ

『メンタリスト』S02E14のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

殺された男は、チョウがかつて兄弟のように過ごした旧友でした。担当外の事件に関わるつもりはないと言い切ったチョウは、被害者をひとことで片づけようとします。捜査を続けようとするジェーンが、その言い方だけを拾って短く問い返します。

Jane: Let’s go pay a visit to David’s old boss.
(デヴィッドの元上司に会いに行こう)

Cho: What’s the point? He was a banger.
(意味があるか。奴はギャングだった)

Jane: So he had it coming?
(じゃあ、自業自得だと?)

Cho: Yes.
(そうだ)

Jane: Let’s go and see his boss, get a second opinion.
(上司に会おう。別の見方も聞いてみよう)

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シーン解説と心理考察

ジェーンは反論をしていません。チョウが口にした内容を、そのまま短い一言に言い換えて差し出しているだけです。相手の言葉の重さを本人に測らせるやり方で、説得よりもはるかに効く問い方だと言えます。

返ってくる Yes は一語です。ためらいのなさが、かえって身構えの強さを見せています。ギャングだった、だから当然だ、という筋書きを先に立てておけば、折り返さなかった電話のことを考えずに済む。断定の速さに、そこから目をそらしたい気持ちがにじむ場面です。

ジェーンはそれ以上追わず、別の見方を聞きに行こうと提案して話を前へ進めます。押し戻さずに行き先だけ変える運び方が、二人の間合いをよく表しています。物語の終盤で、この断定がチョウ自身の手で取り下げられることになります。

『メンタリスト』流・覚え方のコツ

自分が投げたブーメランが、しばらく飛んだあとで背中に戻ってくる場面を思い浮かべてみましょう。it は本人が投げたもの、coming はそれが今こちらへ向かっている途中、have はもう受け取ることが決まっている状態です。三つの部品が、そのまま一本の軌道になっています。

劇中でこの言葉を投げたのはチョウでした。旧友に向けた冷たい一言が、終盤には自分のほうへ戻ってくる。ブーメランの絵と物語の形がぴたりと重なるので、この回で覚えると忘れにくくなります。

使うときも、投げた本人の手元に戻る軌道を思い出してみてください。

例文で覚える「have it coming」

強い言い方なので、誰に向けるかで印象が大きく変わります。距離感の違う三つの場面で見ていきましょう。

He lied to everyone on the team, so he had it coming.
(チーム全員に嘘をついていたんだから、自業自得だ)
同僚の処分について話す場面です。so でつなぐと、理由と結果が一直線に並び、判定の断固とした感じが強まります。

I’m not saying she had it coming, but she ignored every warning.
(自業自得とは言わないけど、警告を全部無視していた)
厳しい見方をやわらげたいときの形です。前置きで否定しておきながら、結局は同じ結論へ寄せていく話し方になります。

A: Did you hear he got fired?
B: Honestly, he had it coming.
(A:彼、クビになったって聞いた?)
(B:正直、当然だと思う)
社内の噂話を想定した会話です。Honestly を添えることで、口に出しにくい本音をこぼす感じが出ます。

あわせて覚えたい関連表現

It serves you right.
(ざまあみろ、当然の報いだ)
面と向かって相手に投げる形が基本で、勝ち誇る響きを含みます。第三者について語る場面でも使える今回のフレーズより、当てこすりの色が濃くなります。

get what one deserves
(相応の報いを受ける)
中立的な言い方で、良い結果にも使えます。ほぼ悪い結果に限られる今回のフレーズとは、守備範囲が違います。

reap what one sows
(まいた種を刈り取る)
改まった響きがあり、文章や演説に向きます。日常会話では今回のフレーズのほうが自然です。

Note|人はなぜ「自業自得」と考えたがるのか

チョウの Yes は、事件について何かを知っていて出た答えではありません。それでも即座に出てきます。この速さには、言葉づかいというより人間の心の働きが関わっています。

社会心理学には、世界はおおむね公正にできていて、人は自分の行いに見合った結果を受け取るはずだと信じたがる傾向がある、という考え方があります。公正世界信念と呼ばれるもので、1960年代から議論が重ねられてきました。この信念を持っていると日々の努力に意味を見出しやすくなる一方、説明のつかない不運に出会ったときに困ったことが起きます。世界が公正であってほしいなら、その不運にも理由がなければならない。そこで人は、被害を受けた側の落ち度を探し始めます。危ない場所にいたからだ、生き方が悪かったからだ、と。理不尽さを認めるより、本人のせいにするほうが世界の見取り図を保てるからです。この反応は、被害者非難と呼ばれる形で問題にされてきました。have it coming は、まさにこの心の動きがそのまま短い一句になったような表現です。だからこそ強く響き、同時に、口にした側の事情まで映してしまいます。

劇中のチョウは、折り返さなかった電話の記憶を抱えたまま、この言葉を選びました。旧友の死に理由をつけてしまえば、自分の側を見ずに済む。断定の速さは、確信ではなく回避の速さだったことが、終盤で明らかになります。

強い言葉ほど、誰を守るために出てきたのかを問い直す価値があります。

まとめ|断定が誰を守っているのか

have it coming は、降りかかった結果を本人の行いに結びつけて、同情の余地を打ち切る表現です。相手を評価しているように見えて、実際には話し手が世界の筋道を整えている一言だと言えます。

会話に入れると、長い説明なしに評価を伝えられます。裏切りにも、無謀な行動にも、繰り返された警告無視にも使えて、前置きを添えれば強さの調整もききます。使いどころの見極めがそのまま距離感の見極めになる表現です。

劇中でこの一言を投げたチョウは、終盤で自らそれを取り下げることになりました。断定は早いほど気持ちがいい代わりに、覆るのも早い。そんな性質を持つ表現と言えます。

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