海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
やり直してもらった仕事がようやく形になったとき、思わず「そうこなくちゃ」と口にしたくなることはありませんか。英語にも、望んでいた形に近づいた瞬間だけに使う、ちょうどいい一言があります。
その表現「that’s more like it」を、『メンタリスト』シーズン4第3話の最後、事件を終えた帰りの車中で、リズボンがジェーンに言葉をかける場面から、一緒に見ていきましょう。
「that’s more like it」の意味とニュアンス
that’s more like it
意味:そうこなくちゃ、そのほうがいい
直訳すると、そのほうが「それ」らしい、となります。この it が指しているのは目の前のものではなく、話し手の頭の中にある「本来こうあってほしい形」です。相手の言動がその形に近づいた瞬間に、ようやく出てくる一言だと考えると分かりやすくなります。
大事なのは、比較の形をとっていることです。more like it は「さっきよりそれらしい」ということなので、直前に望ましくない状態がなければ成立しません。ゼロから褒める言葉ではなく、前より近づいたことを認める言葉です。
使える対象は幅広く、料理の仕上がり、交渉の条件、相手の態度、動作の直し方まで、望ましい形が話し手の中にあるものならほぼ何にでも当てはまります。頭に now を足して Now that’s more like it. とすると、満足の度合いが一段上がります。
ただし満足を素直に出す表現なので、社外向けの文書のような場面には向きません。同じ内容を書き言葉で伝えるなら、This version addresses our concerns. のように何が改善されたかを述べる形に置き換えます。
【ここがポイント!】
- it が指すのは、話し手の頭の中にある「あるべき形」
- 直前との比較が前提なので、単独ではなく流れの中で効く一言
- 相手の態度が変わった瞬間に置くと、歓迎の気持ちまで伝わる
『メンタリスト』S04E03のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
事件が解決し、母親は息子を取り戻しました。別れ際、彼女はジェーンに、だまされていたけれど希望をもらったと告げて去っていきます。その帰り道、リズボンは慰めようとしますが、ジェーンは受け取りません。優しい言葉を返すほど頑なになる相手に、リズボンがどう方針を切り替えるかに注目です。
Lisbon: I think hope is worth it at any price.
(希望はどんな値段でも払う価値があると思うけど)Jane: What, are you running for office now?
(なんだ、選挙にでも出るのか?)Lisbon: Okay, you know what? You’re a wicked charlatan, and you’re going to hell then.
(ああそう、わかった。あなたは性根の腐ったペテン師で、地獄行きよ)Jane: That’s more like it. I’ll save you a seat by the fire.
(そうこなくちゃ。火のそばに席を取っておくよ)The Mentalist Season4 Episode3 (Pretty Red Balloon)
シーン解説と心理考察
このやり取りの直前、ジェーンは希望を与えたのではなく売っただけだと言い切っています。リズボンが差し出す慰めをことごとく押し返し、最後には選挙に出るのかと茶化してみせる。労わられるほど身をかわしていく様子が伝わってきます。
そこでリズボンは、慰めるのをやめます。性根の腐ったペテン師で地獄行き、と正面から悪態を投げつける。この切り替えの速さに、彼女がジェーンをどれだけ理解しているかが表れています。そして狙いどおり、ジェーンはその瞬間に態度をゆるめ、火のそばに席を取っておくと軽口で返します。
注目したいのは、ジェーンが同意しているのが発言の中身ではないことです。地獄行きだと言われて喜んでいるわけではなく、悪態が返ってきたという事実のほうを歓迎しています。慰めよりも憎まれ口のほうが届く相手がいる。二人のあいだで長く積み重ねられてきた距離の取り方が、この短い応酬に表れています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
自分の頭の中に、望ましい形の型がひとつ置いてあると想像してみましょう。相手の言動はその型から離れた場所にあって、やり取りを重ねるうちに少しずつ近づいてくる。ぴたりと重なる手前まで来た瞬間に押すボタンが、that’s more like it です。
劇中でも、慰めの言葉は型から遠く、悪態のほうが型に近かった。だからジェーンはそこで受け入れます。ゼロから褒めるのではなく、距離が縮まったことを認める一言。型と相手の位置が近づいていく動きごと覚えておくと、単独では使いにくい理由まで一緒に納得できます。
例文で覚える「that’s more like it」
前より良くなった、という比較が前提の表現なので、やり取りの二手目以降で力を発揮します。3つの場面で見ていきましょう。
Ten percent off? Now that’s more like it.
(一割引? そうこなくちゃ)
値引き交渉がようやく動いたときの一言。now を頭に足すと、待っていた条件にたどり着いたという満足感が強く出ます。
Third draft — that’s more like it.
(三稿目、ようやくいい形になった)
原稿が以前の案や事前の期待より望ましい形に近づいた場面です。初稿でも、ラフ案や期待との比較が共有されていれば使えます。
A: I’ll be there by seven, I promise.
B: That’s more like it.
(A:7時までには行くから、約束する)
(B:そうこなくちゃ)
遅れると言っていた相手が予定を早めた場面。主語も動詞も足さずに返事としてそのまま置けるので、会話のテンポを崩さずに歓迎を伝えられます。
あわせて覚えたい関連表現
Now you’re talking.
(そうこなくちゃ、話が早い)
相手の提案内容が望ましいものに変わったときに使います。that’s more like it が態度や仕上がりにも広く使えるのに対し、こちらは発言の中身に反応する言い方です。
That’s better.
(そのほうがいい)
改善したという事実を中立に述べるだけで、歓迎や満足の温度はほとんどありません。同じ場面でも、感情を出したくないときはこちらが選ばれます。
There you go.
(それでいい、その調子)
相手ができたことを認める励ましが中心です。that’s more like it が話し手の期待を基準にするのに対し、こちらは相手の達成そのものに目を向けます。
Note|「そうこなくちゃ」を英語で言い分ける
日本語の「そうこなくちゃ」は便利な一語です。料理が思いどおりに仕上がったときも、交渉の条件が改善したときも、相手の返事が望みどおりになったときも、これひとつで足ります。何が良くなったのかを言わずに済むところが強みです。
英語はここを分けます。that’s more like it は、話し手の頭の中にある型に近づいたときの言い方。相手の提案の中身が良くなったなら now you’re talking のほうが自然で、こちらは発言の内容に反応しています。改善したという事実だけを淡々と述べたいなら that’s better。相手が動作をうまくやり遂げたことを認めるなら there you go。何が改善されたのか、そして基準が話し手の期待なのか相手の達成なのかで、選ぶ言葉が入れ替わります。
この違いは、褒め言葉の設計の差とも言えます。日本語の「そうこなくちゃ」は、望ましい状態への到達を話し手の側から一括して認める言い方です。対して英語のこの一群は、改善された対象を毎回名指しし直しているような構造になっています。だから訳すときには一対一の対応がつかず、場面ごとに選び直す必要が出てきます。
劇中でジェーンが返したのは、リズボンの発言の中身が良くなったからではありません。悪態を選んだという態度のほうが、彼の望む距離感に合っていた。だからここでは now you’re talking ではなく that’s more like it が置かれています。どの言い方が来るかで、話し手が何に反応したのかまで読み取れる。短い相づちほど、選択の跡がはっきり残ります。
まとめ|近づいた分だけを認める一言
that’s more like it は、相手の言動が自分の望む形に近づいた瞬間に置く言葉でした。it が指しているのは目の前のものではなく、話し手の頭の中にある型。だから前より近づいたことだけを認める、控えめで的確な褒め方になります。
やり直してもらった仕事、動き出した交渉、態度を変えてくれた相手。どの場面でも、この一言を返すだけで満足と歓迎が同時に伝わります。長い説明を足す必要がないのも、会話では大きな利点です。
型に近づいた瞬間の、あの手応え。それごと、自分の英語の引き出しに加えてみてください。


コメント