海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
この人はこういう人だ、と早々に決めてかかったあとで、まるで違っていたと気づいたことはありませんか。英語には、そうやって人物像に札を打ちつけてしまった状態を、一語で表す言い方があります。
その表現「have someone pegged」を、『メンタリスト』シーズン4第3話、自称霊能力者のネイサン・グラスと二人きりで向き合ったジェーンが、揺さぶりをかける場面から、一緒に見ていきましょう。
「have someone pegged」の意味とニュアンス
have someone pegged
意味:〜がどういう人間か見抜いている、〜を〜だと決めつけている
have someone pegged は、相手がどんな人物かを見抜いた、またはそうだと決めている状態を表します。peg には人や物を特定の類型に位置づける動詞用法があり、この表現でも人物像を定める感覚が中心です。
この表現の面白いところは、評価の向きが決まっていないことです。よく見抜いているという称賛にもなれば、決めつけているという非難にもなる。どちらに転ぶかは話し手の立場と文脈が決めます。共通しているのは、判断がすでに済んで固定されているという一点だけです。
peg A as B の形にすれば、どんな札を貼ったのかまで言えます。I had you pegged as a coffee person. なら、あなたはコーヒー派だと思っていた、という意味です。判断が外れていたと認めるときは all wrong を添えて、札ごと引き抜くように使います。
【ここがポイント!】
- 核は、相手の人物像を見定めているという感覚
- 見抜くとも決めつけるとも取れる、向きの決まっていない一語
- have you pegged と get you pegged はほぼ同義で、会話では get も頻出
『メンタリスト』S04E03のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
グラスはベスの前で、行方不明の息子と交信してみせました。かつて同じ手口を使っていたジェーンには、その仕掛けがすべて見えています。屋外で二人きりになったところで手を引けと迫りますが、グラスは応じるどころか、ジェーンの過去のほうへ踏み込んできます。正面から押し切れなくなったジェーンが、相手への評価そのものを貼り替えにかかる一語に注目です。
Jane: You don’t want to push me. Back off this woman. Get out of here right now, or you’re gonna regret it.
(僕を押さないほうがいい。あの人から手を引け。今すぐここを出ていかないと後悔することになる)Glass: Yeah. I can understand your frustration. You had the vision, and you lost it, and I… I can’t think of anything more horrible.
(ええ。あなたの苛立ちは分かります。かつて視えていたものを失った。それ以上に恐ろしいことは思いつきません)Jane: You got a lot of nerve. Maybe I’ve got you pegged all wrong. Maybe you’re a kidnapper, too.
(よくもそんな口が利けるな。君のことをまるで読み違えていたのかもしれない。誘拐犯でもあるのかもしれない)The Mentalist Season4 Episode3 (Pretty Red Balloon)
シーン解説と心理考察
ジェーンははじめ、正面から退かせようとしています。一線を越えた、子どもの命がかかっている、今すぐ出ていけ。理屈も脅しも順に並べていますが、グラスはどれにも動じません。それどころか、あなたは視る力を失った人なのだと、こちらの過去を筋書きに組み込んで返してきます。
押し切れないと分かった時点で、ジェーンは攻め方を切り替えます。相手が何者かという評価そのものを引っくり返しにかかる。詐欺師という札を外して、誘拐犯という札を貼り直す動きです。読み違えていたのかもしれない、という言い方には、判断を保留しているように見せながら相手を容疑者の位置へ押し込む狙いがうかがえます。
ただしこの一手は、直後にリズボンがアリバイを示して打ち消してしまいます。揺さぶりが不発に終わるまでの速さもまた、このやり取りの見どころです。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
覚え方として、コルクボードに人の写真を貼り、その上から画鋲で人物像の札を留める場面を思い浮かべてみましょう。これは語源の説明ではなく、「この人はこういう人だ」と見立てを定める感覚を記憶するための比喩です。
判断が外れたと気づいたときは all wrong を添えます。劇中のジェーンも、相手への見立てを「詐欺師」から「誘拐犯かもしれない」へ揺さぶっています。札を貼り替える絵で覚えると、正しい見抜きにも誤った決めつけにも使える幅をつかみやすくなります。
例文で覚える「have someone pegged」
判断が固定されている状態を指すので、思い込みが外れた場面でとくによく登場します。3つの場面で見ていきましょう。
I had you pegged as a coffee person, not tea.
(あなたはコーヒー派だと思い込んでいた。紅茶じゃなくて)
相手の意外な好みを知ったときの一言。peg A as B の形にすると、どんな札を貼っていたのかまで具体的に言えます。
She had him pegged after the first interview.
(彼女は最初の面接で彼を見抜いていた)
採用や商談での見立てを振り返る場面。同じ形でも、こちらは相手の本質を早い段階で正しくつかんでいたという称賛になります。
A: You’re actually into horror movies? I had you pegged all wrong.
B: People usually do.
(A:ホラー映画が好きなの? すっかり読み違えてた)
(B:たいていそう言われる)
雑談で相手の意外な一面を知った場面。all wrong を添えると、自分の見立てが的外れだったと素直に認める言い方になります。
あわせて覚えたい関連表現
size someone up
(値踏みする、品定めする)
判断がまだ進行中の観察を指します。have someone pegged が結論の出た状態なのに対して、こちらは相手を見ながら測っている最中の動きです。
get a read on someone
(人柄や意図を読み取る)
読み取る作業そのものに焦点があり、決めつけの含みはほとんどありません。have someone pegged にある「固定されてしまった」という手触りが薄いのが違いです。
have someone’s number
(相手の手口や本性を見抜いている)
相手に手玉に取られない、という優位の含みが強く出ます。have someone pegged が人物像の把握なのに対し、こちらは相手の出方まで読めている状態を指します。
Note|「見抜く」と「決めつける」を一語で
日本語では、人を判断することを表す言葉が評価の向きではっきり分かれています。見抜くと言えば称賛、決めつけると言えば非難。同じ行為を指していても、どちらの語を選ぶかで、話し手がその判断を支持しているのか批判しているのかまで決まってしまいます。訳す側は、原文が何も言っていない部分について立場を選ばされることになります。
ところが have someone pegged は、その両方を一つの形で引き受けます。She had him pegged after the first interview. なら見抜いた話ですが、I had you pegged all wrong. なら決めつけていた話。語そのものは、正しかったか誤っていたかを何も言いません。言っているのは、判断がすでに済んで固定されているという一点だけです。
札を留める絵は、判断がいったん定まった感覚を覚える助けになります。ただし、これは語源を確定する説明ではなく、表現の二面性を理解するための記憶上の比喩です。正誤の判定は語そのものではなく、後の展開に委ねられています。
劇中でジェーンが got you pegged all wrong と言うとき、彼は自分の判断が固定されていた事実を認めたうえで、その札を貼り替えようとしていました。日本語に訳すなら、前半は決めつけていた、後半は読み違えていた、あたりが近くなります。一語のまま運べる英語と、向きを選ばされる日本語。訳の難しさは、そのまま二つの言語の設計の違いでもあります。
まとめ|札を打ちつけたまま歩き出さない
have someone pegged は、相手の人物像に札を打ちつけて固定してしまった状態を表す言葉でした。見抜いていたのか決めつけていたのかを語自体は決めず、文脈に委ねる。この宙づりのまま使えるところが、この表現の使い勝手のよさです。
思っていた人と違った、と気づいたときには、I had you pegged all wrong. の一言で自分の見立てを潔く撤回できます。相手を持ち上げる必要も、言い訳を並べる必要もありません。
打ちつけた札は、いつでも抜ける。その手つきごと、自分の英語の引き出しに加えてみてください。


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