海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
会議の席で意見が割れたとき、断言はしたくないけれど自分はこちらを推したい。そんな前置きを探して言葉に詰まるような場面があります。
英語にはそこにぴったりはまる「for my money」という言い方があります。『メンタリスト』シーズン2第22話の中盤、事情聴取を受けた団体代表が、思い出したように別の目撃情報を差し出すシーンに登場します。お金の話をしていないのになぜ money なのか、一緒に見ていきましょう。
「for my money」の意味とニュアンス
for my money
意味:私に言わせれば、私が見るところでは
自分の意見や評価を切り出すときに置く前置きです。直訳すると「私のお金にとっては」となりますが、実際の会話で金額の話をしているわけではありません。「自分の金を賭けるならこちらだ」という判断の構えが、そのまま意見表明の型として定着したものです。
似た前置きに I think や in my opinion がありますが、for my money にはもう一段の重みがあります。単なる感想ではなく、複数の選択肢を比べたうえで自分はこれを選ぶ、という判断の結果を示すからです。そのため、作品の順位づけ、方針の選択、人物の評価など、比較が前提になる話題と特に相性がよくなります。
くだけた場でも仕事の場でも使える中間的な語感ですが、書き言葉の報告書に置くとやや口語的に響きます。文頭に置くのが基本で、文の途中に差し込むこともできます。my を our に替えた形は一般的ではなく、あくまで話し手個人の見立てを示す表現として使われます。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「自分の金を賭けるならこれ」という判断の構え
- 感想ではなく、比べたうえで選んだ結論を示す前置き
- 金額の話は一切していないので、money に引きずられないのがコツ
『メンタリスト』S02E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
被害者が用意していた告発演説は、人身売買撲滅をうたう団体の代表リンチを名指しするものでした。CBIの追及を受けたリンチは関与を全面的に否定し、資料をすべて開示すると申し出ます。話が終わりかけたところで、彼は思い出したようにもう一つの情報を差し出します。捜査の目を自分から遠ざけたい人物がどんな前置きを選んだのかが見どころです。
Cho: Can you think of anybody who’d want to kill Brava?
(ブラバを殺したがっていた人物に心当たりは?)Lynch: Oh, yeah, maybe only a few hundred people. Wait a second. One thing. Second night of the convention, I saw Hector having an argument with a man named Tariq Sharif outside the hotel bar, and for my money, the argument was about a woman.
(ええ、数百人くらいならね。いや、待ってくれ。ひとつある。会議二日目の夜、ヘクターがタリク・シャリフという男とホテルのバーの外で口論しているのを見た。で、私に言わせれば、あれは女のことだ)Cho: How could you tell?
(なぜそう言える?)Lynch: Because I know these guys, and they definitely weren’t having a discussion about immigration policy.
(彼らを知っているからだ。移民政策の議論をしていたわけじゃないのは確かだよ)The Mentalist Season2 Episode22(Red Letter)
シーン解説と心理考察
for my money という前置きが、この場面では二重に働いています。ひとつは情報に説得力を持たせる働きです。ただの噂ではなく自分の見立てとして差し出すことで、聞き手は情報を受け取りやすくなります。
もうひとつは、責任を負わずに済ませる働きです。断定していない以上、後から事実と違っても嘘をついたことにはなりません。追及されている立場の人物が、この保険つきの前置きを選んだところに計算がにじむ場面です。
「なぜそう言える?」と即座に返す一言も見逃せません。前置きで和らげられた情報を、根拠のある証言へ引き戻そうとする問いだからです。差し出す側は軽く、受け取る側は重く扱おうとする。その温度差が会話の緊張をつくっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
競馬場やカジノで、どの馬にいくら賭けるかを決める瞬間を思い描くと覚えやすくなります。周りが何を言おうと、財布から札を出して自分の手で一枚を置く。その置いた瞬間の気持ちが、そのまま for my money の中身になります。
このシーンでリンチが差し出した見立ても、札を一枚だけ置くような差し出し方でした。全財産ではなく、あくまで自分の分だけ。だから外れても痛手になりません。money という語が入っているのに金額の話をしていない理由は、賭けの「額」ではなく「選ぶ動作」だけを借りているからだと押さえておくと、意味が迷子になりません。
例文で覚える「for my money」
比較の話題と組み合わせると、この表現の持ち味が最もはっきり出ます。3つの場面で見ていきましょう。
For my money, the second album is the best thing they ever recorded.
(私に言わせれば、2枚目のアルバムが彼らの最高傑作だ)
音楽や映画の評価を語る場面です。最上級と並べると、自分の基準では一位だという含みが自然に立ち上がります。
For my money, we should launch in March rather than wait until summer.
(私の見るところ、夏まで待つより3月に開始すべきです)
会議で判断を示す場面です。断定を避けながら自分の推しをはっきり出せるので、意見が割れているときに使いやすくなります。
A: Everyone says the new manager is too strict.
B: For my money, that’s exactly what this team needed.
(A:新しいマネージャーは厳しすぎるって、みんな言ってるよ)
(B:私に言わせれば、このチームにはまさにそれが必要だったんだ)
世間の評価に自分の見方をぶつける場面です。多数派と違う立場を示すときに置くと、対立を和らげる働きもします。
あわせて覚えたい関連表現
if you ask me
(私に言わせれば)
聞かれてもいないのに意見を差し出す含みが強い言い方です。今回のフレーズより口語的で押しが強く、不満や苦言を切り出す場面で選ばれやすくなります。
in my book
(私の考えでは)
自分なりの評価基準を持ち出す言い方です。今回のフレーズが判断の結果を示すのに対し、こちらは判断のものさし自体を前に出すため、人物評と特に相性がよくなります。
as far as I’m concerned
(私に関して言えば)
他人がどう思おうと自分はこうだ、と線を引く響きがあります。三つの中では最も強く、今回のフレーズのような柔らかい前置きとは温度が異なります。
Note|意見の前置きは、どう移り変わってきたか
自分の考えを差し出すとき、英語話者は必ずといっていいほど何かを前に置きます。I think、in my opinion、if you ask me、for my money。同じ内容でも、どれを選ぶかで話し手の姿勢が変わります。この前置きの層をたどってみます。
古い英語には methinks という一語の形がありました。「私には〜と思われる」という意味で、シェイクスピアの作品などに残っています。これは意見を自分の主張ではなく、自分の中に自然に浮かんだ印象として差し出す言い方でした。やがて I think が主流になり、主語をはっきり立てて意見を述べる形が定着していきます。
そこに加わったのが、比喩を借りた前置きの一群です。for my money は賭けの発想から、in my book は帳簿や記録の発想から、as far as I’m concerned は関与の範囲を線引きする発想から生まれたとされています。どれも「意見」という抽象的なものを、賭ける、記す、線を引くという具体的な行為に置き換えている点で共通しています。
この流れを見ると、前置きの選択が単なる丁寧さの調整ではないことが分かります。for my money を選ぶ人は、自分の意見を賭けた結果として差し出しています。劇中のリンチが選んだのもこの形でした。証言としては軽く、見立てとしては重い。その中間に置ける前置きだからこそ、追及の場で使い勝手がよかったと言えます。
前置きをひとつ選ぶだけで、意見の重さは自在に変わります。
まとめ|賭けるように意見を置く一言
for my money は、自分の意見を賭けた結果として差し出す前置きです。断定はしないけれど、比べたうえでこちらを選んだ。その判断の手触りを一語で示せるところに価値があります。
この前置きがあると、意見が割れている場面でも角を立てずに自分の立場を出せます。作品の評価でも仕事の方針でも、言い切らずに推しを明示できるので、議論を止めずに前へ進める言葉として働きます。
お金の話をしていないのに money が残っている。その不思議さごと覚えておくと、会話で耳にしたときに意味を取り違えずに済む表現と言えます。


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